episode.14 奥義対奥義
その目に一才の迷はいなく。
その心は自身の赴くままに開き。
その行動は狂ったように舞い踊る。
“才能開花・死レ人迷開狂(しれびとめいかいきょう)”
魁斗の使用した技。これは異能の力を最大限解放し活用するもの。
魁斗は不死性を活かしての不意打ちを得意とする。それ以前に異能の『不死』を発動する前に剣技を持って相手を屠ってきた。それは不死の発動条件が難解である点。だが、才能開花をしたことにより平易になっている。
鬼弓・業魔「壱番」
弓の弦が千切れんばかりに振り絞って放つ技。通常の弓の威力をしていないのは無論のこと、その性能は弓の通った道を切り開く。
魁斗はそれを容易く避ける。
(業魔は速く、威力の高い技だぞ!?技すら使ってなかった薙ぎに反応できてなかった奴が何故…試してみるか)
鬼弓・核湾「参番」
3本の矢を用い、弓を引き絞り撃つ。そのどれもが避けることの出来ない最速の弓であり、威力は言わずもがな。
魁斗はその矢を全て正面から叩き斬る。横から斬るならば難易度は下がるが(無理)正面からその3本共を同時に叩き斬るなど人間の技では到底無理であろう(絶対無理)。
(なるほどな…身体能力の強化ならびに五感も良くなってんのかもな…)
鬼弓・曲射「弐番」
(これは対処無理、なら…)
兜はその場から動かず、弓を持って相手を穿ち抜く。魁斗は避けず、ただ走る。相手を見据えて。
直撃。
曲射「弐番」は2本の矢で相手を撃ち抜く。その矢は対処しようにも変則的な動きをする。初見での対応はほぼ不可能。
兜の放った2本の矢は魁斗の左胸部の心臓と右脇腹を穿ち抜いた。大きな風穴が開き、血を吐く。普通ならば即死である。
だが、魁斗は血を吐きながらも走り相手を斬りつける。兜はその攻撃を弓で防ぐ。
「なるほどな、それがお前の“才能開花”の能力って訳だ」
(この矢はさっきまでの様子見の弓と違うって事が分かったみたいだな…しかも、俺が弓を引き絞った時に…)ケッ
先ほど開いた大きな風穴は塞がり、傷が元から無かったかのように再生している。
「くっ…」ペッ
距離を取り口に残った血を吐き出し、刀を構える。
「お前もそうならまどろっこしいのは辞めだ」
兜は持っていた弓を消し、太刀を出現させる。
「ここからは斬り合いだッ!!!」
お互いの刀がお互いの皮膚を斬り裂く。
斬り合った直後、兜が言った先程の言葉、違和感の正体に魁斗は気がつく。
兜は魁斗に斬られた傷が煙を上げながら再生している。普通の妖魔ならば消滅していてもおかしくない傷。
「そうか、兜。お前の限定解放は…」
「はッ、俺は限定解放で守りの鎧を捨て去った。鎧を捨て去る代わりに妖魔の持つ再生能力を極限まで上げてんのさ。だから俺とお前は今は同じ状態って訳さ!」
兜の振るう刀を魁斗も刀で弾く。
(力が上がってる…?)
先までは受け流したりで防戦一報だったはず、それなのに弾くほど力が上昇していることに違和感を覚えると同時にその誤算が嬉しくなる。
(攻撃力、速さも元よりも高くなってるはずなのに、こいつもそれに対応してきやがる…これだよ、俺の求めていたものは!)
兜は生まれてから殺し、食らい、そればかりだった。この姿になってから無抵抗の人間を殺しても何も感じなくなっていた。まるで砂漠にいるような“渇き”に苦しんでいた。
刀と刀がぶつかり金属音が辺りに鳴り響く。そして弾きの反動の隙を逃さずお互いに肉を斬り裂く。飛び散る血をものともせず両者はお互いの存在を確かめるようにお互いの皮膚を切り刻む。
(お前は俺が戦った中で2人(・・)目だ!渇きを癒してくれる人間!この渇きを!無くせるほどの殺し合いを!)
「ハハハハハッハ!」ニヤッ
「…」
(兜、お前も気づいているだろ…自分の限界に…)
魁斗の異能は『不死』であり才能開花でその不死性を極限まで高めている。故に才能開花中、絶対に死ぬ事がない。
一方妖魔である兜は妖魔特有の再生能力を極限まで高め、斬られた直後に再生する。言わば擬似的な不死。だが、限界は存在する。両者同じ不死性を獲得してはいるが上限がある。魁斗は才能開花が切れれば一時的に不死では無くなる。そして兜は妖魔の再生限界を迎えると不死で無くなる。
(ここからは意地だ!)
「アアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
(楽しい、こんな時間が永遠に続けばと思うほどな!)
兜の振るった刀が魁斗の左腕を飛ばした直後、魁斗は自身が再生できない事が分かる。
「ッ!?」
「先に限界が来たのはお前だったようだな!楽しかったぜ!!」
名残惜しさを感じながら刀を上段に構え縦に振るう。
“獄・兜割”
兜は刀を振るう直前、魁斗が右手に持った刀を鞘に収める姿を捉らえる。
(こいつまだ、諦めてない!?)
「一心流」
居合・鬼哭花道(きこくはなみち)
居合にて兜が振り下ろす刀よりも早く抜刀、両碗を切り落とす。
(あいつまだこんな力残してやがった…)
兜は再生を試みるが限界は自分にも来ていたようだ。
「ありがとな、潤ったぜ」
見えるは死への花道。これは魁斗なりの配慮なのだろう。
「ふぅ…動けねぇ…」ドサッ
「あ、おい!動けねぇじゃねぇ!早く俺にとどめをさせ!こんなの生殺しじゃねぇか!」ジタバタ
「しょうがないじゃん、俺は才能開花した後って睡魔に…襲われるんだか…ら…」スゥスゥ
「たく、人間ってのは分からん」
「勝負、着いたんだな。魁斗」
上空から痺れの取れた紘が降りてき魁斗の肩を持つ。紘は兜を一瞥したあと魁斗を連れ空間転移でその場を離脱する。
「俺は、このままか…???」
両腕をもがれた妖魔は地に伏し、消滅を待つ。もう傷は治らず、身体の崩壊が始まっていた。彼の最後の願いは死合った彼からのとどめであった。
「あれ、座標が変わってる?」
(違う、これは何かに弾かれた…音波か!?)
空間転移した先は勿論、特課の事務所だった。それなのに少し外れた路地裏へと転移した。
魁斗を壁に預け、急いで特課に向かう。
息を呑む。そこに建てらていたであろう特課の建物は見る影もなく、あたりの地盤を変え、瓦礫の山となっていた。
「これは、どういう事だよ…」
守り手である自分の結界すら壊れていたことに気づかなかった。いや、気付かされなかった。
(あの時からもう、音波や他の数字持ちの策は嵌っていたのか…あ…ぁぁ!?)
倒れている2人の人物に駆け寄る。
帰る場所なく、倒れた2人を抱え夜の街に吠える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます