episode.27 来客
次の日、魁斗が向かった先は千念塔。先日龍帝が破壊し倒壊した塔の跡地である。
「クフフフフ…そろそろ来る頃合いだと思っていたぞ。魁斗」
「俺は千脚に手も足も出なかった…それじゃダメなんだ。それじゃ守りたい者も守れやしない」
魁斗は刀を構える。そして出し惜しみはしない。
“才能開花・死レ人明開狂(しれびとめいかいきょう)”
「最初から全力で行く」
〔そうだな。お前はもっと強くなる〕
「クフフフフ…お前は俺を楽しませてくれるな」
手を少しあげる。その動作と共に神器の周りに剣が数百出現する。
パチンッ
指を鳴らすと同時に剣は猛スピードで魁斗へと向かう。
(最初はこれが速すぎて見えなかった。だけど今は目で追える!)
魁斗の才能開花は身体能力を大幅に上げ、魁斗の強みである不死性をも向上させるもの。動体視力も上がっている。
魁斗は剣を弾こうと自身の刀を振るうが剣速に順応できず剣は魁斗に突き刺さる。
「…っ」
(なるほどね…目では追えても身体が反応できてないのか…)
「どうした、終いか?」
「いや、続けてくれ…」
剣を身体から引き抜くと剣は消える。
(とりあえず今は慣れる…それしかない)
追いつく。絶対に。その心が魁斗を動かしていた。
弾き、突き刺さり、叩き落とし、突き刺さる。幾千と繰り返し、次第に魁斗は神器の攻撃を全て弾けるほどまで力を付けた。
「…」
(人間とは思えないほどの成長速度…死を経験する事で力を大きくつける事、これは奴にしかできん力技だな)
神器は不敵に笑う。
「ならこれはどうだ?」
“剣雨(けんう)”
空中に顕現する数百の剣は目にも止まらぬ速度で一斉に魁斗に降り注ぐ。
先程よりも数段早くなっているが魁斗はこれを全て躱し、去なす事ができた。
「これなら…千脚にも対応できる!」
「良いぞ、良い。そう来なくてはな!」
「ち、ちょっと待って」
神器は先の倍以上に空中に剣を顕現させる。それを魁斗に向けて一斉に放つ。
魁斗はそれを一本一本叩き落とすが…
(これ、数が多い!!それにもう才能開花が切れる!)
「はーいストップね2人とも」
攻撃を躱しきれず受ける直前、2人の間に割って入る声と人を確認する。
「凪さん!?」
「止めるな凪、今良いところなんだ」
神器は止めた剣雨を再び動かそうとする。子供のように目を輝かせる神器に凪はため息を吐く。
「神器、お前はとりあえずお仕置きだ」
そう言うと神器の後ろに扉が出現する。その扉に吸い込まれるように神器は消えた。
「ふぅ、魁斗くんは屋敷に戻って神器は俺が受け持つから」
「助かります…」
(あのままやってたら俺確実に御陀仏だったし…)
神器を凪に任せ、魁斗は急いで屋敷へと戻る。屋敷外には黒い自動車が数台停まっていた。その影響か屋敷内はいつもよりも慌ただしかった。
「静恵さん、何事ですか?」
屋敷の入り口に居た静恵に声をかけ駆け寄る。
「本部…政府の人間が来たのよ」
「政府!?どうして今になって…?」
「多分、今だから…」
屋敷内の一室。蜜璃と帯人の前に鎮座する強面、ガッチリとした体型のこの男は鴎外秀平(おうがしゅうへい)。
この男を説明するにはまず、この国の現状のパワーバランスを説明しなくてはならない。
10年前
政府>国>特課>警察
10年前は妖魔による被害は現在と比べて少なかった。国は全てを政府に任せ、政府はこれにより地位を確固たるものにした。
現在
国>政府>特課>警察
数字持ちの出現、妖魔の王の誕生。力不足な政府を国が放っておくはずもなかった。
その影響もあり現在は10年前のパワーバランスが崩れ、国が治安を維持する形になった。
鴎画秀平は政府の人間、国の指示には従わなくてはならない。
「千手守人の裏切り…あいつは機密事項も、国が保管している宝物の数々も知っている。この責任…どう取るんだ?」
「守人は裏切るような奴ではありません。何か考えがあって動いていると思われます」
「だろうな。俺も報告を聞いて驚いた」
先の殺伐とした空気感はもう既に無く、和気藹々と話しだす。
「だが、俺も政府側の人間として筋を通さなきゃならない。よって監督不行届としてお前の異能“絶剣”を封印する」
「は?それは幾ら何でもおかしいだろ。何で今なんだ?この戦力が足りない状況で帯人を引き抜く理由は?」
突っかかる蜜璃を帯人は手で静止させる。
「蜜璃決まった事だ。仕方ない」
「蜜璃の質問に対してだがこっちが聞きたい。国の命令なんだが分からんことが多過ぎる。こっちからも色々探ってはみるが…」
「頼む」
「すまないな帯人」
鴎外は右手の人差し指中指の2本で帯人の真上の空に円を描く。
鴎外秀平
異能「“封印”」
異能力を封印する異能。指2本を使い相手の頭上で円を描く事が発動条件。封印されると異能は鴎外が再び解除するまで使う事ができない。
「俺が異能を解くまで“絶剣”は使えない。蜜璃後のことは頼んだぞ」
「ふん…言われるまでもない」
その後鴎外は屋敷を後にし車に戻る。その際に魁斗、静恵と会うが言葉を交わさず扉へと足を進めた。
車内にて…
「魁斗くん…大きくなってたな」
(彼を見たのは10年くらい前だからそりゃデカくもなるか…いや、俺が歳をとった…?嫌だな〜おじさんになりたくないなー…!!!)
「鴎外様?」
車内で頭を抱える鴎外を運転手は奇怪な様子だったと後に語っている。
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