第15話
「一蓮托生いうんは、こう、心や体がひとりの人間みたいにひとつていうか、ふたつがひとつっていうか……簡単に言うたら強い絆で結ばれとるってことやな。まぁ、あいつのこと頼むわ!」
富次郎からそんな言葉と共に見送られたレンは空を見上げた。
青く広がる空はかつて見たものと変わりはないはずだが、今こうして見ている空は広く、そして美しく思える。
そんな空を一匹の鳥が弧を描くように飛んでいった。
「ふたつでひとつ……間違ってはいないか……」
鳥の羽ばたきを見たレンは迷うことなく足を進めた。
***
鳥に導かれるようにレンが璃兵衛を見つけたのは、とある長屋の近くだった。
「あんたぁ……しっかりしてや、あんた……!!」
長屋の一室からは泣き叫ぶ声が聞こえ、長屋の住人達は悲しげな表情を浮かべながらも好奇心を隠しきれない目を向ける。
「なぁ、聞いたか? お春さんの旦那亡くなったんやって」
「やっと金も貯まって手術できるて時に、なんや急に手術できんて言われたとか」
「貯めた金も盗まれて葬式もあげれんなんて……気の毒すぎて言葉も出えへんわ」
ひそひそと話しているつもりなのだろうが、そのやりとりは近くにいた璃兵衛とレンの耳に届いていた。
「富次郎が恐れていたことが現実になったか」
「阿片の盗難はもう隠し通せないだろう」
人の口に戸は立てられない。ごかますことができたとしても、それもどれくらい持つかだ。
「しかし意外だな」
「なにがだ?」
「お前がこんな人助けに積極的に動くことがだ」
「……まあ、俺も医者に全く縁がないわけではないからな」
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