episode.11 因縁

『先日発生した大規模な山火事による死傷者は0で警察は出火原因を』


「とまぁ、警察が調べてくれてはいるが前にも似たような事件があった」


テレビの電源をリモコンで切りこちらに向き直る帯人。


放課後になった直後の緊急招集…蜜璃さん、結奈さん、麗央さん、紘さん、おじさん、そして俺という出張組以外のメンバーが集まっていた。


「はい、ちょうど1ヶ月前の4月7日。その日は雨の日で今回のような規模の森林火災にはなりませんでしたが…」


結奈さんが口にする。結奈さんは事件の資料を全て暗記しており、それを“記憶の本棚”へと収納している。


記憶の本棚

結奈の記憶を本にした物で、本棚とは結奈の脳のことを指す。つまり記憶=本、脳=本棚。

(異能ではありません。記憶量が異次元ではありますが…)アセアセ


(その日は俺と雫が出会った日だ…)


その日付に引っ掛かりを覚えるが、その引っ掛かりもすぐに無くなる。偶然だと思うことで。


「今回とその事件の共通点はどちらも上空に龍型妖魔が確認されているという事です」


数字持ちであり、No.4を身体に刻む妖魔。普通妖魔は人を食べ、その人の記憶、身体を基に自身の体を形成するが、この妖魔は人を食べても人にはなれず、龍の姿のまま力を付けた正真正銘の化物である。


「面白くなってきたな。そろそろ雑魚狩りも飽きてきたところだ」


「麗央は最近発散(ハッスル)できて無かったもんね〜」


「それよりなんで今こいつが現れたんですか?」


「それも分かってないんだろ?だから俺たちを緊急でここへ呼んだ。街の巡回をより一層強化する為に」


蜜璃の言葉に帯人は頷く。


「今日から慎重に行動してくれ。あと3日程で静恵(しずえ)と守人(もりと)も帰ってくる」


静恵(しずえ)・守人(もりと)

出張で北海道へ飛んでおり3ヶ月ぶりに帰る予定。


「紘は久しぶりに巡回をしてもらう。何かあったら連絡する」


「えー!!!俺はここでゲームしてたいのに…」ゴニョゴニョ


「魁斗、紘がサボらないように一緒に行動してくれ。では解散」


俺は自身のロッカーから刀を取り出し肩に持つ。未だにブーブーと駄々を捏ねている紘さんを連れ街の巡回へと向かう。



街の巡回へ出て数時間が経過した。その間に4匹の妖魔を討伐した。


「え〜毎回こんなにいんの〜?」


さっきから全ての戦闘を俺に任している紘さん…実際謎だ。紘さんが戦っているところなんて見た事がない。いつも事務所でダラダラと過ごしている。


「確かに今日は多いですね…」


いつもなら1匹見つかるか、見つからないかなのだが…今日は異常なほど多い。


(個々の力が弱くて助かった)


「ん〜?魁斗、少し任せるよ」


そう言い紘さんは空中へと飛び上がる。


「え?ちょっと紘さん!?」


(あの人空飛べるのか…)


「余所見したらダメだよ、大量に来てるから」


その声を聞き、正面へと向き直ると先程まで感じなかった妖魔の気配がゾロゾロと押し寄せてくる。


(数十の規模じゃん…明らかに異常)


「離れた妖魔1箇所に集めて、後は俺がやる」


紘さんの言われた通りに刀を抜刀し、全ての妖魔を道路の真ん中へと誘導する。


(さっきの妖魔より力が強い…俺1人なら全員討伐できなかったな。あとは…お手並み拝見)


妖魔達から距離を取り名を呼ぶ。


「紘さん!」


「任(まっか)された〜!」


“転移除去(トラッシュ)”


1箇所に集めた妖魔達の頭上に大きな輪が出現し、妖魔達の腹部へ止まるとその腹部から上全てが消えて無くなった。


「よっと、終わり終わり。お疲れ〜」


「紘さんの能力って…」


「ん?ああ、俺の戦闘見るの初めてだもんね。俺の異能は“空間操作(くうかんそうさ)”。このワームホールを使って物体を転移させる事ができるのよ〜使用後疲れるけどね〜強いっしょ?惚れ直したっしょ?」


空道紘

異能『空間操作』

ワームホールを使い、物体の転移、人体の転移、部分的な転移、転移ならお茶の子さいさい。(注:転移する物量によって疲労感が変わる)


「惚れてませんが見直しました。いつも麗央さんとふざけているか1日外出せず、ダラダラと過ごしているイメージだったので」


(おじさんが紘さんを外に出さなかったのは力を温存させる為…?じゃあなんで今回外に出したんだ?それほどに状況が暗転してるってこと…?)


「ひどwまあでも見直してくれただけ力を使った甲斐あったって思っとー」ピクッ


紘さんが上空へと飛び、俺に叫ぶ。


「魁斗構えろ!来るぞ!大物」


その声に俺は瞬時に刀を両手で持ち構える。数秒も経たぬうちに此方へと飛翔する影を目視する。


“兜割”


「よう!この前のケリつけようぞ」


「…!?」


今度は力負けしないよう身体をずらして去なす。距離を取り体制を立て直す。


「数字持ち…名前は兜」


「覚えててくれて嬉しいぜ。あ?もう1人のガキはどこだ。後であいつにも礼をしないとな」


「会わせるわけないだろ?ここで討伐する」


「ハッ、やってみろよ!」


戦闘が始まり空中で加勢しようと動く紘。だが屋上にもう一つの影を見る。


「あのババァ!?」


ビルの屋上に居たのは紘の因縁の相手。杖をつく右手には3の数字が刻まれていた。


紘は迷いなくビルの屋上へと向かう。


「ほっほっほ、懐かしい顔じゃな。片割れは元気か?」


「認知症で忘れたと思ったぜ音波〜さっきの質問による回答だが死ね」


ワームホールから高出力の“電磁砲”を音波に向かって放つ。


電磁砲:電気を溜めて放ついわゆるレーザービームである。


「弟の力でテメェを倒す」


「少し遊んでやるかの」


直撃し、煙が上がる中から無傷の音波が現れる。


見下げる人間、見上げる妖魔。どちらが上か、下か。因縁の対決。

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