episode.41 人工殲滅機能重機


「全てを壊すってそんな事できるわけないだろ!」


魁斗は半ばやけになりつつ声を出す。自分が倒したと思った仇敵が生きており、ここに、この場に来たのだから。


「いや、それができるんだな〜。そこにいる雫。“天の盃”を使えばね」


「いや、プロテクトは解除できてない」


千脚の解を釈迦が否定する。が、千脚はそれを鼻で笑う。


「それがもう“神降し”の準備が整ってるんだよなぁ〜。君は一度、彼の死を見ている。違う?」


「っ…」


(どう言う事だ?俺の死を見ている?いや、俺は“不死”だから死ぬことはない…)


千脚に問われた雫は唇を噛み何かを堪えるような仕草をする。


「だから必要ないんだなぁ〜“人ならざる者、天上へと向かう回廊、故に汝が名は”」


“一条、一光の雫”


「っ…」ドックンッ…


悶え始める雫の元へ向かおうとするが、それよりも先にジャガーノートに乗った千脚が行手を阻む。


「千脚ッ!!!」


「ははは、君はもう用済みだしね。王様共々死んでくれないかな〜」


主砲を構え、それは放たれる。

熱を帯びた一筋の光の道。曰く、レーザービーム。曰く、超電磁砲(レールガン)。


そこから運良く脱出できた3人は同じく脱出していた麗央達と合流する。


「守人さん!あれ、他の人達は!?」


「尸楼組は妖怪組と一緒に民間人の避難。ここからじゃあ巻き込みかねないからね。帯人も無事だよ」


その言葉を聞き胸を撫で下ろす。


「それよりも!おい、さっきのあのビームなんだよ!」


麗央は無邪気な子供のように両の目を輝かせ魁斗に詰め寄る。


「あいつは、千脚はジャガーノートって言ってた。元々は対大型妖魔用に政府に開発されていた物らしい。あいつの目的は全部を破壊する事。それに雫が利用される。早く止めないと…」


「止めようにもあの巨大、止められる?」


「まあ、なんとかなるだろ。筋肉で!」


「ふ、さすがゴリラね」


「おうおうおう、喧嘩するかー?」


歪み合う2人を守人さんが仲裁する。いつもの光景に少し安心感を覚える。

魁斗は一緒に脱出した2人に向き直るがそこに彼らの姿は無かった。


「よーし、ちょっくら本気で殴ってくるわ」


「なら私は麗央にパス繋げておくわ」


「んじゃ俺は長距離狙撃で後方支援する」


「俺も麗央さんと行きます」


「んじゃ行くか」


各々そこで別々に分かれる。俺と麗央さんは今もなお進行しているジャガーノートの足下へと向かった。


「とりあえず様子見の拳(パンチ)!!!」


衝撃波と振動が辺りに弾ける。


「っ…!?効いてない…?」


通常兵器なら粉微塵になっているであろう一撃。が、ジャガーノートはその攻撃を受け無傷で前進していた。


「装甲が硬えな」


「ふははは、そりゃそうだろう。お前の力を基準に作られた物だからな?」


「どう言う事だ!?」


ジャガーノートの頭上に鎮座しいる千脚からの言葉。それは予想しなかった回答であった。


「お前は異能抜きにしてもその肉体だけで国家転覆をも狙える力を持ってる。その攻撃を耐えられる兵器を所有してなかったらお前なんかを外に出すわけが無いだろ?簡単な話だ。安心するためにはそれ以上の武力がいるって訳だよ」


「舐めやがって…俺がそんな機械の足止めなんて喰らうかよ!!」


麗央は自身の異能“陽炎”の圧倒的熱量を用いて再びジャガーノートへと拳を振るう。


「だから〜どんなにやっても壊れなー」


ジュゥゥゥゥゥゥゥ…


音と煙が登り、千脚は嫌な予感に顔を引き攣らせる。


「おいおい、拳に“陽炎”纏わせたらやっぱり溶けるよな〜」


「やっぱあいつバケモンで脳筋過ぎるだろ!!!」


「ほらほらほらぁ!!!もう1ー」


麗央がもう1発攻撃を与えようと拳を振り翳した時、魁斗は麗央に突撃して麗央を少し後ろに交代させる。

直後、元々麗央のいた場所にジャガーノートか

発せられた雷撃が命中する。


「チッ」


「すまん、魁斗助かった」


「いや、大丈…」 ︎


背中に走る激痛に一瞬硬直する。


(完全に避けきれなかったか…でも、これなら異能で何とか…)


『異能は致命傷の時以外使わない。援護はできるだけするが無ー』


「あれ、痛みが消えた…?静恵さん!!」


ジャガーノートと麗央、魁斗を一望できる建物の屋上にてダメージを肩代わり(・・・・)した静恵が奇声を上げていた。


「キタキタきた!!これよこれ!この痛み!あぁぁぁぁ〜♪キクぅ〜♡」


住永静恵

異能力「“共有(シンクロ)”」

予めマーキングした対象のダメージを肩代わりする。そのままダメージを肩代わりするのではなく、肩代わりする時にダメージを大幅に減らす。

(例:切断→裂傷)


『静恵の奴、麗央だけじゃなく魁斗にまでパス繋いでたのか…いつのまに…?』ボソッ


「次来るぞ!」


次の攻撃が来る前に麗央とここを離れる。次の雷撃は一寸の狂いもなく魁斗達が居た場所へと落ちた。


「近接相手には“雷撃”なら…守人!」


「はいはい、分かってるってね」


“長距離弾道砲・CO”


静恵のいた場所からの長距離狙撃がジャガーノートに命中するが、煙から姿を現したジャガーノートは無傷であった。


「はぁ!?電磁バリア!?」


守人が驚くのは無理もない。電磁バリアは守人の異能と相性が悪く、撃ったとしてもバリアが貼られている限り全て弾かれてしまう。


「近距離には“電撃”、遠距離には“電磁バリア”…こいつどうやって止めるんだ…?」


不安募る…

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