episode.33 結末
“焼脚”
千脚の足が発火し、炎を纏った蹴り。魁斗はそれを刀で受け止める。
(シンプルなパワーアップかよ、さっきまでとはやっぱり違うな)
「魁斗合わせろ!」
「了解」
オルタは左手から影を出し操り、影の刀を作り出す。
「「二刀一対」」
“影蛇の軌跡”
影でできた刃は蛇のようにしなり、二刀を振り抜く攻撃は千脚に命中する。が、それは千脚の残像だった。
“偽脚”
「ちっ、やっぱ速えな」
(正直危なかった…あの影、刃の形してるけど質量はその倍ある…実際“偽脚”使わなかったら直撃だった…影の住人(オルターエゴ)侮れない存在。それよりも生き残り、いや魁斗か、こいつオルターエゴの動きに順応して尚且つ追撃までしてきやがった…)
「ああ~久しぶりに敗戦の足音がきこえてくるなぁ~そう来なくっちゃ♪」
“限定解放・恍惚禁彗(こうこつきんすい)”
「限定解放だ今までと同じと思うなよ魁斗!」
「ああ」
「“一足”」
(速え!?)
千脚の足による突きを完全に避けることができず、右腹が抉れる。
「“二足”」
(限定解放の能力はシンプルな身体能力アップか、限定解放しなくても脅威だがこれは不味いな…)
次の攻撃は先の“一足”よりも速く鋭い攻撃だった。これも避けきれず、右足が吹き飛ぶ。
足を失ったことでよろけるが、刀を地面に突き刺し体制を保つ。
(もう目で追うことはできないな。速過ぎる)
千脚の繰り出している技は一足から始まり五足まで連続する攻撃。技が命中するたびに、千脚のスピードは上がっていく。
「いいかい?速さとは力だ。君たちはもう、俺の姿を捉えることはできない」
「魁斗、今からあいつの動きを止める。お前はとどめを刺せ」
「分かった」
それ以上の問答は必要なかった。魁斗はオルタを信用している。オルタもまた魁斗が千脚を仕留めてくれると信じている。それだけだった。
「“三足”」
(こいつら、抵抗もしなくなった。追いつけないからもう諦めたかな)
“三足”が命中し左足が吹き飛ぶ。左足は再生することなく、血が滴る。
(ああなるほど。才能開花の限界が近いのか。右足は再生できても左足を再生させるほど余力は無いってことね)
「これで終わらせてやるよ!!」
“四足”
千脚の動きはもはや、目で追えるものでは無かった。千脚の移動した痕跡は光の筋となって、魁斗に向かう。
「ここ!!」ニカッ
オルタは自身の影を使い、千脚を捉えていた。
“影網”
「来ると分かっていたら、自分の周りに網敷いとけばいい話だよな」
(こいつ!足を再生させなかったのも俺が油断して突っ込んでくると踏んでいたからか!?)
「一心流・居合」
“死期慟哭”
魁斗の居合が千脚の首を断つ。首は宙を舞い、地球の重力に逆らうことなく落ち煙となって消える。魁斗の勝利である。
「やったな、相棒」
「ああ」
オルタのねぎらいに魁斗は生返事で答える。それもそのはず、ずっと探し求め、追い求め、とうとう追い詰め倒すことができたのだ。オルタは空気を読み、魁斗に半身を返す。
世闇に鼻の啜る音だけが聞こえていた。
ゴゴゴゴゴゴゴオオオオオ…
地鳴りの後、地面が揺れる。
(そうだ、まだ終わってない)
魁斗は再び歩き出す。才能開花も切れ、傷ついた足は辛うじて治ってはいるが、体力も残り少ない。だが、魁斗は刀を持ち歩く。それは、多分。単純な原動力だ。彼女にもう一度会いたい。それだけで、足が進む。
それでも体力は限界であった。瓦礫に躓き、倒れる彼は衝撃に備え体を固くするが、衝撃は来なかった。
「こんなにぼろぼろになって…大丈夫?」
「黒絵さん!?どうしてこんなところに!?」
倒れる魁斗を支えたのは男?いや女?ちがうオネエだ!
「詳しい話はあと、今大穴から大量の妖魔が再び溢れ出してきてる状況よ」
「なら早く妖魔たちの進行を止めないと!」
「こんなボロボロの状態の魁斗君を行かせられません。それにダイジョブよ、あっちには空蔵が行ってるから♪」
上空にて大穴を眺める空蔵。月光を浴びて力が高まっている。
「死者たちよ、集え、再び生を与えよう。“億者の行進”」
そう唱えると、土や瓦礫の下から無数の骸骨が這い出てくる。
尸楼ボス 空蔵
異能力「“骸語り”」
死者の声を聴き、その魂を安寧へと誘う者。
土や瓦礫から這い出た骸骨の大群は、大穴から這い出てくる妖魔を攻撃する。骸骨一体一体の戦闘能力が非常に高く下位の妖魔程度なら造作もなく倒せるほどだった。
強力な助っ人登場!妖魔の行進対亡者の行進!!
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