これが普通の反応
今日も元気よく学校生活を過ごしていた。
休み時間になり、隣の席の斗樹が言う。
「次、体育だな」
「ふっ、ワシの筋肉の見せ所じゃのう」
離れた席の純矢もこちらにきた。って、ここでズボンのベルトを外さないでよ。
「体育では筋肉は裏切らなそうだよね」
「うむ! 後転と水泳は苦手だかな! がはっはっ!」
やっぱり筋肉裏切りまくってるじゃん。筋肉のつけ過ぎも注意って事だよね。
更衣室で着替えたのち、体育館へ。体操をした後、男女別れた。ちなみに競技はバレーだ。
体育はみんな好きな授業。だからこそ、より楽しそうに、より本気でやる生徒が多い。
「次の人と交換ー」
「はぁーい」
試合途中、クラスメイトと入れ替わりに僕は体育館の端に座り、休憩を取る。
「ふぅ……バレーは苦手かなぁ」
トスのタイミング難しいし、スパイクも難しい……。てか、男子ってなんでこんなに元からの運動神経いい人多いの? みんな高校デビューだからって鍛えてきたの?
目線を奥のコートに向けると、女子が同じくバレーの試合をしていた。
中でも目立つのはやはり……
「西堂さん、お願い!」
「任せて!」
華麗なジャンプ。そのままスパイク。誰も止められず、見事に決まった。
「きゃー、西堂さ〜ん!!」
「カッコいい〜〜!」
弘香ちゃんの運動神経の良さに、女子の人気も鰻も上り。
「ありがとう」
微笑めば、皆、顔を薄ら赤らめた。
うんうん、弘香ちゃんは今日も大人気。
弘香ちゃんは次々とスパイクを決める。
半袖と短パンの体操着姿で動くたびに大きな胸が揺れている。
3つボールがあるように見せるとは……中々の大技。これは真似できませんなぁ。
「お疲れ旭晴〜」
「旭晴! このくらいで疲れているなんて筋肉が足りないじゃないのか!」
どれが本物のボールが見極めていると斗樹と純矢がきた。
「そのボーとした様子じゃ、女子でも見てだんだろ」
「当たり前。あそこはオアシスなんだから」
「確かに。男子の暑苦しい試合より、女子の躍動感のある試合がいいよな」
斗樹くんや、躍動感とはどこの部分を言っているのかな?
3人で並んで何気ない話をしていると、純矢がやけに真面目な顔で告げた。
「なぁ同志よ。お前らは何派だ」
……何派か。
主語を言わなくても察する。これが男の謎の友情。
まずは斗樹から。
「俺はでかい方がいい。ただし、でかければいいってもんじゃない。Bカップ以上Dカップ以内」
小ぶりよりの巨乳派か。ほどよく手になじむくらいの大きさで、いいよね。(※成長過程で揉んでいる人)
「ふっ、なるほどな。ワシは巨乳……ワシよりも巨乳な女の子だ。ワシに勝てない巨乳は鍛え直しだ」
純矢は……Dカップ以上ってこと? 自分の胸板と巨乳を競うなんてとんでもない変態じゃん。モテない理由がなんとなく分かってきた。
「旭晴。お前は?」
「僕は……」
ちっぱいもでっぱいもストンストンも好きだし……。
「どっちも派」
「ふむ……。強いて言えば?」
「なんでそんなに決めたがるのさ。んー、どっちかといえば巨乳だけど」
なんか似たような質問を過去にされたことが……ああ、弘香ちゃんか。
「多数決で巨乳派が多いようだな。改めて我々は同志だ」
キリッと顔を決める純矢。
というか、体育の時間によくおっぱいの話できるよね。今更か。
◆
授業終了5分前。片付けの時間になった。バレーボートを金属製のボールカゴに入れていく。
「手分けして片付けろよ〜」
先生の言葉にまばらに返事が飛び交う。僕は斗樹と支柱やネットを片付けている。
残りは……うん。僕がやらなくても大丈夫そうだ。
「おらっ!」
「はい、残念〜〜!!」
後ろから声が聞こえてきた。見ると男子2人がボール当てをしているようだ。
「こら、そこ男子の2人! 遊んでないで片付けて!」
委員長の女子が注意。男子2人は、えーと不満そうな顔をしたと思えば、
「じゃあこれでラスト……おりゃっ!」
「ちょっと!?」
委員長の声も虚しく、ラストとばかりに投げられたボール。力んでいたのか球が早い。
もう1人の男子はひょいと楽々と避けた。
「へへっ、こんなん楽勝——」
「って、おいヤバっ!?」
投げた男は気づいたのだろう。彼の後ろに、少し離れたところには人がいた。
——弘香ちゃんだ。
このままでは弘香ちゃんに当たってしまう。弘香ちゃんはまだ気づいてない……
「っ!」
「おい、旭晴!」
気づけば足が動いていた。僕は間に飛び込むように、身体を出していて……」
「———弘香ちゃん!」
「え……」
ドスンッ!
頭にずっしりした衝撃が走る。ボールが直撃したのだ。
視界が歪み、踏んだることもできずそのまま倒れてしまった。
「きゃぁ!」
「おい、頭に直撃したぞ!」
体育館がざわざわと騒がしくなる。
せめて押し倒してしまった弘香ちゃんが背中から落ちても少しでも痛くないように左手を回したけど……。
めっちゃ左手痛い! 頭も痛い! え、なんか全部痛いんだけど!
なんとか喋べることはできるので弘香ちゃんに確認をと……。
「いってて……弘香ちゃん大丈夫……?」
ふにゅ
「ん?」
手に柔らかさと温もりを感じる。
しかし、ボールが後頭部に当たったのか視界がハッキリと見えない。
ふにゅ、ふにゅ
「んっ……」
「これは……」
手が覚えているというものだ。これは弘香ちゃんのおっぱい。ブラジャー越しにも関わらずこの柔らかさとハリ……弘香ちゃんのおっぱい。
手を撫でるように下げると、また少し違う感触。ここは乳輪らへんかな。
あまり触られないところだからこそばゆいのだろう。そのまま揉んでいくと、息遣いが少し荒くなっているような気がして……
「あ、旭晴……っ」
「……?」
「ここ、学校……」
「………」
ガッコウ……ガッコウ……みんな、いる、学校……。
意識がようやくはっきりしてきた。そして僕がガッツリ右手で掴んでいるのは、弘香ちゃんの立派な巨乳の片方で……
「どわぁぁぁぁぁ!!」
慌てて離れる。
「あ、あの、その……」
言い訳が思いつかない! あと周りを見るのが怖い!!
弘香ちゃんは巨乳を隠すように両手を添えて立ち上がり、
「……変態」
目を細め不機嫌そうに言われてしまった。
ちょっと待って!? 貴方最近、胸揉もんでとか言いましたよね!!
弘香ちゃんは顔を真っ赤にして去っていく。すぐに女の子たちに囲まれて心配されていた。
何人かの女子が僕のことをすごい睨んでいるんだけど……もしかして嫌われた?
地面にペタリと座ったままでいると、両肩に手が添えられた。
「旭晴気にするな、今日は俺たちが慰めてやるよ……」
「そうだ。今度おすすめのジム、紹介するぞ。エンジョイ、パンプアップ!!」
純矢は何を言っているか分からないが、斗樹のはお言葉に甘えさせてもらおう。
たとえ幼馴染だったとしても、女の子の胸を揉むなんて重罪。女子の冷たい視線と男子のニヤニヤした表情が物語っている。
これが普通の反応だよな……。
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