平凡で面倒くさがりな高校生が口と運だけで勇者やってます

プロローグ

俺は佐藤平祐。身長170㎝、体重61㎏平凡な高校二年生。今日も普通に学校に登校する。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい」


近所の人への挨拶も欠かさない。


「おはようございます」


「あら、平祐君おはよう」


学校に着くと、友達が出迎えてくれる。


「おはよう、平祐」


「おはよう」


「昨日見た番組面白かったんだよ」


「もしかしてあれ?」


「そうそう~が~でさ。~だったんだよ」


「うん、うん。だよな」


キーンコーンカーンコーン。チャイムがなり、先生がやってくる。


「起立、礼」


「おはよう、じゃあ出欠取ってホームルーム始めるぞ」


ホームルームが終わり、授業が始まる。先週テストがあり、そのテスト返しの授業でほとんどが終わっていく。


「名前の呼ばれた者から取りに来い。えー・・・・佐藤平祐」


「はい」


「まあ、うん。頑張ったな」


テストを渡して来る先生の反応はほとんどこんな感じ。たまにいい意味で違う反応もあった。


「平祐君、今回はよく頑張りましたね」


まあ、たまにはね。先生の採点ミスとかがあったとかじゃないからね、決して。うん。

みんなテストが返ってきて一喜一憂している。


「~ちゃんどうだった?」


「ふふふ、今回結構よかったよ」


「えー、すごい」


「おい、~どうだった?」


「・・・聞かないでくれ」


「平祐、どうだった?」


「うーん、そこそこ。それより、早く部活行こう」


「やべっ。急げ。ドヤされるぞ」


授業も帰りのホームルームも全て終わり、部活動の時間に変わる。僕は剣道部に所属しているため、道場へと急いだ。遅くなるとめんど・・・何でもない。道場に着くとすでに三年の先輩がいた。


「おい、遅いぞ。ちっ、今回は見逃してやる。次は遅れるなよ」


何とかドヤされることは免れた。


「県大会、準優勝者のお前がいたからかもな」


「そんなことないさ」


俺は別にスポーツが特段得意というわけでもないし、不得意というわけでもない。この成績が取れたのは、部内では、相手の選手が悉く不調だったからだと噂されているが。本当かどうかわから・・・ない。まあ、全国大会では、一回戦負けしたんだけど。


「おい、二年、一年もっと声出せ!!」


「はい!!」


そして、部活動の時間も顧問の声で終わりを告げる。


「今日はここまで」


「「「ありがとうございました」」」



「はあー疲れた。コンビニ寄ってかない?」


「あー僕はいいや。じゃあまた明日」


「そっか。じゃあ明日な」




帰ったら、読み途中だったラノベを読もうと考えながら帰路につく。ラノベの内容は異世界ファンタジーで一番好んで読んでいるジャンルのものだ。それを楽しみにしながら、家の前まで着きドアノブに手をかけ、開けると、まばゆい光に包まれた。何かのサプライズ?と思うが誕生日でもないし、何か特別いいことがあったわけでもない。何かのドッキリか。いやそんなことする親ではない。


思考を巡らせるが結論に至らず、目を開けるとそこには、大勢の人々がいた。目の前には王冠を被り、白髪に白い髭を生やしたどこか威厳のある風貌の御仁が偉そうに座り、その横には、燕尾服を着た執事らしき人がいる。俺の周りには、甲冑を着てヤリを携えている人々やメイド服を着た人々。そして、僕の横にはローブを羽織った人が一人。下に目をやると、魔法陣らしきものがある。その人々は歓声に沸いていた。この光景、見覚えがある、いや読み覚えがある。


これってもしかして、異世界転移ってやつ!?







これは声を出していいところなのか迷っていると、おそらく王様だと思われる人物が、歓声に沸いている人々を落ち着かせた。


「静まれ、転移者が困っているではないか」


えー困っていますとも。家のドア開けたら、知らない場所で知らない人々に囲まれているのだから。


「済まないな。いきなりのことで驚いておるじゃろう。私はこの国、グロリア国の王、トウゲン・グロリアじゃ。お主の名前を聞いても良いか?」


「佐藤平祐です」


「サトウ・ヘイユウ・・・いい名じゃな」


今の間は何だろう。まあ、気にしても無駄か。


「ヘイユウよ、いきなりで悪いがそなたに頼みがある」


どんな頼みだろう。いやなんとなくわかる。この流れ、嫌な予感しかしない。


「・・・なんでしょう?」


「そなた、勇者になって、魔王を倒してくれ」


そうでしょうとも。そう来ると思っていましたとも。答えは決まっている。なぜならこんな武装した人が大勢いるなかで拒否できないし、何だったら、召喚士が期待の眼差しで祈るようにこちらを見ていた。それに、さっきまで温和そうだった王様の眼力といったら凄まじいものがあり、さっきまでの歓迎の雰囲気が一変、場が凍り付きそうなほど静まり返っている。こんなの断ったら、どうなるか目に見えて明らかだ。まあ、俺は助かる、かもしれないが


「はい、その頼み承ります」


こういうしかないじゃないか。静まり返った場がまた歓声が沸き起こり歓迎ムードに包まれる。こうなったら、のらりくらり平穏に生活する方法を考えるか。え、心の声が漏れてるって?だってもう隠す必要もないだろう。俺は大の面倒臭がりなのだ。それに、こんな平凡な俺が魔王を倒すことが出来るわけがない。不思議な力も備わっているなら別だが。


「おお、そうか。おい、あれを持ってこい」


王様がそう言うと、執事が奥へと消え、そして何やら大事そうに持ってきたではないか。そしてそれを王様へと渡した。


「ヘイユウよ、こちらへ」


俺は言われるがまま、王様のもとへ。えーとここは多分跪くのが正解だろう。


「うむ。それでは、そなたに我が国の国宝、この聖剣を託そう」


・・・重。ズシリと体に来る。掲げた両手をキープするので精一杯だ。こんなの振り回せるのか。ははは、不思議な力が備わっている気がしないや。


「有難き幸せ。必ずや魔王を倒しましょう」



言っちゃったよ。はあ、面倒くさい。まあ、こう言わなければもっと面倒臭いことになっていただろう。さて、どうしたものか。

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