「幼馴染って尊いんだけど」
「また貴方ですか……はぁ」
「そう嫌な顔をしないでよ弘香ちゃん」
「………貴方に下の名前で呼ばれる筋合いはないですけど」
「ハッハッ。今日もクールでズバズバ言うね〜。そんなところも可愛いよ⭐︎」
「………」
サッカー部のイケメン先輩は、不機嫌そうな
「相手めっちゃイケメンじゃん。てかこの前アタシが学食で話していたいい男だよ」
「有名な人なの?」
「有名というかイケメンなら有名じゃない?」
確かにイケメンは何も成し遂げてなくも話題になるね。
「でもあのイケメン先輩、入学早々弘香ちゃんをナンパしてたよ。断っても執拗につきまとっているとか」
「マジ!? 顔が良くてもストーカ気質はごめんだわー」
「………。あっ!」
突然美月ちゃんが何かを思い出すよに声を上げた。
「なんだよ、美月っ。あんまり大きな声出すとバレちゃうじゃねーか」
「あー、ごめんごめん。あの人なんか嫌な感じするなーって思ったら彼女を何人も取っ替え引っ替えしてるって噂流れてる人だと」
「ヤリチンってこと?」
「ヤッてはないと思うけど……ただ気分で彼女を変えてるとか」
「うわっ。もうダメキモい」
早苗ちゃんの見る目がキモい先輩に変わった。
イケメンでもやっていいことと悪いことがあるよね。
視線を戻すと、いつの間にかイケメン先輩が弘香ちゃんに壁ドンしていた。弘香ちゃんはときめいた様子もなく眉間に物凄くシワが寄っているだけ。
「なあ、いい加減俺の彼女になれって」
「嫌です。それなら死んだ方がマシです」
「命は大切にしたまえ」
ここはイケメン先輩に同感。
「何故嫌なんだ。俺はサッカー部のエースで顔もカッコいい。女の子はみんな俺が声を掛けるだけでメロメロなのに」
「その文面のどこに彼女になる要素があるんです? そもそも、そんな実績に頼ってばかりの口説き方だから彼女とも長続きしないんじゃないんですか? 表では自分が取っ替え引っ替えしてやってるみたいな大口を叩いてますけど」
「……っ」
イケメン先輩は図星とばかりに反応。
早苗ちゃんと美月ちゃんを見るともはや呆れている様子だった。
「いやいやっ。あの子たちは俺のレベルについていけなかっただけだよ」
「……。じゃあ私もついていけませんね、さようなら」
「弘香ちゃんは違うよ。歴代No.1。俺に相応しいのは弘香ちゃんなんだよ」
ゴリ押しとばかりにキメ顔。
うわぁ……この人、発言するたびにクズさが出てる。
「………女の子にランキング付けるとか最低です、さようなら」
あ、僕もすいませんでした……。
弘香ちゃんは去ろうと身体を後ろに向けた時、イケメン先輩が地団駄を踏む。
「チッ、何でだよ! なんであんなつまらなそうな冴えない男とは弛むのに俺はダメなんだよ!」
余裕そうに振る舞うのも限界がきたらしい。
(……あ、これ僕のことだ。冴えないって一応髪切って高校デビュしたつもりだんだけど)
「もしかしてアイツに何か弱みでも握られているのかっ。それなら俺に言ってくれればあんな奴ボコボコしてやる」
なんか関係ない僕に矛先が向き始めた。
弘香ちゃん美人だし昔から一緒にいる僕は嫉妬されてあることない言われるのは慣れてる。
弱み……胸を揉んで大きくしたは弘香ちゃんの弱みになるのかな?
