episode.39 進行
“過剰重力領域(グラビティリージョン)”
“十閃(じっせん)”
釈迦の異能力で発生した重い空間。それを“絶剣”にて切り裂くが
「!?」
「“絶剣”は対策済みだ!龍帝!矛盾!時間を稼げ!」
剣は空を斬り異能を斬った感触はなく、身体にのしかかる重さで理解する。
(くっ、洞窟内の天井付近に能力を設置したのか。あれじゃ斬っても生き埋めにされかねない…まんまと誘い込まれた感じか…)
“龍王の獄炎”
広い空間内で、飛ぶ龍帝が吐く炎は通常の赤色とは違い黒く、全てを飲み込む色をしていた。
“両断”
炎を斬り、吐く龍帝をも両断する。が
「ん?」
“王を守護する盾(キング・シールド)”
巨大な盾により帯人の斬撃は防がれていた。
「すまん、助かった」
「油断するな!他の幽閉者とは一線を画している!」
「そうだな、前回で嫌と言うほど味わった」
「ならやる事は一つだな」
「ああ!」
“限定解放・寶月龍核(ほうげつりゅうかく)”
“限定解放・双武身心(そうぶしんしん)”
龍帝の限定解放、寶月龍核は龍帝の手に二つの球体を出現させる。その球体は一つが赤く、もう一つは白い。
矛盾の限定解放、双武身心は本来二つに分断されている力を一つにする物。矛盾は盾、矛の二つの別れた力を一つにした。その影響で矛盾は体の半分が人型、もう半分が獣の姿となっていた。(ケンタウロス)
(矛盾(ほこたて)の野郎は全身鎧に包まれてるな…あれが能力の延長線上なら斬るのは少々面倒だな…それなら)
“砲斬”
遠距離から“絶剣”の効果が乗った斬撃を龍帝へと飛ばす。
“輝ける太陽”
その斬撃は龍帝の持つ赤い宝玉にて消滅する。その宝玉が放つ熱量は太陽と遜色ないほどの灼熱であった。
「太陽!?」
(この熱量は周りにも…そうか、矛盾の盾で周りに掛かる熱を制御しているのか!)
“暴発する太陽”
「な!?」
龍帝の生み出した太陽は帯人の真上で爆発する。その威力に周りは溶け出す。
“一閃”
「グハッ…」
「周りを守ってる矛盾をやれば良いだけだろ?」
一筋の剣筋は矛盾へと伸び斬り裂く。帯人の剣は聖剣。斬られた魔の者は再生に時間がかかる。
すかさず龍帝へと向き直り、斬り伏せようとするが
“閃月の後光”
龍帝の持つもう一つの宝玉、白い球から発せられた光は切り伏せられた矛盾へと注がれ瞬間、斬られた傷は完治する。
「おいおいおい」
(ただでさえ重力領域の影響で動きが悪くなってんのに、これは少々きついぞ?)
「それじゃリスタートだ」
「いや、この一撃で終わらせる」フゥーッ
「「…ッ!?」」ゾクゾク
息を整え剣を腰に構え体勢を低くする。その動作と気迫に2人の妖魔に嫌な汗が流れる。その一撃は前回に見た。
(一撃で終わらせるつもか!!)
(その前に殺す!)
“暴発する太陽”
“最攻の矛”
太陽は帯人の頭上で再び爆発し、矛盾は追い討ちに矛を投げる。その矛は太陽の気化した煙を貫き壁に突き刺さる。
「な!?」
「あの状況でどうやった!?」
“真剣”
剣を抜く直後、帯人の前に現れるのは血を吐く女型の妖魔。双極、虚空(こくう)である。
“虚破(うつろわり)”
「…ッ!?!?」カハッ
剣を抜く直後、目の前に現れた虚空、動揺、動きが一瞬緩む。その一瞬を虚空は見逃さなかった。
虚空の拳が帯人の溝内にヒットする。その細い腕の何処に成人男性(鍛えている)を数十メートル離れた壁に激突させるほどの力があるのだろうか。それが、虚空の異能力である。
激突した壁から這い出て地面に膝を突く。倒れる寸前で剣を突き立てる。
(ただの拳じゃなかった…内臓が諸々ダメージを受けた…骨もイッてる…クソ…)
「プッ…」
口内に残る血を吐き飛ばし、相手三体の妖魔を見る。幾ら“絶剣”と言えど、この上位妖魔の3体を相手にするのは中々に厳しいものであった。
「やめて!」
「!?」
「「「!?」」」
意識を取り戻したのか、倒れていた雫が帯人の前に、妖魔の前に立ちはだかる。
「雫、逃げるぞ」
「ごめんなさい、私はそっちに行けない。彼を、魁斗を助けないといけないから」
「…?」
「もうやめて、私が居ればいいんでしょ?ならこの人にはもう手を出さないで」
「それで見逃してくれるほど相手は優しくはない」
「相手も殺そうとしてくるのだ。ならばこちらもそれ相応の態度で挑むべきだろう?」
「私は彼の望みが叶うならいいわ」
この戦いを終わらせる事はできない。彼女を助けたい帯人の意思、魁斗を助けたいと言う彼女の意思、妖魔の王の悲願の達成のため疾走する妖魔の意思。3者の思惑は交わらない。故にもう、この戦いは止まらない。
「…?」
(目が霞む…さっきのダメージか?これは不味い…意識も…)
帯人は人体の異変に気づくのが遅れ意識を失い、倒れる。
「おじさん!!」
「重力は空気にも働く。俺はそれを利用して帯人の周りに低気圧を作り出した。低気圧症の重症版だと思ってくれ」
「王!」
「時間稼ぎご苦労だった、十分だ」
妖魔達の間を抜け帯人の体を揺する雫へと歩み寄り、指先で頸動脈を圧迫する。
“重力”の力も相まって瞬時に意識を失う雫。倒れる雫を脇に抱え立ち去ろうとする。
「帯人さん…?」
「…!?」
気づくのが遅れた。3体の妖魔、その王は。帯人の後ろに立つその人物に。
「雫を返せ!」
“居合・慟哭”
“王を守護する盾”
刀を構え瞬時に抜刀するも、それは王へと届く事なく矛盾の出す巨大な盾によって防がれる。
その場を離れ、洞窟の奥へと進む釈迦と虚空。
「待て!」
「お主の相手は」
「俺たちだ!」
魁斗の行手を阻むは妖魔の4、5。
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