幼馴染だから現状維持

「………つぅ。んん……」


 ゆっくりと目を開ける。


 どのくらい寝ていたのだろうか……。

 体の怠さは良くなってきた。頭も……ちょっとズキズキするくらい。起き上がれば目眩がしたが……もうひとり眠りすれば回復しそうといったところだ。


 明日には体調が良くなって学園に登校できる。


「旭晴には感謝しないとね……」


 安静にしてないというのは分かるが、1人はやはり孤独で寂しい。

 1人で痛み感じ、苦しみを耐え、1人で良くなるように眠りにつく……。

 熱が出て寝込むというのは、いくつになったって……寂しい。


 けれど、看病してくれる、すぐ駆け付けてくれる空間にいる、というのは……とても安心する。熱も早く良くなる気がした。


 明日回復したら旭晴のおかげ……。


「すぅ……すぅ……」

「えっ、寝てる……?」


 視線を動かすと、部屋の隅で横になり寝息を立てている旭晴の姿が。疲れて眠っまったのだろう。

 

「眠るなら、ちゃんとしたところで寝なさいよ……」

  

 しかも、まだ微熱がある私と同じ空間で……熱が移ったらどうするのだろうか。


 まあそんなこと考えたら、そもそも看病なんかしないか。


 なんて一人で完結させ、気づけば目眩なんてなく立ち上がり、床で寝る旭晴に毛布をかけていた。


「ありがとう、旭晴」


 そう、これが私たち幼馴染。

 お互い直接会話を交わさなくてもなんとなく分かる関係。


 だから現状維持の方が……心地はよい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る