第2章 プロモーターの本質 -4-

 その日、練習が終わってから済んでいなかったスコアの譜読みに勤しんだ。狭い部室で作業をするのは正直得策とは言えなかったが、終わるまで部室に籠ろうという気概で、日付が変わる頃までその灯りを煌々と光らせていた。練習後の部室からは一人、また一人と少しずつ人が減っていき、最後には自分と久遠が残った。彼は彼で、何か別な部活動に関わるタスクをこなしているようだったが、途中から学科の課題に手をつけはじめたあたり、どうやら自分の譜読みが終わるのを待ってくれているようだった。そうして、我々は同じタイミングで部室を後にした。ただ「おつかれ、また明日」と、声を掛け合ってすぐに別れた。どうやら、他者に影響を及ぼす事でその状況を前進させる『プロモーター』がこの夜選択した答えは「何も言わない事」であるらしかった。

 もし何か言われていたら、今の自分は正気を保って居られなかったのかもしれない。そんなことまで見透かされている事がなぜか悔しくて、歪んだ視界を空に映した。星がおどろおどろしく揺れていて、今にもそれは地上に降り注いできそうだった。

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