困る感情。頭ぐりぐり
「旭晴」
「ん! ごほごほっっ!」
「ちょ、何してるのよ……」
昼休み。
弘香ちゃんに急に話しかけられ、食べていた卵焼きが喉に詰まった。
体育の件があるからね……。
「ハァハァ……罰は今受けたと思うんですが……な、なんでしょうか……」
「今のは自業自得でしょ」
まあドS!!
とりあえずお茶を飲み落ち着く。
「それでどうしたの?」
「一緒にお弁当を食べようと思って」
「……え、今食べてるよ僕」
ほら、目の前に男子2人いるでしょ。斗樹と純矢って言うんだよ。なんか今は固まっているけど。
「私と食べて。というか話があるから」
「えー」
僕が嫌そうな顔をするも、弘香ちゃんはついてきて、とばかりのお顔をしている。
と、今回は僕らだけではなかった。
「西堂さん、なんであの人と……」
「体育の時間の件で呼び出しだろっ」
疑問が飛び交う教室。クラスメイトたちが僕の方をチラチラ見ている。
そういえば僕と弘香ちゃんが幼馴染ってことは、斗樹と純矢にしか言ってないね。
知らないから……傍から見れば高嶺の花がモブ男子に一緒に食べようと誘うという異様な光景になっているのかも。
斗樹と純矢は依然、ポカーンと口を開けている。
すると弘香ちゃんが斗樹と純矢の方を向き、
「急に旭晴と食べるなんて言ってごめんなさい」
「い、いえ! 全然っ! コイツならいつでも貸すんで」
僕はモノじゃないぞ。
「そそそそそーです! そうだ! 食べる場所まで旭晴を運んでやりますよ!」
だから僕はモノじゃないぞ。
「ふふ、旭晴だけ貸してくれればいいから。じゃあ行きましょう旭晴」
「はぁーい」
ここで断ったら家に帰った時が怖い。
お弁当をせっせと片付け移動の準備。教室を出ようとした時、女子2人がこちらへきた。
「その男子だけずるいです、西堂さん!」
「わ、私も一緒に食べたいですっ」
分かる分かる。美人とご飯は女子でも食べたいよね……あれ? 体育の時も僕、男子呼ばわりだったけど、名前覚えてもらえてないみたいな?
弘香ちゃんの言葉を待つように見つめる女子たち。僕もいますからねー。
どう対応するんだろうと僕も顔を伺う。弘香ちゃんは顎に手を当て、
「あら、貴方たちもお仕置き……したいのかしら?」
口角を少しあげ、とても悪そうな顔で言った。鞭が似合いそうなお顔をしてるなぁー。
「い、いえ……」
「なんでも、ありません……」
女の子たちも何か感じたようで苦笑いを浮かべながら元の場所に戻って行った。
◆
「どこで食べるの?」
「人がいないところ。たまには気を抜いて食事を取りたいの」
「まあそういう日もあるよねー」
最近の弘香ちゃんはクラスの女子と食べている。噂によれば既にファンクラブができてるとか……。高校デビュー、凄い。
「外は嫌よね。日も当たるし」
「そういえば、一階の端らへんに空き教室があるんだけど自由に使えるよ」
「早く教えなさいよ」
だってそこは斗樹と純矢とのエロゲ視聴会で使ってるんだもん。
角を曲がって真っ直ぐいけば着く。と、曲がろうとした時、人が横切った。
って………
「日菜子ちゃんだ」
「え?」
後ろ姿でもはっきり分かる。
駆け足のためぴょこぴょこの揺れるハーフテールが可愛い。トレードマークとも言えるまな——んんっ、揺れない胸もしゅばらしい。
手に何やら持っている。向かっているのは……突き当たりの図書室?
(昼休みはまだまだあるのに……なにするんだろう……)
自然と日菜子ちゃんの方に足が向いて——
……ぐりぐり
「え、弘香ちゃん?」
弘香ちゃんがうつむいたまま僕の背中にぐりぐりと頭を押し付け始めた。
あれ? この癖って弘香ちゃんが困った時にやるので……。弘香ちゃん、何に困ってるの?
訳がわからず立ち尽くす。
ふと、何か呟いた。
近距離だったため、その呟きは僕にも聞こえていた。
「……巨乳好きって言ったのに……バカっ」
え、なんで怒ってんの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます