ギャルに連れられる
「はぁ、今日から体育はマットを使った運動遊びだったとか……」
「あれは遊びじゃない。ただの地獄……」
「「はぁぁぁ〜〜」」
着替え終わった後。僕と樹斗は一緒に重いため息を吐いた。
さっきの授業は体育だった。体育といえば、大好きな授業だが……今回ばかりは違った。
今週からバレーではなく、マットを使った
身体が硬い勢からしてみれば、マット運動なんて地獄という言葉しか思いつかない。
前転後転はできたけど、それ以降の技とか怖かった。前転した後、足開いて立ち上がるやつとかなに?
しかも変な回り方したのか、僕今、首がめっちゃ痛いんだけど……。
「旭晴も変なとこ痛めた? 俺は腕が痛い……」
「僕は首が……」
「旭晴、樹斗。お前たちには筋肉がないからだな。やはり筋肉は全てを解決するからな、ハッハッハッ」
純矢は楽しそうにしていた。純矢は運動とあって難なくこなしていたもんな。
「純矢はなんでもできるなぁ。勉強以外は」
「純矢はなんでもできるね。運動できるのにモテてない様子だけど」
「それってなんでもできてないじゃん、ぐはっ!? 筋肉、裏切る……」
「モテてないって言ったら俺たちもだけどな。なー、旭晴」
「まあね」
「よしっ、非モテ三人衆としてこれからも仲良くしていこうぜ!」
1年生の廊下につくと見覚えのある人物が前から歩いてきた。
「あっ! 旭晴さん!」
日菜子ちゃんだ。ひらひらと手を振りながら笑いかけてきた。その笑顔を見ると、マット運動を乗り越えた疲労が癒されていき……ごく自然に、頬が緩んでしまう。
「日菜子ちゃん、偶然だね。というか、初めて鉢合わせた気がする」
前は、本当に同じ学校に通ってるの?って疑うほどすれ違うこともなかったからね。
「本当ですねっ。やっと会えました」
うんうん。このヒナ〜ン♪と効果音が尽きそうなくらいの眩しい無垢な笑顔……本当に癒される……。
日菜子ちゃんに癒されているがもちろん、両脇の2人のことも忘れていない。
「早苗ちゃんと美月ちゃんもお揃いで」
「あたぼうよ〜」
「私たちはヒナの友達兼護衛なんだから。ところであさっちの友達……固まってるけど大丈夫?」
「本当だ」
斗樹も純矢もピーンと背を伸ばし硬直している。
「あ、ああ旭晴のし、し知り合いなのか?」
「ロリ、ダブルギャル……美少女……美少女が3人も……知り合い……」
「知り合いというか友達だよ。ねっ」
「はいっ。旭晴さんの友達の石宮日菜子です。こちらは早苗ちゃんと美月ちゃんですっ」
「ども〜。あさっちの友達でーす」
「どうも」
「マジで友達!?」
「旭晴、お前……」
「ん?」
ワナワナ震えましてどうした——
「「モテてんじゃねーか!! チクショウ!!」」
仲良くハモったと思えば捨て台詞のように吐き捨て教室に走っていった。
「え、えー……」
「おーおー、早速うちらにびびって逃げたか」
「とんだ腰抜けね」
「いや、多分女の子に耐性ないだけだと思うけど」
「まあいいや。ちょうどあさっちにだけ言いたいことあったし」
「僕に?」
「そうそう」
「え、ちょっ……」
なにやら早苗ちゃんと美月ちゃんが僕の間を挟むように寄ってきて……寄ってきたら当たるものがある。体はもちろん、特に胸が。
外見ではそれほどなさそうだが、当たればおっぱい。それが僕の両肩に……おっぱい肩ならぬおっぱい過多!!!
「おい、あさっち〜」
「放課後、ちょっと付き合いなさい」
「え? え?」
◆
迎えた放課後。そっと教室を抜け出し帰ろうとしたが……待ち構えていた早苗ちゃんと美月ちゃん両脇を掴まれ、ズルズルと連れていかれた。
たどり着いた場所は……
「ついたぞ」
「体育館裏? ゴミ出しにきたの? なにを? 僕を?」
「被害妄想すぎでしょ……ほら、あれ見て」
「あれ……?」
指をさしている方向を見ると……弘香ちゃんの後ろ姿が見える。
「弘香ちゃんがどうしたの?」
「やっぱりお前の知り合いか、あの美少女。よく一緒に帰ってるって噂だったもんな」
「連れてきて正解」
「?」
2人は顔を見合わせ、なにやら頷き合っている。
視線を戻すと、弘香ちゃん前には誰か立っていた。あれは確か……サッカー部のイケメン先輩。
放課後、人目の少ない体育館裏。これからを察するに、告白現場なのだろう。
え、なんで幼馴染の告白現場を僕は見ないといけないの?
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