第4話

空が黒い。

どんよりと重たい空気に身をよじらせ、鬱屈とした気分になりながら目を覚ます。

午前零時、夜の暗い空をさらに濃く深くするような厚い雨雲が空を覆っている。

ジメジメとした空気と張り付く汗ばんだ肌は心を非常に不快にさせる。

足と腕を伸ばし布団の上で軽くストレッチをする。首も回し骨の周りに凝り固まっているように感じられる筋肉を丁寧にはがす様に動く。今日は特に肩の周りが酷く骨と筋肉の粘着を感じた。いつもストレッチするときはひどく凝っている時が嬉しい。いつもよりストレッチの意義が感じられるし何より気持ちがいい。


立ち上がり洗面台で顔を洗い、夜風に当たるために鉄製のドアノブを捻り外に出る。外は嵐のような気候になっているようで、ドアを開けたとたんに強い風に吹きつけられる。少量の雨に襲われ不快感を感じながらも外へ出る。風は一際強くなったように感じる。木が揺れその影がまた揺れ、深夜零時の静けさと雨風の音が心に不安な感情を抱かせる。酷く心狭くなり泣きそうになりながらも必死に耐え煙草に火をつける。家の中で煙草の煙を出さない自分で決めた取り決めはこんな雨の日には辛いものになる。不快感や不安感を感じてまで喫煙することをやめられないのは自分の自我の弱さだろうか。


世界には辛く悲しい事が沢山ある。毎日のストレスを限りなくゼロに近づけようと努力はするし、同じようなルーティンをこなしていてもどうしてもストレスは溜まってしまう。今日は昼寝はすることなくしっかりと夜の間中睡眠できるような時間に床に着こうと帰り道では思う。しかしどうしても疲労のあまり家に帰ってきた瞬間に布団に導かれ、いつの間にか意識が忘却の彼方へと飛んでいる。目覚めは不快な深夜であることが多い。この時間に目覚めると丁度煙草が吸いたくなり、煙草を吸うと寝れなくなるので次の日は睡眠不足に陥る。この悪しき習慣をなんとか撲滅しようと何度も挑戦しているがなかなか終止符を打つことは出来ない。


軽く一本吸い、二本目に火をつける。二本目吸うときは大抵起き抜けの不快感は抜けていて今日の一日について思いをふけることが多い。毎日毎日今日も何もない一日だったと思いながらほとんど無心で煙草を吸い続ける。いつ頃からこんなに変化のない苦しい日常になったんだろうと不思議に思う。


画像を投稿するようなSNSを使っていると高頻度で過去の知り合いの画像が流れてくる。お互い全くといっていいほど繋がりはないが、友達の友達であったりとかフォローフォロワー数を増やすために同じ学校の人だったりとか薄い繋がりのアカウントから、小学校中学校仲が良かった人のアカウントから流れてくる。高校卒業してキラキラした日常を送っているものも大学生活を切り取って投稿しているものも自分の喉から黒い柱状のものが口へと繋がるように苦しさを覚える。苦しい感情は感じるものの自分が実際この投稿の何にこの感情を作るのか正確には分からないし解決方法も分からない。ただただ毎日の吐き気とともに生きる事を選択する、それ以外の道は自分には想像することが出来なかった。

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