episode.45 変貌
白い巨人こと、EBEはさらに形を変え始める。
「!?完全融合が近いのか!神器!」
「なんだ?」
「隠し球有るんなら早く出してくれないか!?」
「貴様気付いて…いや、今は使えん」
「は?」
「ここに来る前に少し生意気な小僧を止めた所でな、その時に少し張り切り過ぎた」
今までの自信たっぷりの神器からは想像もつかないほどバツが悪そうに答えるその姿を見て、麗央は怒りを通り越して呆れていた。
「ああ…お前ならやりそうだもんな」
「うるさい!その目をやめろ!」
「おしゃべりはその辺りで良いかい?」
「くっ…」
神器の攻撃を全て捌き、異能が使えないとは言え、生身の麗央の拳をも防ぐ。
その合間にも形を変えるEBEに2人は焦りを見せる。
「幽閉者2人がかりでも俺を止められないって、そんな事ある?はは、案外俺って強いのかも」
「「調子に乗るな!」」
麗央の拳と神器の作り出した剣が千脚を叩き潰す。が、そこには既に千脚の姿は無く、2人のすぐ後ろへ移動していた。
「俺の新しい力、見てよ」
“限定解放・無善帯団峰児(むぜんたいだんほうじ)”
魁斗の異能力“不死”を得た事により能力が進化した限定解放。
進化前の限定解放は単純な身体能力の上昇だけだったがそれ+分裂体が複数体出現する。
「くっ!?」
「ぬぅ!?」
神器と麗央は分裂体から攻撃を受ける。そこで気づく。
(こいつの分身は!?)
(本体と遜色ないもの、分裂体か!?)
分裂体の数は10体、麗央に3体、神器へ7体差し向ける。
異能力の使えない麗央は千脚を3体も相手にする事はできず、防戦一方を強いられる。
神器は異能力による手数の多さで人数不利を打ち消している状況。時間だけが過ぎていく。
その間にもEBEは形を変化させていく。
“真剣”
その一太刀、その一閃は白い巨人を両断した。
「!?」
防戦一方の麗央の元へは守人、静恵が入り、頭数が揃った事で押し返す事ができた。
「すまない、助かったぜ守人、静恵!」
「ほら、リチャージまでまだ掛かるんだろ?なら早いとこ片付けるぞ」
神器の元へは凪、落葉、紘、蜜璃が応戦に入る。
「ふん、貴様らが来なくても我は大丈夫だったのだが?」
「そう言いつつ決定打無かったじゃん!」
「そら、戦闘中だろ?」
そして、本体の千脚の元へは帯人と魁斗が立ち塞がる。
「まだ邪魔してくるのか、いい加減にしてくれないかな〜?」
「それはこっちのセリフだな」
「お前との因縁もここで終わりにする!」
2人で刀を構える。千脚は2人の斬撃を避け去なしつつ、攻撃に転じる。
(帯人の異能力は“絶剣”最も警戒するのはこいつ、だが…)
千脚は魁斗の刀を受け止め、その勢いのまま魁斗に打撃を与える。
「っ!?」
驚いたのは千脚。それもその筈。魁斗は異能を失っているのだ。他でもない千脚に奪われている。だから千脚は帯人ほど警戒せずに魁斗へと攻撃を行った。
千脚の打撃を行った右腕は細切れに切り刻まれていた。
「その異能力は!?」
「あいつの置き土産って奴だよ!!!」
“影刃十閃”
魁斗の新たな異能力“闇影”は影を実態として操る事ができるというもの。警戒していなかった千脚は魁斗の無数の影による斬撃を受けてしまう。
「チッ!!こんなもの………は?」
千脚は異能力“不死”がある限り死なない。例え肉体が細切れになろうとも再生する。が、再生できない。千脚の切り刻まれた右腕は再生できなかった。
再生できない原因は切り刻まれた時に傷口に付着しているこの黒いモヤのようなものだろう。
「このモヤが再生を阻害する!」
“紫電一閃”
思うように再生できず体制を崩す。その一瞬の隙を突き、帯人は胴体を真っ二つにする。
(魁斗の異能に気を取られすぎた!?帯人も厄介だが今真に警戒すべきなのは魁斗!!)
帯人に向けた視線を魁斗に戻すと魁斗はもう、次の技の行動に移っていた。
“黒塗りの顎(シャドーファング)”
右手を眼前へと出し親指と人差し指、中指の三本を上へと向ける。その動作を行ったと同時に千脚の足元にある影から巨大な口が姿を現す。
「これは…逃げられないね。僕はここでリタイヤのようだ。精々後の祭りを楽しんでくれ」
その口は千脚に食らいつき嚙み砕いた後、影へと消えた。
「魁斗、無事か?」
「うん、でも結構体力いるみたい…」
(顎は強力な技な分、連発はできないのか)
千脚が倒れたと同時に、千脚によって生み出された分裂体も消えた。戦っていたほかのメンバーも集まり、少しの休息かと思いきや…
「おい、気を抜くなまだ終わってないぞ!」
神器の一声に全員は再び警戒する。皆の視線は両断されたEBEへと向けられる。
倒されたかと思っていたEBEは形を変え、女性の姿へと変貌を遂げた。
「雫…?」
「いや、あれはもう別もんだ」
完全融合したEBE!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます