揉まれ巨乳VS天然物巨乳

 迎えた当日。

 会場は中学のクラスメイトの両親が経営している飲食店。

 集合時間は夕方6時。僕と弘香ちゃんは5分前に会場についた。

 

「なんか緊張するね……」

「そうかしら。一か月くらい顔を合わせなかっただけで、みんな変わってないはずよ」

「それ、一番変わっている弘香ちゃんが言う?」


 制服のジャケットを押すようのボン!と出ている巨乳。横から見るとさらに存在感が凄い。おっぱいがちっぱいでストンストンじゃなくて、おっぱいでいっぱいでふわふわだよ。


「またまな板ランキング作っていいのよ?」

「もう勘弁してください……」


 その話題いつまで根に持っているのだろうか……。


「じゃあ行きましょうか」

「うん」


 店に入ると、結構人が集まっていた。弘香ちゃんの言っていた通り、顔ぶれは変わらない。制服は色とりどり。

 みんな、高校の制服似合ってるな〜。


「あれ?」


(なんで誰も話しかけてくれないのだろう?)


 みんな、僕たちの存在には気づいているものの、「え?どちら様ですか?」といった表情で見てくるだけ。


「みんなどうしたんだろうね。緊張してるとか?」

「それはないでしょ。私たちが入るまで盛り上がっていたみたいだし」

「だよね。でも今は静かになった」

「まるで、知らないか人が会場に入ってきて場が冷めたみたいにね」

「知らない人って誰だろう」


後ろを見るも、新しく入ってくる人はいない。


「もしかして僕たちが知らない人みたいな感じ? そんなまさか……あははは」

「…………」


 弘香ちゃんが無言である。  

 僕は乾いた笑いをやめ、またみんなの方を見る。


 えっ、まさか…………。


「みんなもしかして僕たちのことを忘れた? 楓旭晴と西堂弘香だよ?」

「それは分かっている!」

 

 男子の1人が口を開いてくれた。


「なら良かった。てっきり忘れられたかと思ったよ〜」

「いや、大事なクラスメイトを忘れるわないだろっ。ただ、なんというか……」

「ん?」

「お前ら2人、変わりすぎじゃね……?」

「え?」


 弘香ちゃんは分かるけど、僕も……?


◆ 


 全員が揃うと、それぞれグループを作り、盛り上がっていた。


「旭晴! 髪切って高校デビューかよ! クソォ〜〜!」

「おまけに身長伸びてカッコよくなりやがってふざけんなよ!」

「笑顔で叩いてこないで!?」


 弘香ちゃんにおっぱいランキングが見つかった時に見捨てた、友達2人がやってきて、肩やら頭を叩いてくる。

 文句を言っているのか、褒めてるのかどっちかわからない。


「2人は変わらないね」

「そりゃ俺たちはエスカレーター方式だからな」

「今更イメチェンしたってなー、って話だよな」


 うちの学校は中高一貫校で、2人はそのまま上がったのだ。クラスメイトの中でもエスカレーター式で進級した人は多い。


「旭晴はあっちの高校ではうまくやっていけてるのか?」

「うん、今のところは。友達も無事作れたし」

「ぼっちじゃなくて良かったなぁ〜」


 ほんと、それ。


「それで、可愛い女の子はいたのか!」

「いたよ」

「おお! 今度合コンとか開いてくれよ〜」

「無理だよ」

「なんでだよ〜」


 久しぶりの中学の友達の会話。あの頃のように、ワイワイやるのはやっぱり心地いい。みんな元気そうで良かった。


「なあ、あれ……」

「やばいよな……」


 それぞれのグループを作り盛り上がっているが……視線はとあるグループにいっている人が多い。


 視線の先には、一番大人数でできているグループの中心にいる、女の子に注がれていた。


「西堂さん、すっごく綺麗になったね!」

「たった1ヶ月ちょっと会わなかっただけなのに!」

「ねぇねぇ何したの? 特に胸とか!」


 弘香ちゃんである。

 高校の入学式後も凄かったけど、ここでも美人&巨乳はつよーいね。


「あはは……成長期よ、成長期……」

「え〜、本当にそれだけなの〜」


 やはり弘香ちゃんの大きな変化といえば胸……みんな巨乳に釘付けである。


 胸の話題を振られるたびに、なんとか誤魔化している弘香ちゃん。焦っているのを見るのは珍しくて、面白いかも。


「………」


 僕の視線に気づき、僕の方をちらちら見て、助け舟を求めている気がするけど……どうしよう。僕にあの大人数を割って、弘香ちゃんを助け出すなんてしてもいいのだろうか?


 友達2人も、弘香ちゃんのことが気になり出したようで、


「あれは成長期っていう範囲だけで大きくなったのか?」

「なあ旭晴、お前幼馴染として何か知っていること——」

「あー、僕喉乾いたからドリンク注いでくる〜」


 なんでコイツらこんな時に鋭いの? おっぱいランキングに関わっていたから変態なの?


 そっと離れようと思ったが、ガシっと両肩を掴まれた。


「待て待て旭晴くん」

「俺らとお話しようや」


 ぐいと顔を寄せる2人。いや、迫り方ヤクザなの?


 4つの瞳に見つめられ、僕は観念して口を開く。


「はぁ……はいはい。弘香ちゃんのことでしょ」

「なんであんな巨乳美女になってるんだよ!!」

「西堂さんは、ストンストンだっただろう!」

「俺たちの西堂さんを返せよっ!」

「本人が成長期って言ってるんだから、成長期に文句言いなよ」


 揉んで加勢したのは僕だけどさ。


「やはり成長期以外にも何かしたと推理する」


 ぎくっ。


「旭晴お前……何か隠して……」


 話が戻され、唇すれすれまで近づいてこられた。

 

「い、いや……僕は何も知らないよー」

「ほーん」

「へぇ……」

「楓くん」

「は、はい!」


 そ、そんなに問い詰められたら話しちゃいそう! って、最後のは2人の声じゃない。綺麗な女の子の声だ。


 振り返ると……


「お久しぶりですね」


 橋本さんが爽やかな笑顔を向けてくれた。


 端正な顔立ち。高校生にしては大き目の胸。しなやかな手足。ショートカットだった髪は今は結んでおり、相変わらず、マドンナオーラが出ている。


「久しぶり、橋本さん」

「お2人もお久しぶりですね。みんなで何を話していたのですか?」

「い、いやー」

「その……」


さすがに女の子の前でおっぱいの話をする訳にもいかず、2人は口籠る。


 橋本さん、ナイスタイミング!!


「そろそろ料理が出るから席につけー!」


 さらに元委員長の指示。

 今回の同窓会は食事会も兼ねている。

 

 僕は近くにあったテーブルに座る。友達2人がくると思いきや、隣に座ってきたのは……


「お隣失礼しますね、楓くん」

「橋本さん!?」


 自然な動きで橋本さんが僕の隣に座った。


「橋本さん? なんで僕の隣に?」

「……だめ、でしたか?」


 小動物のような上目遣いでこちらを見つめてきた。


(あれ? この感じどこかで……)

 

「だめじゃ……ないけど」

「ふふっ、ありがとうございます」

「……ふん」

「えっ、弘香ちゃん!?」


 いつの間にか弘香ちゃんが反対の空いた隣に座っていた。


「あら西堂さん。楓くんに許可を取らなくてもいいんですか?」

「許可もないもないわよ。私は旭晴の隣に座りたいから座っただけ」

「随分と強引なんですね。余裕がないってことですか?」

「貴方こそ、わざわざこっちにきて……本当に余裕がないのはどちらかしら」

「…………」

「…………」


 まーた無言で見合っている。調理実習を思い出すなー。


「まあまあ2人とも落ち着いて。僕はこのままでいいから」

「楓くんがそういうなら……」


 橋本さん、なんでちょっと頬を赤らめてるのだろう? 弘香ちゃんは……僕への視線が怖いよ。


「楓くん。実は楓くんにお願いがありまして」

「お願い?」

「はい。楓くんは、中学時代は私のことをずっと名字呼びでしたが、高校生になったのでそろそろ下の名前で呼んで欲しいなーと」


 言い終えると、また橋本さんの頬が少し赤くなった。


「橋本さんを下の名前で呼ぶ?」

「はい、下の名前で……」

「………」

「………」


 僕は橋本さんをしっかり見つめる。

 橋本さん……橋本……なんだっけ?


 黙る僕に橋本さんも察したようで、


「……楓くん。もしかして私の下の名前が分からないとかあります……?」

「えと……」

「………」

「はい、あります。僕は橋本さんの下の名前をど忘れしました」


 中学時代ずっと橋本さん呼びだったからね? あるよね、そういうの!


「むう……酷いです」

「ご、ごめん……」

「じゃあ今日からちゃんと覚えて呼んでくださいね。私の名前は、橋本日奈乃。ひ・な・のですよ。覚えておいてください」

「う、うん。日奈乃ちゃん」

「はい、ありがとうございます。では私も旭晴くんと呼ばせていただきます♪」


 日奈乃ちゃん。なんだか覚えやすい名前だなー。


「私も下の名前で呼ばせてもらおうかしら。ねぇ日奈乃?」

「もちろんですよ、弘香さん」

「ふふふ」

「うふふ」

 

 今度は笑みを浮かべながら見つめあっている。


 日奈乃ちゃんと弘香ちゃん。本当はラブラブ説ある?

 

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