幼馴染は安心する。けど、片方はそれ以上を望む
———同時刻。昼休み。
「んー……」
日菜子は、友達である早苗と美月と机をくっつけてお弁当を食べていたが……時々ボーと何かを考えている様子であった。
「ん? 日菜子どしたの?」
「えっとね、今日は旭晴さんと弘香さん見かけないなぁと」
「それ、前もじゃなかった? たまたまでしょー」
「そうだったけど〜」
「あっ!」
「なんだよ、美月……。大きい声出してぇ……」
「そういえば、あさっちのクラスを通ったとき、弘香さんは熱で休み。あさっちは早退したって話聞こえた」
「先に言えよ〜!」
「ええ、弘香さんが熱!? 旭晴さんが早退!? 2人とも大丈夫かなぁ……」
「あさっちの方は、さっき早退したらしいよ。なんでもかなりの腹痛らしい」
美月の言葉を聞き、日菜子はハッとする。
「旭晴さんは弘香さんを看病しに帰ったんだね」
「えっ、腹痛じゃないの?」
「それは……仮病じゃないかな?」
「えっ、まじ!?」
「日菜子、なんで分かるの?」
驚く早苗と美月に、日菜子は確信を持った微笑みで言う。
「旭晴さんと弘香さんは……仲良しだから」
◆
「まずは腹ごしらえってことで……たまごおかゆ作ってきたよ〜」
弘香ちゃんは昼ごはんがまだということで、キッチンをお借りして作ってきた。
土鍋を開けると、ほわぁと湯気立つ。中は、ごはんと溶いた卵を入れて煮た、優しい味わいのシンプルなたまごおかゆ。
「かき混ぜて冷ますからちょっと待っててねー」
「ん……ありがとう」
弘香ちゃんがベッドからゆっくりと起き上がる。
先ほど熱を測ったら、また高くなっていた。またすぐ下がると思うけど、タチの悪い熱じゃなければいいなぁ……。
「と……はい。おかゆ食べても良いよ」
「……食べさせて」
「………」
「食べさせて」
「あっ、うん。聞こえてるよ」
今日も随分と素直だ。そもそも熱で体がだるいのだから食べさせないといけないか。
「ふうふう……はい、あーん」
「あー……」
小さく開けた口に、たまごおかゆが乗ったレンゲを近づけて……パクリ。弘香ちゃんはもぐもぐと食べる。
「ん、美味しい……」
「良かった。食欲あって」
「……次」
「はいはい」
弘香ちゃんが催促するたびに、たまごおかゆが乗ったレンゲを口に持っていく。弘香ちゃんはとろんとした瞳ながらも口はしっかりと動いていて……そして……ゆっくりながらもたまごおかゆを完食した。
「ありがとう旭晴……」
「僕は弘香ちゃんの"幼馴染"だからね!」
当然だよ、とばかりに笑ってみせると弘香ちゃんもまた微笑み返して……段々と笑みが消えていった。
「弘香ちゃん? 気分でも悪くなったの?」
「……なんでもないわ」
「そう? 容器片付けてくるね。あと、新しい熱冷ましシート取ってくる」
「……うん」
旭晴が階段を降りる音を聞きながら、弘香は呟く。
「幼馴染以上に進みたいなんて……私のわがままなのかしら……」
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