第12話
「だが、あれは大量に使うものではなかったはずだ」
「お前が言う通りだ。容量を守れば薬となるが、間違えれば取り返しのつかないことになる。犯人探しよりも阿片の行方を探すのが先だろう?」
「お前の言葉は毎度耳が痛いわ……」
富次郎は深くため息をついた。
「阿片の行方は追ってるもんの、全く足取りがつかめん。それと阿片を盗まれた医師いうんが、これまた厄介でな」
「無免許医師か」
「あぁ……せやけど、そうした医師がおるから治療を受けられるもんもおる。ただ、そのせいで被害を届け出えへんもんもおるからな」
阿片を取り扱うことができるのはごく一部の医師のみにもかかわらず、なぜ無免許の医師が阿片を持っていたかを問われることになれば、届けを出さない者もいる。
富次郎達が把握している以上の阿片が盗まれていると考えていいだろう。
「このままやったら治療や手術ができんくて、助かるはずやった者も助からんようになる。己の利益のためだけに大勢の命を救うはずのもんを盗むんが、俺は許せへん」
富次郎は悔しさをにじませ、拳を己の膝に叩きつけようとする。
その拳を止めたのはレンだった。
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