第5話
「楽しかったな」
「ええ。同時に恐ろしくもあったわ……。あのクラス、アナタだけではないのね変態」
あのあと、演技指導の授業はしっかり
ところで、
「アナタもてっきりお
「魔法少女にお触りなんざ厳禁だ! まして俺は男で、ミノ先生は女だろ」
「元は男よ……?」
基準値がどうなっているのかも分からず、つい雷無は反射的にぼやく。
すると、その
「よぅっす。……けっこう騒いでいた割に、ああいった場面では冷静とか変な常識枠じゃね、アンタら」
「む……ダウナー系の」
「名前を呼べっつーの。あーしは
「コレのアンテナはちょっとよく分からないわ。たった今、より迷走したもの」
「うん……? メタファ?」
完全下校時刻をしらせる
話題はもちろん、学園について。
「絶対イロモノしかいないって踏んでたけど……
「同感ね。おまけに性別も身長も、顔つきも変わるんだもの。あれなら保育園につれていっても一発オーケーよ」
「保育園に合法現役魔法少女を……⁉︎ 素晴らしいなっ、英才教育極まれりだ。きっととんでもない逸材が現れる!」
「ホント魔法少女にお
魔法少女好き、というのは、こんなセカイになったのだから珍しくもない。歴史書をかじってみれば、魔法少女は女児向けアニメ、ひいては深夜帯に放送されるアニメに頻出していた。時代が変われども、魔法少女がきわめて珍しいものでもないのだ。それを好む、
だが、この極めつけは珍しい部類だろう。なんかもう魔法少女さえあれば生きていけそうな極限の彼は。
そんなお
「……だけど、あのノミは確かな実力・知恵に
「わかりみ。現役魔法少女って言葉、さすがに尾びれついたホラって思ったけど、人を指導できるほどに
「ええ。あの年齢で魔法少女を続けられているんだもの。……相当に強いハズ」
すると、能砥もまた驚きと感動を露わにする。
「だよなぁ、凄いよなぁ……! 年をいくら食おうが、魔法少女らしく可愛さをキープしている。ミノ先生はとんでもないやり手だぜ‼︎」
「「…………は?」」
まるで得体の知れないものを見るように。
さも
ひとつ静けさが満ちる。春先の桜花弁マシマシの風が、三者——いやいっそ二者ひとりの合間を吹き抜けて、
「アナタもしかして、」
言いさした雷無のすぐ隣、学生寮直通の特別運行バスが到着。ドライバーは乗車をうながすブザーを押したらしい。
雷無のことばは
「……まー、教育方針はさまざまだし。こうなると家庭内に事情アリ」
「…………そうね」
雷無とモノギは学生寮行きだ。
——果たしてそれが理由だったか——
人は未知に恐怖するという。この場合、未知を見たのは能砥、いや、
「なんだ? 質問的なものじゃなかったのか?」
「悪かったわ。もしかすれば、アナタもトランスセクシャル魔法少女になるのかもね、って言いたかっただけよ」
「そんな簡単なものか……? 激レア! って感じがするぞ」
「——なれるんじゃないかしら? 今のところ、クラスの誰よりもピュアだものアナタ」
そう告げて、雷無は乗り降り無料のバスに乗車。
モノギもまた
「アンタ誰よりも悩むことになるよ。……
「お、う……?」
「っあー、慣れないし気恥ずかし。あーしの柄じゃないな、こういうの」
くるりと足を捌き、モノギはこちらに背中をむける。ほぼ同時に分厚い扉は閉まる。うえから
——
「ピュア……誰よりも、悩む?」
はてさて難解ななぞなぞを出された
けれど、魔法少女志望の学生であるとともに、能砥はひとりの兄だ。
「……あ。
疑問よりもまず、生活力ゼロの妹にご飯を振る舞わねばならない。
能砥は兄のプライドを抱きつつ、朝同様、磁力線を
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