【中学編】揉めるまな板VS巨乳ランキング1位 ③
先生の説明が終わり、調理へ。うちの班は橋本さんと弘香ちゃん。僕、男子の4人で構成されている。
さてまずは調理に必要な道具を用意して……
「弘香ちゃん、まな板を——何でもない、僕取ってくる」
ついでにふきんとかも取ってこよう。
調理器具も揃へ、材料に取り掛かる。
スペースがないので、材料を切ったりするのは橋本さんと弘香ちゃんにお願いした。
「橋本さんすごーい」
玉ねぎを慣れた手つきでみじん切りにする橋本さん。料理する姿も絵になっている。
「玉ねぎなのに涙流さないんだね」
「玉ねぎは一般的に冷やすのが効果的ですが、玉ねぎの両端を切って皮を剥いて、ラップに包んで電子レンジで30〜40秒ほど加熱する方法でも、刻むときに涙が出にくくなるんですよ」
「へぇー」
わざわざ冷蔵庫や氷水で冷やすよりも電子レンジの方が時短だし、便利だ。勉強になるなぁ〜。
さて、玉ねぎのもう半分をみじん切りしているであろう弘香ちゃんはというと……
「………」
橋本さんが電子レンジで温めてくれたため、涙は出ていない。胸から上だけを見れば、ただの美人。
視線を下に下げれば———
ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン!!
えーと……工事かな?
ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン!!
凄い……あのまな板が時よりカタカタ小さく浮いている。まな板が揺れている。
弘香ちゃんの手が止まった。
「……なかなか細かくするの難しいわね。もう少し、上から振り下ろした方がいいのかしら?」
「弘香ちゃん待って待って! まな板が可哀想!」
このままじゃまな板ごと切っちゃいそうだよ!
「は?」
「違う! 胸のことじゃない! まな板! 今玉ねぎの下にいるまな板!」
玉ねぎを指さすとハッとした表情になった。
弘香ちゃんは片手で包丁を振り下ろして玉ねぎを刻んでいた。無表情でやっていたせいかその光景は……うん。言わないでおこう。
独特すぎてあの橋本さんが笑顔で固まっている。
「弘香ちゃん。包丁を握る時は猫の手だよ」
「猫の手?」
「そう、こうやって……」
僕は後ろから弘香ちゃんの手を正しい握り方にする。
「これ?」
「そう、これ。あとは……」
「…………」
「橋本さん、何か手伝うことは……」
「いえ、何もありませんよ。調理実習なのに、夫婦の共同作業みたいなお2人を邪魔してきて欲しいですが」
「は、はぁ……?」
「ふふっ。冗談ですよ」
その後は一旦、弘香ちゃんは食器出しに行ってもらい、残った3人でボウルに入れた材料を混ぜ合わせ、ハンバーグのタネを完成させた。それぞれタネを丸くして後は焼くだけ。
焼く役担当は……弘香ちゃん。
「楓くん、大丈夫ですか……?」
「あ、うん。焼くだけだし、弘香ちゃんもできるよ。橋本さんは野菜を使ってサラダでも作るんだっけ?」
「はい。もう完成しそうですが」
そう言って見せてくれたのは、グリルされたことにより、鮮やかな野菜だった。
「グリルを使ってもいいとのことでしたので、焼いてみました」
「最高だね!」
グリル野菜って表面のカリカリ、中のホクホクした食感で美味しいんだよね。
「ふふ、お皿に盛り付けてきますね」
橋本さん、本当に料理上手だなー。
さて、弘香ちゃんは……
「や、焼くだけよね。これをフライパンに置くだけで……」
と、弘香ちゃんは丸めたハンバーグのタネを片手に握り、そのまま下にビンタするように振り下ろして———ん? ちょっと待って。
ガシッ
「旭晴、何よ。今からフライパンにハンバーグを置こうとしたのに」
「今のはどう考えても置くっていう静かな動作じゃないよね? 油はね怖いからって投げつけるように置かないの! 僕が後ろからサポートしてあげるから!」
「い、いいわよ。焼くぐらいできるし……」
「今できてないよね! おっ——じゃなくて言い換え言い換え……ハンバーグも双丘のように優しく扱わないといけないの!」
「ちょっとそのワードは学校では言わない約束でっ」
「………」
「は、橋本さん?」
「ふふ、2人は私たちのことが見えていないのでしょうか」
「は、はぁ……?」
その後も弘香ちゃんが色々やったが、無事に完成したハンバーグはとても美味しかった。
洗い物担当ば僕なので、食べ終わり食器を洗っていると弘香ちゃんが食器を持ってきた。
「はい、受け取るよ」
「ん……」
「弘香ちゃん? どうしたの?」
何やら浮かない顔。
「その、料理全然出来なくて……」
あー…なるほど。結局、料理は失敗……というか僕がその前に防いだから失敗手前だったけど。調理前はあんなに自信満々だったのにね。
「自信があればいけると思ったけど、やっぱりダメね」
「自信だけじゃ料理はできないからね」
「………うん」
この落ち込みようだと橋本さんとの勝負とやらも負けた様子。
何か励ましの言葉でもかけてあげたい。
弘香ちゃんの料理の腕はお世辞でもいいとは言えないし、それ以前の問題だけど……。
「弘香ちゃんは料理が苦手ってことをカバーできる良さをいっぱい持ってるじゃん」
「え」
「ほら。美人だし、頭いいし、運動神経いいし」
「私の良さ?」
「そうそう。弘香ちゃんの良さはたくさんあるんだから料理くらいできなくても大丈夫。あっ、じゃあ勉強の指導をお願いしようかな」
「じゃあって、何よ。私に頼むなんでスパルタでお願いしますって言ってるものよ?」
「さすがに中3の成績は大事だし、スパルタでもなんでもからいい点を取りたい! それに弘香ちゃんの教えた方は分かりやすいし」
「ふ、ふーん……なら仕方ないわね」
「………」
「は、橋本さん……?」
「なんでもないですよ。なんでも……」
「はぁ……?」
調理実習が終わり、弘香ちゃんと教室に戻ろとしていると、橋本さんに引き止められた。
「負けました、西堂さん」
「え?」
驚く弘香ちゃん。
あれ? 弘香ちゃんの勝ちなんだ。
何を勝負していたか分からない僕は、蚊帳の外から見守る。
「幼馴染という立場だけと思いきや、2人の間には強力な絆があったのですね。長年寄り添わないとあんなこと、できません」
「は、はぁ……?」
「でも私、諦めませんからっ」
橋本さんはキラキラした笑顔を見せた。
◆
「橋本さん元気にしてるからしら」
帰りながら中学の頃のことを懐かしんでいた僕ら。
「弘香ちゃんは橋本さんに会いたいんだね」
「会いたいというか……今でも旭晴のことをどう思っているか気になるだけよ」
え、僕悪い印象だったかもしれないの?
「格好は制服だっけ」
「そうよ。双丘学園の制服って白だからくれぐれも汚さないようにね」
「分かってるよ。明日の中学の同窓会が楽しみだね」
「ええ」
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