雨の日は積極的になれる気がする③
「旭晴なに固まってるの?」
「い、いやその……身体まで洗うってほんと?」
「ほんともなにも身体は綺麗にするものでしょ」
「こういう時だけ変に鈍感にならないでよ。弘香ちゃんが自分で、自分で! 洗うんだよね」
「旭晴が洗うのよ」
「………」
今日の弘香ちゃんはやけに積極的だなぁ!!
でも、僕以外の男にもこうなるのか、僕が幼馴染だから信頼してやってるのか……謎だ。前者なら教育方針を親御さんと話す。後者ならご褒美。
すると弘香ちゃんがこちらを振り向き、
「もしかして旭晴……私の身体を洗うこと、恥ずかしがってるの?」
「そ、それは……」
妙に熱い瞳に見つめられたため、視線を逸らそうとしたが僕の目はバスタオルを巻いている弘佳ちゃんの身体にいく。
髪を濡らしたことで湿ったバスタオルが弘香ちゃんのボディーラインを表す。くびれはキュッとしつつ、出るところは出ていて……。
この巨乳僕が揉んで育てたんだよなぁ……じゃなくて!!
乳ワールドに取り込まれている場合ではない。
僕は視線を壁に逸らし言う。
「弘香ちゃんは女の子だし、綺麗だし……そりゃ恥ずかしいよ……」
「ふーん」
普段クール(?)な僕が恥ずかしながらも伝えたんだ。弘香ちゃんも鬼ではないだろう。きっと「そう、なら自分で洗うわ」って言ってくれるはず……。
「散々私のおっぱい揉んでるんだから今更でしょ。早く洗いなさい」
「理由を聞いた意味!? 僕これでも勇気出して言ったんだよ!」
「はい、早くして」
「バスタオルを迷いなく取っただと!?」
再び背を向けたと思えば、弘香ちゃんはバスタオルを外ずし始めた。
「っ……」
白くて美しい背中があらわになり、見惚れた僕は一瞬、息が止まった。
胸を揉んでいた頃は、背中から揉んでいたので見慣れていたはずなのに……浴室という空間がさらに魅力的に、色っぽく見せているのかもしれない。
「……どうしても僕が洗わないとダメ?」
「………。な、何度も言わせないで。旭晴が洗ってくれないなら……悲鳴あげるから。もしかしたらお姉さんかおばさんが帰ってきてる——」
「はい分かりました! この楓旭晴! 誠心誠意洗わせていただきます!」
お姉さんや母さんの顔が浮かび背筋が凍った。その2人を出すのは反則!!
「じゃ、じゃあ洗うからね? 悲鳴を上げてビンタするなら今だけだよ?」
「こっちからお願いしているのにそんなことしないわよ。……あとなんだか疲れてきたから身体洗い終わるまでは極力話さないでいい?」
「あ、うん……リラックスしてもらって」
そうだ。僕は洗い屋さんと思えば変に意識せずに済む。弘香ちゃんの身体を綺麗にすることだけを意識して……。
たっぷり泡立てたボディタオルでまずは背中から優しく撫でるように動かす。
「ん……」
「洗い加減はどう?」
コクリ
頷く。どうやら良いようだ。
まずは背中から洗い、温かいシャワーの水で流す。
流している間に考える。
(どこまで洗えばいいのだろうか……)
ラノベの中でよく見るのは背中まで。しかし弘香ちゃんは『身体』と言っていた。おっぱいは洗うだろうとして……太ももとかその……デリケートな部分はどうするのだろうか。
「弘香ちゃん次は腕ね」
「……ん」
ひとまず腕を洗う。腕を上げてもらって隅々まで。そしてまたシャワーで流す。
さて、次はどこを洗おうか……。
「………」
弘香ちゃんは黙ったまま。
(ま、まあダメだったら弘香ちゃんがビンタなり殴るなりするよね、うん……)
僕はいつでも大丈夫なように歯を食いしばり、弘香ちゃんの太ももへボディタオルを伸ばす。
後ろからだと、あ、洗いにくい……。
手を伸ばしながら洗っていると、太ももの内側にボディタオルが滑った。
太ももの内側は敏感らしく、
「んっ……」
弘香ちゃんも声を漏らした。
「わ、わざとじゃないよ! ……や、やっぱりここはまずかった?」
「……くすぐったい」
「うん、くすぐったいね」
「………」
くすぐったいから次の言葉が出てこないよ。えっ、まさか続けろってこと?
ふ、太ももの内側……さらに先は———
「さ、さすがに今の僕じゃ触る資格はありませーん!!!」
思わず泡だらけの手で弘香ちゃんの肩を掴んでぐっと前に押す。
「あつっ!」
声を出して弘香ちゃんの肩に触れた手を離した。
大袈裟な反応だった。熱々のお湯よりは全然熱くないが……首元を触るとさらに熱さを感じる。
これはお湯で温まったからではなく……。
「はぁ……はぁ……」
耳をよく澄ますと、弘香ちゃんの息が洗い。泡立てたボディタオルで洗うことだけに集中していて聞き流していた。
最終確認としておでこにそっと手を当て……今日のことを思い返して確信する。
今日の弘香ちゃんはボーとしていた。それを僕はてっきり、しつこいイケメン先輩のことで悩んでいたと思っていたけど……。
僕は温かいお湯で泡を洗い流した後、弘香ちゃんの身体を持ち上げる。
「ん……あさ、はる……」
瞳がとろんとしている。
「あがろう弘香ちゃん。弘香ちゃんは……熱があるよ」
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