ラインで幼馴染といちゃついてみた

久野真一

ラインで幼馴染といちゃついてみた

夏菜子かなこ、まだ起きてるかー?』

『こんばん🐶』

『……なんで🐶?』

那太なた。寒いギャグを解説させるの止めて欲しい』

『あ!わかった。こんばんわんこってことか』

『だからって解説しないでってば。余計恥ずかしいから』


『今夜に限ってなんでらしくもないギャグを?』

『言わせる気?』

『悪い。本気でわからん』

『ヒント。今は何時でしょう?』

『午前1時過ぎてるな。それが?』

『那太は普段だともう寝てる時間でしょ』

『時々は起きてるの知ってるだろ』

『だから!ラインしようかと思ったけど寝てるかもでしょ』

『迷ってたとこに俺からライン来たからついはしゃいじゃったと』

『だから言語化しないでってば』


『通話するか?』

『隣の部屋に聞こえちゃうかもだし。やめとく』

『お隣さんうるさいもんな。ちょっと夏菜子の声聞きたかったんだけど』

『直球で照れること書かないで欲しいんだけど』

『夏菜子は初々しいなあ』

『那太も私が初カノでしょ。なんでいつも平気そうなのよ』

『夏菜子が照れすぎなんだよ。手繋ぐだけで真っ赤になるとか漫画か』

『なんでこんな男の子と恋人になっちゃったんだろ』

『生まれつきだよ。夏菜子はよく知ってるだろ』

『知ってるよ。付き合いも長いからね。でも、なんだかんだ人見知りな私を引っ張ってくれたのは感謝してる。そんなところも好きになった理由の一つかもしれない』

『夏菜子。かなり恥ずかしいこと書いてないか?』


【かながメッセージの送信を取り消しました】


『深夜のテンションってやつだから忘れて』

『残念。もう既にスクショ撮った』

『消して』

『消さない。iCloudにも保存済み』

『イジワル』

『夏菜子をイジメるのが趣味なんだ。知らなかったか?』

『知ってるけど』

『それとも嫌か?』

『わかってて言ってるでしょ』

『どうだろう。本気で嫌かもしれないし』

『ただの照れ隠し!』

『勝ったな』

『何がよ』

「精神的な意味で』


『今度デートで行きたいところあるんだけど』

『いいけどどこだ?甘味処はかなり制覇したよな』

『なんでスイーツ前提になってるの』

『だって市内のスイート系の店かなり連れ回されたし』

『そうじゃなくて……景色でも見ながらお散歩とか』

『花より団子の夏菜子が珍しい』

『喧嘩売ってるの?』

『事実だろ。お花見でもすぐ飽きて喫茶店入りたがるし』

『とにかく!お散歩デートどう?』


『お散歩って言っても色々あるけど、遠出したいのか?』

『近場。河辺に男女が等間隔で座ってるあそこ』

『なるほど鴨川かもがわ。確かに一度やってみたかったんだよな』

『……那太にしては意外』

『一度、カップルの群れをじっくり観察してみたかったんだよ』

『撤回。全然意外じゃなかった』

『失敬な』


『付き合ってもう半年以上になるのよね』

『急にどうした?』

『一年前の私は信じなかっただろうなって』

『俺もなんとなく友達でいるんだと感じてたな』

『本当に何がきっかけかわからないものよね』

『思い出したけど、結局何がきっかけだったんだ?』

『……』


『からかわない?』

『まあ。今回は真剣な話みたいだし』

『去年の文化祭。覚えてるかな』

『なんかあったっけ』

『那太、天文部の部長だったでしょ?』

『もう引退したけどな。思えばあのときはほんと大変だった』

『陣中見舞いでもと思って、天文部の部室に行ったのよね』

『後輩が、夏菜子からの差し入れだとか言ってたな』

『あの時の那太、私への態度とは別人みたいだったのよね』

『まあ。俺も真面目にやるときはやるさ』

『ほんとにね。それまでも友達としては悪く思ってなかったけど、アレを見たときに、私のことをどれだけ気遣ってくれたのかわかっちゃって。気がついたらあなたのことばっかり考えてた』

『ちょっと待て。なんで急に恥ずかしいこと語りだしてるんだよ』

『深夜のテンションだから開き直ることに決めたの』

『凄く照れるから勘弁してほしいんだけど』


『今夜だって、私が寂しがってるだろうなって思ったんでしょ?』

『帰り際、しゅんとしてた気がしたからな』

『でしょ。私のこと理解してくれてるのも凄く嬉しい』

『待て待て。深夜テンションにしてもこれ以上は本当に照れるから!』

『止めない。今日は私が意地悪する番』

『夏菜子、文体が少し子どもっぽくなってないか?』

『深夜テンションなの』

『なんでも深夜テンションで誤魔化すなよ』

『……』


『普段、あなたにあんまり好きの気持ち言えてないから。たまにはいいでしょ?』

『もういい好きにしてくれ』

『うん。好きにする。告白のときはそっけなくてごめんね』

『別に気にしてないけど』

『あなたはそうでしょうけどね。私は結構照れ臭かったの』

『そうだろうなとは思ってた』

『本当はね。あの時も「大好き」って言いたかった。ずっと優しくしてくれてたところも、行動力があるところも。人のためになることが大好きで、でも照れ屋さんなことろも』

『普段、俺がどれだけ恥ずかしいことをお前に言ってたかわかった気がするよ』

『だから言ったでしょ。今は私が意地悪するんだって』

『ありがたく受け取っておくけど。明日、後悔しないようにな?』

『恥ずかしくなってるかも。でも、言いたかったことだから』


 なお、この後も夏菜子は俺に色々恥ずかしいことを言ってくれたのだけど。

 翌朝、顔を合わせたときは恥ずかしくて顔がみられないとのことだった。

 だから言ったのに。でも、まあ。

 大好きな彼女の可愛いところが見られたからいいか。


☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆

 前に会話文だけの短編を書いたことがあるのですが、今回は文面だけのやりとりです。那太なた夏菜子かなこの関係の詳細についてはあえてぼやかしていますが楽しんでいただけたら幸いです。


 楽しんでいただけましたら、★レビューや応援コメントをくださると嬉しいです。

 ではでは。

☆☆☆☆☆☆☆☆

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