第31話 山の露天風呂

ペルーサのパーティに加わると言い出した山の姫アコン。




 「えーっと……気持ちはありがたいけど……大丈夫だよ……」


 (これ以上女性がパーティに加わると面倒になりそうだしな……)


 カノン姫の顔が浮かびやんわりと断るペルーサ。




 「ダメじゃ! 橋を作ってもたらって恩を返さないなんて山の姫として許されん!」


 「いいじゃないかペルーサ。仲間に加わってくれるっていうんだから。仲間は多いほうがいいぞ?」


 まんざらでもなさそうなオリビア。


 「でも……」


 「まあ野生児、私たちはいま旅の途中なのよ。どうしても恩返ししたいっていうならこの旅が終わるころ王宮にでもいらっしゃいよ? あなたが急にいなくなったら野犬たちも困るでしょ


?」


 「う、うぅ……まあそうじゃな……落ち着いたころに必ず恩返しにいかせてもらうぞ」




 珍しく正論を言うグリンダにペルーサは感謝した。




 「ありがとうございます。グリンダさん」


 「いえいえ、まあロリコンのペルーサ君ならこの度のお供に付いてきてほしかったのかもしれないわね」


 「ロリコンなんかじゃないですよ!」




 ◇




 無事、橋を作りこれからは村を襲われなくなって一安心の一行。時刻はすっかり夜中になっていた。






 「さあ、早く寝ましょう。あーもう汗でべとべとよ! お風呂でも入りたいわよ!」


 「こんな山奥で風呂なんて無理に決まっているだろ。寝るぞ。」


 「ふん! 不潔ね! オリビアみたいな女子力の低い女じゃないのよ私は!」


 「お、風呂か? 風呂ならあるぞ!」


 アコンが言う。




 「え? お風呂あるの?」


 目を輝かせるグリンダ。


 「ああ、私や仲間の犬もよく使っているところがある」


 「ありがたいわ! 案内して頂戴!」


 「もちろんじゃ! 付いてこい」






 アコンの案内で風呂へ向かう。




 「いいわねぇ、温泉ってことよね!? こんなところで温泉に浸かれるなんて思ってもみなかったわ!」


 「うむ、ありがたいな! なあペルーサ?」


 「は、はい……」


 「あら? どうしたの? 暗いわね?」


 「……あなた達とのお風呂にいい思い出がないんですよ……」


 「あら! 失礼ね! いつも覗いてくるくせに!」


 「の、覗いてなんか……事故ですよ……」


 「覗いたことは認めるのね」


 「……とにかく! 今回は僕は近づきませんからね!」


 散々、覗きのせいで脅されてきたペルーサ。今回は巻き込まれないようにしようと固く決心する。




 しばらく山道を歩く一行。




 「さあ着いたぞ、ここが風呂じゃ!」


 「どれどれ……え……?」


 「これが……風呂?」




 アコンが自信満々に連れてきた風呂。それはペルーサたちの目にはただの巨大な滝にしか見えなかった。


 


「……」


 「ん? どうしたんじゃお前ら? 嬉しいじゃろ?」


 「……忘れたわ。この子は野生児だったわね……」


 「さすがにこんな寒い夜中に川で水浴びはな……」


 「残念でしたね。二人とも」


 「ふん、私たちの裸を覗けなくて残念だったわね……」


 「そんなこと思ってないですよ!」


 「私たちの風呂は風呂じゃなかったのか……?」


 密かにカルチャーショックを受けるアコンであった。






 温泉のつもりでついてきたグリンダとオリビアは落ち込んだ。山で暮らすアコンにとってはこれが風呂なのだろう。




 「ん……、ちょっと待って」


 何かを思いつくグリンダ。




 「どうしました?」


 「……いいことを思いついたわ!!」


 「な、なんですか?」


 「ペルーサ君! あそこまでワープしてもらえるかしら?」


 グリンダは滝の上の方の岩場を指差す。




 「はあ……行けると思いますけど。なんでですか?」


 「ふふ、まずペルーサ君には上の岩場へ移動してもらうわ。そして、炎魔法で落ちてくる滝の水を温めるのよ!」


 「なるほど! いいアイデアだ! できるかペルーサ?」


 「まあ……やったことはないですけど……」


 「ふふ、冴えてるわ今日の私は。さあ! 早く行きなさい給湯器!」


 「はい……(相変わらず人使いか荒い二人だな……)」

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