episode.43 応戦
心臓を喰らいながら千脚は口角を限界まで引き上げ高笑いをする。
「ダハハハハッ!!親の仇も打ち取れず?自分が鍛え上げてきた異能力までも奪われて絶命ってお前は本当に面白いなぁ〜♪」
「千脚!!!」
殴りかかるが麗央はそのまま勢いを利用した蹴りを喰らう。
“扇脚”
「くっ!?」
「ありゃ?」
麗央は千脚を攻撃する事で魁斗の救出を悟らせない動きをした。結果、麗央は魁斗の救出に成功する。
移動してきた守人、静恵が麗央に合流する。
「静恵、守人!魁斗を頼む。蜜璃が居たら見せろ、まだ微かだが息がある!」
「麗央は!?」
「俺はこいつを殺す!」
「死なねぇよ♪」
麗央を信じ、守人は静恵と共に麗央から離れる。
「麗央大丈夫かしら」
「いや、俺たちの心配をしないと」
「え?」
「麗央が本気を出したらあたり一面が焦土と化す」
「!?」
「比喩でも何でも無く、それくらい強いんだよ麗央は。それでも、今の千脚を止められるかは…正直分からない」
「私達は蜜璃を探しましょ。魁斗、死なないで…」
蜜璃の元へ向かう守人達とは別に魁斗の中にいるオルタは蘇生作業に移っていた。
(く、死ぬなよ。魁斗!)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2人が離れた事を確認して麗央は異能力を発動させる。
“限度暴走(オーバーリミット)”
麗央は自身の異能力である“陽炎”のリミッターを暴走させる。
“陽炎”を発動させた麗央の周りは液状化、並びに気化していく。“限度暴走”を行った麗央の“陽炎”は影響範囲が拡大していた。
「ハハッ。蝋燭の火じゃん♪」
「蝿風情が粋がるなよ」
麗央が近づく度に熱線も強くなる。同じ戦場にいる千脚は自身の元々の再生能力と魁斗の“不死”の異能がある為、ダメージを受けていないように見える。
“一閃”
トップスピードで麗央を蹴り抜くが麗央に攻撃が命中した感触も無く、蹴り飛ばした左足が消滅する。
「速いな…スピード勝負と行くか?」
“速度上昇(ギアチェンジ)”
自身の“陽炎”から発する熱量を利用し、推進力として利用する。そのスピードは千脚と張り合えるほど速い。
(ぶち抜けねぇ!!)
千脚の後を光が尾を引く。逆に麗央の通る道は火の海となっていた。打ち当たる度に蹴りや拳の応酬をするが互いに決定打にはなっていない。
「まだまだだ!」
“熱量増加(ヒートアップ)”
(こいつ!?発する熱量が上がった!?)
「“紅炎(こうえん)”」
圧倒的スピード、圧倒的熱量、圧倒的威力のタックルが千脚に撃ち当たり千脚は崩壊した街の瓦礫の中へ消えていく。
(久々にハッスルし過ぎてるな…)
立ち昇る煙の幕から無傷の千脚が立ち上がる。
「ふふふ、“不死”が無かったら今の一撃で御陀仏になってたね〜」
「ふん、ならあと何回殺せば死ぬ?」
「だから〜死なないんだっー」
声に出そうとしても口が動かない。いや、そもそも息ができない。
(まさか!?)
異能力(陽炎)で発する熱は周りから酸素を抜く。本人も例外はなく、低酸素症を引き起こす。
「さあ、終いと逝こうぜ!」ゼェゼェ
「こんの!?」
麗央は動けない千脚の腕を掴み空中へと勢いよく投げる。千脚の腕が引きちぎれるほど強い衝撃を受け飛び上がる。
(バランスが取れない!!)
千脚は気がつく。自身の投げ飛ばされた空から太陽とはまた別の熱源を感じる事を…
「もう一つの太陽だと!?」
「フーゥッ…」
肺に残った空気を吐き出し、右手のひらを空の千脚へ向け伸ばし、握る。
“太陽爆発(フィラメントドライブ)”
麗央は意味もなく自身の異能力(陽炎)を発動させていた訳ではない。その熱は徐々に天へと登り、溜まり、固まり、もう一つの擬似的な太陽を生み出す。擬似太陽から発せられる熱量は地上に向けて放てば半径数十キロ圏内にある建物は全て灰になるほどの威力であった。
それは麗央が周りの事を考えて描いた戦術なのか分からないが、この空中で爆発させる、という咄嗟の判断の結果地上は灰にならずに済んだ。
「ハーッ…しんでぇ…」ゼェハァ
(ちっ、過剰延焼(オーバーヒート)してやがるか…ここから動けねぇし異能も暫くは使えねぇな…)
麗央の異能力である陽炎。普段は力を抑え、周りの影響にならない範囲で使用しているが、このように一度本気で振るえば街一つ簡単に灰にできてしまう。これが幽閉者たる所以。が、限度暴走後、大業を撃つと過剰延焼状態となり反動で身体が動かせず、異能力も扱えない文字通りの木偶の坊になる訳だが、本人はあまり気にしていない。
「んで、それが最後の大業って事でいい?」
「は、!?」
麗央が驚くのも無理もない。“太陽爆発”により消し炭となったであろう千脚が五体満足の状態で麗央の前に立っているからだ。
「“不死”の異能って便利でさ〜、死にそうになったら俺の身体の一部を切り離してそこから安全に蘇生できるんだからさ〜」
「な…」
「君の行った行動の全て無意味って事〜君を始末したらジャガーノートを止められる奴は居ないし、こんな茶番終わらそうか♪」
千脚が動けない麗央の頭を蹴り抜こうと足を振り上げる。
ドスドスドスドスドス…
千脚の居た場所に数千の剣(つるぎ)が突き立ち、剣山を形成する。
「ちっ…そう言えば君が居たね。存在感無くて忘れてたよ」
「クフフフフ、無理もないな。真に強い奴と言うのは常に孤高の存在であるが故に、弱者からは遠い存在だ。見上げようと試みぬ限り気づきもせんだろう」
「話が噛み合わないな。存在感が無くてって俺は言ってるんだけど」
最恐の助っ人登場!
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