第3話

星が光る。満点の星空の下で君は今何を思うだろうか

家庭の経済的環境で行くことが叶わなかった大学の事を思うだろうか

愛する愛犬の死を思うだろうか

それともありもしない空想の人生に今日も身を委ねているのだろうか

君の仕草のどれもが僕の目に焼き付いて

数年たった今でも忘れられないでいる。


今日は遠出をした。行先は様々な文学でも題材になっている静岡県だ。静岡県東部、関東地方に隣接した有名観光地にゆらりと足を延ばしてみる。

どこの田舎でもほとんど変わりがないような電車からの車窓を視界の隅に置き、折角の旅行だとは分かっていても外界に関わる心的負担から逃げるように本を読む。

大きな停車駅に着く直前は決まって息を飲む。今日は休日ということもあってか地元のローカル線には友達や家族と電車に乗ってくる幸せな塊が多い。

そういうものと比較しては自分のふがいなさに心が締め付けられる。自分がみじめに感じられるし孤独感も感じる、そして何より自分の存在自体がこの環境において異質で醜悪なものに感じられる。

酷い吐き気にさらされながらも電車で移動するしかない自分の財力を恨んだ。楽しそうに笑う大学生を見るとどうしようもない劣等感を感じる。惨めで情けなくてどうしようもない。どうして一人になれないんだろう、誰も電車に乗らなければいいのに。


やっとの思いでついた観光地。山が青々と生い茂り標高が高いこの場所では街が小さく見える。観光客が賑わう場所に心の休息所はなかった。


いつもふと思いつきで家を出て観光地に行っては疲弊して帰ってくる。特に何の成果も得られぬ事は繰り返して理解はしているものの家の中で時折襲ってくる巨大な孤独感に比べれば、日々何もしない事の自分への免罪符としては旅行は手軽に得られる果実であることに変わりはない。いつかこの日常が変わるときは来るんだろうか。いつまで僕はこの日常に耐えられるんだろうか。浅いところをグルグルと何度も周回する僕の考えはいつまでも答えを出せなかった。まるで答えを避けているように。

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