第33話 ななえと共に過ごす夜
おれとみなみが義理の兄妹であることが、みなみによってななえに暴露された。
どうしてみなみはそのことをななえに言ったのかはわからない。ただ、ななえが知ってしまった以上は説明をするしかなかった。
「ちょうど、二年前かな。父さんたちが再婚したのは。だからその時からの付き合いだね。義理の兄妹ってわざわざ言うのもなんだから、まわりにはあんまり言ってないんだよ」
おれはななえに、みなみとの関係をサクッと説明した。
「そっか。血が繋がってないんだねー。それってどんな感じなの?」
ななえは興味津々といったふうに聞いてくる。
「なんだよ。どんな感じって」
「だからさー、下着姿見たり、見られちゃったりとかあるわけでしょ? お互い変に意識しちゃったりとかないの?」
そんなもん、ありありのありだ。
だからこそ、あまり知られたくないんだよな。そんなことを他人に言うのは気が引けてしまうのだ。
「そりゃいろいろあるけどさ。時間経ったら慣れるもんだよ」
「へぇー、そういうもんなんだ」
ななえは、イマイチ納得してなさそうな顔をしている。
双子の兄を持つななえはバリバリの兄妹だから、そのへんのことはわからないのかもしれない。
「なーんか、義理の兄妹なのに、あんなに仲いいの羨ましいなー」
「ななえだって、ショウと仲よさそうに見えるけどな」
「はぁ? そんなわけないない。アタシ、ショウにはホンットに迷惑してんだから!」
「そうなのか? まあ、ショウはななえのことホントに心配してたよ」
「ふーん、そう」
ななえは、そっけなくそう言いながらも少し嬉しそうな顔をしていた。
みなみが風呂から上がった後はおれが、そしてななえが続いて風呂に入った。
おれが風呂に入っている間、みなみとななえの間でどんな会話がなされたのか少し気になったが、おれは何も聞かなかった。
そして、就寝の準備をしたおれたちはそれぞれ寝ることにした。
ななえはみなみの部屋で、みなみはおれの部屋で、そしておれはリビングのソファで寝ることにした。
よくよく考えたら、ナチュラルにおれのベッドで寝るみなみのことを、ななえはどう思ってるんだろうと気になった。
おれはソファで横になりながら、目をつむった。
夜中に、少し寝苦しくて目が覚めた。
あれ、寝ぼけてソファで寝ちまったのか。と一瞬思ったがすぐに思い出した。
少し体が痛い、かもしれない。やはりソファで寝るもんじゃないな。
──その時。
すぐ側に人の気配を感じた。
「ん、ん」
ソファで横になっているおれの隣に立ったのは、ななえだった。
おれの心臓は飛び跳ねた。
「え……ななえ。どうした?」
おれは、ななえの意図がわからず、とりあえず小さな声でそう聞いた。
「ん……ちょっと起きちゃって……」
ななえは、小さくそうささやいた。
「そうか。眠れないんだな」
おれはそう言って上体を起こした。
「何か話そうか。座って」
「ありがと。優しいね、ゆうだいは」
ななえはそう言って、おれの隣に腰掛ける。くっつくわけでもなく、離れすぎてもいない微妙な距離。
おれはななえの顔を見たが、窓から漏れる街灯の明かりしかない部屋では彼女の表情はいまいちわからなかった。
「……」
おれたちはしばらく黙ってただ座っていた。5分くらいか。
「ゆうだい、妹と仲いいんだね」
そこか! と、おれは少し戸惑った。てっきり事件のことで悩んでいるのかと思ったからだ。
「ま、まあね」
「いっしょにお風呂入ったりすること、あるの?」
「ぶふぉっ! あるか! そんなこと!」
いっしょにお風呂に入ったことは本当に一度もない。どうしてそんな発想になるのか不思議だった。
「ほんと〜? だって妹物のラブコメだとお兄ちゃんと妹はなぜかお風呂に入ったりしてない?」
ななえ……妹物のラブコメとか読むのか。おれはとりあえずツッコまないでおいた。
「ちょっと、妬いちゃうかも……」
ななえは、そう言うと隣に座るおれの手に触れてきた。
突然、手が触れ合ったことで、おれは心の芯が熱くなるのを感じた。
「ななえ……」
おれが隣を見ると、ななえもまたおれを見ていた。
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