第51話

「あれだけ呪いを否定しておきながら、このざまとはな」

「これがお前の言う呪いなのか?」


 レンの問いかけに璃兵衛はうなずいた。


「心臓が止まっても人の想いは残る。だからこそ呪いがある……そう考えると呪いはある種の祝いなのかもしれないな」

「祝い……?」

「まじないは呪いとも書く。お前がいつかよみがえると信じてミイラにして、棺を開けた者の命を奪う呪いをかけた者もそうだ。他者に対しては呪いだが、それはお前への祝いであり願いだった。棺を開けたのが呪いに耐性のある俺だったことは想定外だっただろうがな」

「……名前を削られて、自分に関する記憶がなくとも、それは祝いと言えるか?」

「あれだけの呪いをかけるには、かなりの手間と時間が必要だったはずだからな」

「そうか……」


 レンの肩にいるバーの羽根を撫でながら、璃兵衛は未だ青い炎に包まれる安楽に告げた。


「その祝いがどうか千年万年と続きますように。ただしあなたにとって、それは祝いではなく呪いかもしれませんがね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る