第9話 「ホテルに行きましょう」 

Aさんとキスをした後、駅のトイレに行ったら、パンツが濡れていることに気づいた。それも裏地まで浸透するほどだった。


そこから数日後、夫から体を求められて、思わずAさんとのキスを思い出した。

すると、ローションを使わずに性交渉を完遂できた。久しぶりに自分の身体が女性であることを確認できて、嬉しかった。


はじめてキスをしてから2週間後、Aさんの最寄り駅の用事をこじつけ、Aさんを飲みに誘った。

新しくできたレモンサワー飲み放題のお店に行き、お互い顔が真っ赤になるまで飲んだ。

制限時間が終わり、追い出されるように店を出た後、Aさんは言った。

「じゃあね」

私は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

「えっっっっっ?」

「え??二軒目行く?」

「そうじゃなくて……」

私は、意を決して言った。

「この前の続きをしに来たんですけど」

Aさんは瞬時に察したようで、「あー……」というと、俯く私の頭をなでなでして言った。

「行こうか」


酔っ払ったはずなのにどこか冷静になってしまう自分にドキドキした。

Aさんと歩いていると、通りがかったシティホテルを見て

「ここにしようか」

と言った。

「えっラブホテルじゃないんですか?」

「俺綺麗なところがいいもん」

そういって、綺麗なシティホテルのチェックインを済ませた。

今からいやらしいことをするのに、ホテルマンが満面の笑みで検温と消毒をしてくれて、より一層後ろめたい気持ちになった。

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