第12話 なんだろう、この気持ち

「あ、ち、チガウンデス…。」

墾田永年私財法の語尾がしょぼーんと沈む。


「…墾田永年私財法はイケメンが好きなの?」

「はい…まー…。」


墾田永年私財法は、小鳥遊からの言葉にシュンとしてしまう。


「金髪、ねー。」

「…あ、もちろん茶髪も好きです!」

「…そーなんだ?」


墾田永年私財法の言葉を聞いた小鳥遊は、自慢の茶髪のショートヘアを触りながら僕を見る。


「…フッ。」

「おい、ちょっと待て、どうして僕を勝ち誇ったような顔で見るんだ。」


まあ?確かに僕は黒髪だけど…?

墾田永年私財法にどう思われようと、どーでもいいというか?


「わ、私は黒髪が良いと思うよ!」

桜がなぜか必死にフォローしてくれた。でも、桜も黒髪だから自画自賛にしか聞こえない。


「三次元の金髪はちょっと…」

墾田永年私財法はちょっと黙れ。ややこしくなる。


「やっぱり二次元だよな!わかるぜその気持ち!!」

…。


「…誰?」

そういえばずっと隣にいた男に声をかける。


「いや、瀬川様ですが。」

完全に存在を忘れていたなんて言えない。


「いや、瀬川は今までの会話の中でずっと何してたん?」

「あー。ゲームのログインボーナスもらうの忘れてたから。回収。」

しれっと言っているが、今じゃなくて良くね?


「えっとー?瀬川君はゲームオタクってこと?」

桜が瀬川に尋ねる。


「…いや、俺はオタクって程ではないかな。人生の大半ゲームに使ってないし。」


「瀬川君、『しか』って言葉の意味知ってる…?」

桜って突然キツイこと言うよな。


「ほ、本当にみんなオタクなんだ…。ヤバい同好会じゃん。早く潰さなきゃ…。」


小鳥遊もなかなかキツイこと言うよなぁ⁉︎

…ほんと勘弁してください。


「つまり、田中君が美少女系アニメオタク、墾田永年私財法さんが女性向けアニメオタク、瀬川君がゲームオタクってことかな?」


「ああ。大体合ってる。」

桜がまとめてくれたのでわかりやすくなったな。


「あれ、墾田永年私財法って腐女子だよな?」

「…。瀬川、ちょっと黙れください。」


折角まとまったのに瀬川がぶち壊してきた。

墾田永年私財法に何か怨みでもあるのだろうか。


「? ふじょしって何?」

しかし、小鳥遊には伝わらなかったようだ。


「あ、日向さんは知らなくって良いんですよー!あはは…」

「大丈夫だよ、墾田永年私財法さん!日向ちゃんは同性愛とか許容してくれるから!」

「あ…墾田永年私財法、そういうこと…?」


桜が余計なことを言ったせいで場がシーンと静まる。

桜はなんかドヤ顔だから、良いことしたなーとか思っているんだろう。


「…。」

墾田永年私財法とか顔真っ白になって俯いてしまっている。


元々、小鳥遊は墾田永年私財法に憧れていたようだからな。

幼馴染として、良く小鳥遊の話を聞かされたものだ。


憧れの人に秘密がバレてしまって引かれたら、と思うと心が痛いのだろう。


「…同性愛ねー。いいんじゃないかな?人それぞれ好きなものって違うし!」

そう言うと、小鳥遊は僕をみてまたしてもニヤッと笑う。


(なんでこっち見てくるんだ、あいつ…)


小鳥遊も桜と同じくらい変わってるのかもしれない。






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