第3話 社内での嫌がらせ
私はアーティストの営業をする部署に配属された。
そこは忙しかったが、自分が大好きなアーティストを世に広められるというやり甲斐を感じていた。
「どうしてこのアーティストが水着になるんですか?!!!!」
ある日、担当する女性アーティストのPRで直属の上司と喧嘩になった。
「夏のプロモーションだし、爽やかさでいいだろう」
「だからと言って、この子はメンタル的にも強くないし、しかもファンは同世代の女性が多いので、水着になっても訴求される層は違うと思います」
「だからファン層を広げるためにも良い施策だろ?」
グラビア好きな上司はすぐに担当する女性アーティストを脱がす癖があると噂だったが、共同担当するアーティストを男性誌で水着にするという案件をとってきたのだった。
女性をエンパワメントする曲を多く歌う彼女を、そのような形で消費したくなかった。私は、水着を反対する理由をメールに書いて、祈るように送った。
すると、数時間後、自宅に戻って夫と食事をしているとき、上司から返信の通知があった。
本文にはこう書いてあった。
「目上の人に対して送るメールではない。反省して、明日までに訂正して送り直すように」
添付ファイルには、私が送ったメールを印刷し、赤ペンで「無礼」「言葉尻がキツい」などとびっしり書き込まれてあった。
そして、そのメールは部署全員のメールアドレスがCCに入っていた。
「これじゃあ晒し者じゃん……」
目の前で食事をとる夫をよそに、ワーワー泣いた。
食後、夫は私の心が晴らすようにアイスを持ってきてくれた。
アイスにほだされて、ぽつりぽつりと事情を語ると、夫は「会社を辞める?」「明日は休んでいいんだよ」と言って頭を撫でてくれた。
いつも通り、優しい顔だった。
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