巨乳になってモテモテ確定そうな幼馴染

「はい、じゃあこの時間は終わりな。次は連絡事項だからチャイムが鳴る前にはちゃんと席についとけよ〜」


 先程の授業ではクラス全員で軽く自己紹介をして回っていた。噛まずにハキハキ言えて良かった。


 先生が教室を出ていくと、静かだった教室が一気に明るくなる。

 そして誰かを中心にいくつかのグループが出来上がっていく。見たところ、中学からの友達とツルんでいる人が多い。


 遠く離れた双丘学園に通う僕と弘香ちゃんには、中学の知り合いはいない。だから僕たちは2人ぼっち。


 弘香ちゃん、知り合いはいないけど幼馴染の僕がいるから寂しがらなくても———


「ねぇねぇ! 貴方が新入生挨拶していた人だよね!」

「近くで見るとさらに綺麗! LINE交換しない?」


 知り合いがいない同盟の弘香ちゃんの周りには、たくさんの人が集まっていた。

 ああ、そっか。弘香ちゃんは新入生挨拶で目立ってたんもんね。みんな話しかけたかったよね。


 ぼっちは僕だけでした。やっぱり美人で巨乳は、自然と話しかけられるよねー。


 ぼっちでやることがない僕は、そのまま弘香ちゃんたちを観察する。


「肌綺麗〜。なに使ってるの?」

「中学ここら辺じゃないよね? なんで双丘学園にしたの〜?」


 質問攻めだ。周りには絶えず人だかりができていて……あの、僕。彼女と同じ中学校って自己紹介で言って……。


 …………。

 

 高校生にして、世の中の不公平さを感じています!!


 でもまあ、弘香ちゃんがぼっちにならなくて良かった。僕はどんな環境でも生きていける強い意志を持っているし大丈夫だろう。


 …………。


 そ、そもそも入学の8割は幼馴染(弘香ちゃん)の高校巨乳デビューを見届けるためだしー?


 ……………。


「友達、できるかな……」


 ものすごく不安を感じてる、今。


 再び弘香ちゃんの方を向くと、人がぞ

ろぞろ離れていっていた。

 あれ? どうしたの?

 休憩時間はあと5分あるし……何かあった? 


 今のうちに弘香ちゃんに話しかけみよう! べ、別に1人で机にずっと座っているのが寂しいとかじゃないし……!


「弘香ちゃん」

「旭晴。ちょうど良かったわ。ちょっと愚痴聞いて」

「え、うん」


 ぼっちな僕に役割をありがとうございます。


 弘香ちゃんはドッとため息をつき、


「……さっき。入学式が終わった後。めんどくさい絡みにあったの」 

「めんどくさい絡み?」


 弘香ちゃんの眉間にシワが寄る。


「そう。待ち伏せされてクサイ台詞で……」


『君、新入生挨拶してた子だよね。近くで見るとほんと可愛いよっ。俺、2年生でサッカー部のエースやってるんだ。良かったら放課後遊びに行かない?』


 どうやらナンパされたらしい。美人で巨乳だからナンパもされちゃうよね。

 でもまな板の頃の中学時代から、弘香ちゃんモテてたし、あってもなくてもナンパはされていたとは思うね。


「それもめんどくさかったけど……続きがあってね」

「ほう」

「その先輩の取り巻きたちが……」


『おいおい、抜け駆けするなよぉ』

『マジで可愛いじゃんっ。で、……』


「"おまけにおっぱいデカいし"っていう発言をしたの」

「それのどこにめんどくさいポイントが?」

「まるで、美人ならみんなおっぱいはデカい、って意味の発言で腹が立つのよ」


 弘香ちゃんは軽く一回、机を叩く。 

 これについては怒ってるね。

 弘香ちゃんはまな板ランキング1位の過去があるもんねー。


 取り巻きさんたちが言っていることも分からなくはないかも。美少女と巨乳ってセットって感じだし、小説や漫画でもわざわざ巨乳って書かなくてもみんな巨乳なイメージ。


 学校一の美少女=巨乳

 クラスのアイドル=巨乳

 高嶺の花=巨乳

 美人姉妹=巨乳

 ヤンデレ=巨乳

 ポニーテールの女の子=巨乳

 体育の先生=巨乳 ※筋肉質系


 うーん、どれも巨乳のイメージだ。


「色々と大変だったね。それで、放課後は遊びに行くの?」

「愚痴って言ってるのに行くと思う?」

「断ったんだね。それも睨んで不機嫌オーラ出して、二度と話しかけるな的なことを言ったんだね」

「大正解。さすが幼馴染よ」


 褒められた。嬉しい!


「でもこれからは慣れていかないとダメかもよ」


 巨乳になった弘香ちゃんは、欠点なしの完璧美人だしね。今からはクラスメイトに囲まれたり、ナンパや告白をされたりが日常になる……。


「そうかもね。だから旭晴に……って、旭晴どこを見ているの?」


 後ろから視線を感じたので、そちらを向いていた。

 教室のクラスメイトたちがこちらを伺うように見ている。これは、「新入生挨拶をした巨乳美人と親しげに話しているあの男は何者だ!?」みたいなやつかな。


「どうやら注目されてるみたいね」

「弘香ちゃんのおかげでねー」

「面倒だし、私たちの関係話す?」

「幼馴染ってこと言うの?」

「違うわ」


 僕ら幼馴染じゃなったんですか……!?


「胸を揉んで、揉んでもらった関係」


 弘香ちゃんが悪戯っぽく笑う。


 やめてよ! ぼっちどころか学園生活終了のお知らせだよ!!


 


 入学式ということで、今日はお昼くらいに学校が終わった。


 弘香ちゃんと一緒に校門を出る。そんな時、弘香ちゃんのスマホが鳴った。


「お父さんからメッセージだわ。学園の近くの公園に車停めてるからそこまで歩いて来なさいって」

「迎えにきてくれないのか、あの人たち……」

「混み合うからでしょう。それにお昼を食べるところも決めないといけないしね」


 お昼! 僕はもうお腹ぺこぺこだ!


「焼肉行きたい!」

「嫌よ。制服だから匂いが付くじゃない」

「えー、でもこうガッツリ食べたいじゃん!」

「メッセージには寿司かバイキングだって」

「えー、焼肉にしようよー」

 

 焼肉は幸せの塊なのに〜〜。

 弘香ちゃんを説得しようとするが知らんぷり。聞く耳も持ってくれない。

 

 こうなれば土下座でもして……。


「——やめてください!」

「「!?」」


 えっ、やっぱり土下座はやめた方がいい?

 そんな冗談はさておき、若い女の子の声が聞こえた。しかも切羽詰まったような声……。


「あっちから?」

「そうね。……何か危ないことに巻き込まれているのかしら」

「かもしれないね……」


 僕と弘香ちゃんはシリアスな雰囲気になる。


 ……これはラノベや漫画でよくある美少女の危機。助けたら美少女に懐かれるイベントかもしれない!


「弘香ちゃんここで待ってて!」

「私も行くわよ。旭晴に何かあったら大変じゃない」

「わぁお、かっこいい」


 僕と弘香ちゃんが声のした方へ向かうと——




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