第4話
シンデレラは並行世界の
しかし魔力という単位を知らない少女は、悪魔に騙されているとも知らず命すべてを捧げたトリップ魔法を発動。まもなく死を
悪魔はがっぽがっぽと人間ひとりぶんの魔力をゲット。ホクホク顔で帰ろうとすれば、後ろには全身まっくろのドッペルゲンガー。
いわく、私をシンデレラにしなければお前と同一化してお前を食う、と。同一化願望を根っこに、冥界から走ってきたドッペルシンデレラは、悪魔を
「ちょい待ち。誰よ、このヒステリック
「初動は
トントン拍子で進む奇妙な復讐劇。
たまらず
「アドリブにしては飛躍したな……まさしくこの先が楽しみ、ってヤツだ!」
「うっさい。っつーかアンタすごいな。いきなり脈絡ゼロで練習スタジオ中央に立ったと思えば、
「その通りがすぎるわね。なによ、可愛すぎてギルティ♡ って。というかどうしてアナタの
「可愛さにはハートマークがつく。至極当然だろ」
ひと演技終えた能砥は、持参した水筒を
はなはだこの男は謎理屈でアクションしている——とやにわに感じた折、ここにきて初めてのリテイクが入った。
「ん、重複。それとあくまでも魔法少女育成にかかわる授業だからね。さっきのノウト君みたいな可愛さがほしいな、いや不可欠だね。具体的にはオーディエンスさんに、あの子ハートマークがついているよって
「は、……ぁ……? やってみます」
クラスメイトのひとりが毒牙の
凛々しい調子でセリフを熱演していたにもかかわらず、求められているのは性別関係なしの可愛さという怪演……
「魔法少女志望のレッスンだから、どんなキャラクターを演じるにせよ可愛さを出し尽くせって? ——んな理不尽」
「
「ヤ、落ち着いた魔法少女の子もいるっしょ。
「可愛くない魔法少女なんていない! 可愛げのない魔法少女も可愛い行動と思考パターンでいる! 魔法少女の根っこにあるのはどう足掻いても可愛いだッ!」
可愛い王子様を演じるクラスメイトのかたわら、演技でもなく熱を露わにする能砥。おかしい。彼女よりも気迫たっぷりである。
「——ザッツライト、うーんおじさんも同調。魔法少女は可愛くないとねー」
「
「はははテレパスだから安心してね
「わかりましたノミ」
「あれ嫌われてるかな」
話の輪の中へしぜんと
「だよな先生! じっくり聞いてみれば、魔法少女たちの語尾には必ずやハートマークがついている」
「うんうん。おじさんもできるからね、魔法少女のデフォルト武器さ」
「は……? 何、え? できるって——語尾ハート?」
「そりゃあ現役魔法少女だよ? 可愛さが武器なんだからねぇ。お酒を飲んだ次の日はできないけどさ……」
酒焼けした魔法少女なんて見たくもないだろう。というかお酒をたしなむ時点で成人済み。あどけなさや
そんな意見を、ダウナー調子できっぱり言葉にしてしまう。
「イメージ不可能すぎ。というか妙齢中年が魔法少女ってどういうシルエット?」
「同意見ね。さっきから現役とか魔法少女とか、舌先だけで信じるにはさすがに無理なワードが飛び出しているわ。
「…………。しょうがないねぇ」
ふと、エチュードが
当然。ながらくリラックスお座りしていた教師が、やや辛そうに腰を上げたのだ。
「うーん注目。今からおじさんが、
「「「————」」」
「よぉく目に焼き付けてよおじさんの魔法少女姿——トゥインクル♡」
スタートアップコマンド。ひとたび国家から魔法少女認可された者は、さずけられた手首のブレスレットにオーダーを叫ぶことで魔法少女へと遂げる。
その証拠に、ミノの白衣姿を壮大なフラッシュが包む。やがて光は
その愛の形から生まれ出たのは、
「魔法少女ミノ、爆誕!
ポップでキュートなふりふりドレス。気だるそうな瞳はどこへやら、モッツァレラチーズのようなくりくりの瞳。唇を隠すようにちょい足しされたツケ髭。
柱谷ミノは、魔法少女になっている。
白をベースにしたカラーリングの、一四◯センチ台
「……あら不自然な沈黙。うん。気持ちはわかるよ、おじさんも最初はトランスセクシャルとかするんだぁーって鏡を見て驚いたからね」
スワップの術式でもなければ、空間に魔法少女を隠していたわけでもなし。ほんとうにあの長身
「……怖いぐらいに沈黙だねぇ。まー、おじさんも目の前で男の子が女の子に変身すると、驚きで腰が抜けると
たはは、とゆるい巻き髪になったお団子ヘアをいじるミノ。気だるそうに首裏を触るトランス前の
もっとも、この姿のままではお話も何もできないらしい。あんぐり口を
「ふぅうん疲れた——ってことで変身解じょ、」
「ストオォオォオオプッッッ‼︎」
だんまり空気を押し破るように
「マジ可愛だなミノ……
「え……うん? ああどうも……生徒からほどこし……?」
「あーし、ずっとチビっこい妹が欲しかったんすね。適合。三食しっかり出すんで、妹として迎え入れたいわ」
「教師は全面的に生徒の家に入っちゃあいけなくてね。……というか君、学生寮でしょ。他学科の生徒にどう説明を、」
「可愛いに説明は
きっぱりと
ここで危機管理能力が発動。ミノはすぐさまブレスレットをかざし、魔法少女姿の解除を試み、
「たっぷり可愛がってやるぜミノちゃぁああん‼︎」
「そのフワフワお団子を
「大人しく妹になれっつーの、パジャマ買ってあげるし‼︎」
「ちょーぉぉおいッ? 君ら顔合わせて二日目のくせに連携力高っ——ちょっ、揉むなおじさんの胸板だぞ⁉︎
例年通り。
柱谷ミノは、実力誇示のために魔法少女にトランスセクシャル。そののち、魔法少女をこよなく愛する生徒たちに揉みくちゃにされる……
いつも通りだ。前年も一昨年も、ほとんど同じように襲われた筈。
歴史は繰り返す。あやまちは
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