episode.46 運命


EBEの体を覆っていた白いモヤは晴れ、白銀の装飾に覆われた女性が姿を現す。その顔は雫と完全に一致していた。


「あれ、雫ちゃん…?」


「EBEと融合したから側だけだろ!」


EBEが口を大きく開けると同時にその危険性を察知した帯人は大声で叫ぶ。


「全員退避!!!」


その声を受け全員がその場から瞬時に離れる。と同時に元いた場所は焼き焦げ跡形もなく消し飛ぶ。


「超電磁砲かよ」


麗央と紘、守人と静恵、帯人と蜜璃、凪と魁斗、神器と落葉がEBEを中心にバラバラに待機する。


紘は麗央の様子を見つつ今現状の状態を聞く。


「まだ異能復活できない感じ?」


「ああ」


「決定打無しじゃん…って思うじゃん?」


紘は立ち上がりEBEの頭上にワームホールを出現させる。


「物量で圧死(おっし)ね!!!」


ワームホールからはこの街にあった瓦礫や土砂、岩、コンクリート片、ガラス、瓦などがEBEに向けて降り注がれる。


「やったか…?」


「おい待て、それはフラグ…」


紘の攻撃でEBEは傷一つ付かずの無傷。そして紘と麗央の場所目掛けて超電磁砲を放つ。


「お前ぇぇぇぇぇぇ!!!」


麗央&紘の方へ注意が向くと同時に守人と静恵は遠距離から異能による攻撃を試みているが効いているとは到底思えない。


「神器!バックアップはするからまずあいつの動きを止めろ!」


「クハハハハ!貴様だけだぞ我にそのような命令ができるのは!他のものなら即斬首だ。おいそこの小僧、貴様も働け」


「はいはい…」


“八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・封魔結界”


“風螺旋塵(ふうらせんじん)”


神器は懐から六つの勾玉を出す。その勾玉はEBEの頭上まで移動すると勾玉一つ一つが点となり、六角形の透明な壁を生成する。(結界)

その壁の中では落葉の異能で巻き起こる竜巻がEBEの動きを完全に封じた。


「凄い…あの巨大のEBEの動きを完全に止めてる」


(神器も風間も自分の異能力を最大限活用してる…神器が無茶できるのは凪さんの補助のお陰…俺はどうすれば…)


考える魁斗の肩を叩く帯人。いつの間にか帯人と蜜璃は魁斗のすぐ後ろまで来ていたようだ。


「魁斗、お前がEBEから雫を引き離せ」


「えっ?」


「そこまでの道は俺と蜜璃が作ってやる」


「雫とあんな終わり方は嫌だろ?なら無理矢理にでも引きずり降ろさないとな」


帯人と蜜璃の言葉で魁斗は実を再度引き締める。ここからは正念場。


“真剣”


帯人の振るった一太刀はあらゆるモノを斬り裂く斬撃。神器の貼った結界も落葉が動きを封じていた竜巻も。そしてそれは雫を取り込み神となったEBEも例外ではなかった。故に。


ギヤァァァリァァァァァァァ!!!


耳を劈くような轟声が辺りに響き渡る。そこへ蜜璃が忍び寄る。


“再配列”


蜜璃の再配列により、取り込んだ雫とEBE本体を分断しようと試みる。がそれを望まないEBEは再び轟声を上げ、体から無数の触手を生み出し蜜璃諸共吸収しようとする。


「「蜜璃(さん)!」」


“虚破(うつろわり)”


突如、空間に亀裂が入り辺りに振動が生まれる。蜜璃を吸収しようとした触手は跡形もなく消し去られる。


「!?」


“過剰重力(エクストラグラビティ)”


再び触手を展開しようとしたEBEの動きが遅くなり地面に伏す。


「何を惚けている!俺と虚空が手を貸したんだ。ここで仕留めてみせろ!」


「あいつは!」


「釈迦!?」


「俺が望んでいたモノはもう手に入った。だがこいつを生み出してしまったのは俺とも言えるならば俺が手を貸すのは通り」


「あいつ偉そうだな…」


紘の声を聞き流し、釈迦は再び魁斗へ声を投げる。


「惚けるな馬鹿者!取り返して来い!」


「っ…」


走る。手を伸ばしても届かないなら届く距離まで歩み寄れば良いと。今度こそ掴む。その掴んだ手は離さないように。


こじ開けたEBEの体内へ魁斗は手を伸ばす。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


地獄とは全く異なり、何もない真っ白な空間。そこで魁斗は蹲っている少女を見つける。


「雫…」


「魁斗…私ごめんね。魁斗の役に立てなかった。それよりも迷惑いっぱいかけたし、今だって…」


「それでも俺は雫が居てくれて良かったと思う」


「でも!私が居なかったらこんな事にはなってなかった!!」


「そう、かもな…」


雫の言葉には後悔が詰まっていた。それは雫が元々居た前の世界軸での事も含まれているのだろう。


「でも、俺は雫に出会わなかったらこんな気持ちにはなってない」


「え…?」


泣き腫らした目をこちらに向ける。雫の目に映る魁斗の顔は緩んでいた。締まりのない顔。


やっとこの気持ちに名前をつける事ができた。これがどんな感情よりも強い気持ち、これが“好き”と言う事なのだろう。


「好きだよ雫。雫が前の世界でも諦めずに今の世界に来て、俺を助けるために来てくれたって聞いた時凄く嬉しかったんだ」


「その話…」


「ある人に聞いてね」


「でも結局ダメだった。無駄になっちゃった」


「ダメでも無駄でも、雫は諦めてないだろ?じゃなかったらここで俺に会ってないはずだから」


完全融合したにも関わらず、EBEの意識と同化していないのは雫がEBEとの同化をずっと拒んでいるからだ。ならまだやれる事はある。


「まだ諦めてない、だろ?」


「ふふ、やっぱり魁斗は私のー」


魁斗の伸ばした手を雫が掴もうと手を伸ばした直後、この真っ白な空間に亀裂が入る。

そこから這い出てくる者はEBE。


「雫こっち」


アァァァァァァァァァァァァ!!!


這い出たEBEを迎え撃て。

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