「……ふっ」
弘香ちゃんが急ににこやかな表情になった。
「……あっ」
「お、どうしたあさっち」
「い、いや……」
僕はこの笑みを知ってる。
中学の頃、まな板ランキングのことがバレた時……以上機嫌が悪いってこと。
「弘香ちゃんは付き合う人間を考えるべきだ。そう、俺のような人間こそ君の隣にふさわし——うっ!?」
「ひえっ、弘香……!?」
弘香ちゃんが壁ドンしているイケメン先輩の胸ぐらと掴んだと思えば、
「自分の都合の良いようにいかないからって人の大切な人を貶すなんて……クズね」
ワントーン低い声で、ゴミを見るような瞳で言葉を放った。
突然の行動にイケメン先輩は固まる。
「おお! やるなあの子!」
「もっとクールで大人しい子かと思ってた」
2人は関心しているようだったがこれ以上は……
「弘香ちゃんストップストップ!」
「え……旭晴!?」
止めに入る僕を見るなり、弘香ちゃんは胸ぐらを掴むのをやめた。
「……いつからいたの」
「最初から?」
「………む」
弘香ちゃんは何も言わずに僕の背中に頭を預けた。あ、出た。困った時に頭をぐりぐり僕の背中に押しつける癖。
視線をイケメン先輩の方に移すと顔が引き攣っていた。
「えと……弘香ちゃんは貴方の彼女に一切なる気はないので今後は接触を控えてもらっても」
「……部外者が何を偉そうに」
まあそういう反応になりますよね。
「はぁ、しけた。また明日きてやるさ」
「いや、本人が嫌って言ってるなら諦めなよ。余計嫌われちゃうよ」
思わずタメになってしまった。
するとイケメン先輩が自信満々に語り出す。
「俺はなぁ、容姿も運動神経も優れてる完璧な男だ。お前みたいな取り柄のない男が弘香ちゃんの隣にいるんじゃねーよ」
一応初対面なのにすごい言われようなんだけど。
「そうですね。僕はサッカー部のエースでもないし、特段顔がいいとも思わない」
「自分の惨めさに気付いたならさっさと消え……」
「でも女の子が嫌がることをしないから少なくとも弘香ちゃんには嫌われてないと思いますよ」
「あん?」
鋭い眼光で睨んできた。僕も目を離さないよう見る。
「……チッ」
すると、意外にもあっちが折れたようで去ってくれた。
「べーっ」
遠ざかる背中に舌を出す。
そのイケメン、僕にくれればもっといい方向に使うのに勿体無い。
「イケメン先輩いなくなったけど」
「ありがとう……」
「ん」
弘香ちゃんが僕から離れる。
「そういえば気になっていたんだけど、手の甲の引っかかれたような傷、もしかしてあの先輩にやられたの?」
「正確には無理矢理手を握られて離れようとしたらどうやら爪で引っ掻いたみたいで」
「えー……手を握るってどんな状況……」
「ほんと、しつこかったわ。いっそ頬にビンタでもした方が早めに終わった——」
「弘香ちゃんダメだよ」
「……え?」
ポカーンと分かっていなそうな顔。
全く弘香ちゃんは……。
「ああ、ビンタのことじゃないよ? 弘香ちゃんのことだからしつこい男1人くらい自分で対処できるって思ってそうだけど。実際できるんだろうけど。それでも相手は力の強い男……下手したら危ない目に遭ってたかもしれないんだよ」
「でも……」
「でも、じゃない。結果が無事でもいつかがあるの」
弘香ちゃんは幼馴染の贔屓目を抜いても可愛くて綺麗で美人だ。
そう感じているのは僕以外もだろう。
だから必然的にモテててしまうのと同時に、いつか危ない目にあってしまうかもしれない。
「僕はさ、喧嘩が得意なわけでもないし、武術を習ってたとかもないし、頼りないかもしれないど……女の子1人守れる根性はあるからさ。男絡みで面倒なことになったらいつでも言ってよ。力になるから」
笑ってみせると、
「そうね。旭晴は男の子だもの。男には男ね」
「いや、そういう意味じゃ……あれ? そういう意味なのかな?」
「でも旭晴が私が危ない目に遭ったら守ってくれるって昔から知ってるから」
「危ない目に遭ってからじゃダメなんですよ、弘佳ちゃん」
「はいはい。昔から一緒の幼馴染だから信用してるわよ」
「うん」
これで弘香ちゃんが最近悩ましくしている原因は解消したのかな?
(ところで、早苗ちゃんと美月ちゃんの2人はいつまで見ているのだろう………)
「本当はあさっちがあの子とよく一緒にいるから、教えてあげたら嫉妬する姿でも見れるかなーって思ったけど……美月みた?」
「みたみた」
「幼馴染って……あのお互いを信頼し合ってる関係ってちょー尊いんだけど」
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