第2話 セックスが地獄になった理由

夫と私はバイト先のCDショップで出会った。

私が大学1年生のとき、4年生だった夫は面倒見のいい優しい先輩だった。バイト内でも人気が高かった気がする。


付き合うきっかけは、彼が卒業して数年が経ってから、私の就職活動の相談を持ちかけたことだった。

結局、就職活動は大成功し、好きなアーティストが所属するレーベルに就職が決まった。そこは彼も愛聴するアーティストが数多く所属したので、内定が決まってからは彼の部屋に入り浸り、企業研究として彼がコレクションするCDを聞かせてもらったり、音楽のうんちくを聞かせてもらった。

そんなこんなで気づけば半同棲のようになり、どちらともなく付き合い始めた。


付き合ってから、彼は潔癖症であることが判明した。

私も綺麗好きな性質だったので、いつも部屋は綺麗にしていたし、そこすら気が合っているのだと嬉しくなった。

「ベッドの上に座らないで」

「外出して帰ってきたら着替えて」

こうした習慣も、すぐに慣れた。


そして、キスをしようとしても避けられることが増えていった。

キスをする前、歯磨きをしても、イソジンでうがいしても、彼は口と口でのキスを許してくれなかった。

「キス、嫌いなの?」

私は意を決して質問をした。

「実は……」

困惑した彼の表情が切なかった。

そこから、私たちの愛情表現は、頬への軽いキスに変わった。


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