Draw 4:ホビアニの初陣補正は殆ど100%
デッキを構築した偽華ちゃんは、そのまま真っ直ぐに大きな会社に突撃。
一人のオッサンに勝負を挑んだ。
会話の内容を鑑みるに、ここは「CPX社」の地方支部らしい。
そして、対戦相手のオッサンは支部長。「死世神」一族の1人で、偽華ちゃんの叔父にあたる人物のようだ。
決して良好な関係ではないみたいだけども。
……そうやって思考を巡らせているうちにも戦いは容赦なく進んで行く。
そして――
「山札の上から4枚と、手札4枚を墓地に! そして!刻魔王エイジ・ククローク、嫉妬人形エンビビ、腹黒妖精シシシ、復讐人形ラッヘラッヘを生贄に!」
――ついに俺の出番みたいだ。
記念すべき初陣! おっしゃ行くぞぉぉぉ!!
「召喚! 私の鏡像、ティティム・クルデーレ!」
俺……否。「私」の身体が構築されていく。
純白の長髪がフワリと風を切る。両の手に大鎌の冷たさを感じる。肺が新鮮な空気を飲み込む。
カード状態とは明らかに異なる肉体の感覚。風を、光を、音を、熱を。全てを身体の器官が吸収していく。
紙切れに過ぎない「私」に「命」が宿る。
さぁ。記念すべき第一声を。
これが私の産声。フレーバーテキストに書き込まれるだろう、私の言葉。
偽華ちゃんの鏡像として。
私が発するべき言葉は――
『――消してあげる! 全部全部! それが貴女の望みなら!』
決まった!
さて、と。召喚時効果を果たさなければならないな。
偽華ちゃんの指示通り、味方に対して鎌を4回振り下ろす。
『確かに協力を惜しまぬとは言ったが!』
『もう出番終わりかよォ……!てか、その鎌、めちゃくちゃ痛ェ……!』
『びえええええ! 痛いよぉ! ちょっとは加減してよぉ!』
『ぎゃあああああああああああ!』
いや、マジでゴメン。本当にゴメン。
大鎌の二刀流なんか使ったことも無いから加減が分からないんだ。
次はもう少し痛くないように頑張る。前向きに検討する方向で善処する。
「ティティムの召喚時効果発動! 貴方のバトルゾーンと手札から12枚を墓地に!」
とりあえず、アニメで格好良く描写されるように。
2つの大鎌をクロスさせるようにして振り下ろす。
すると。私の一閃が空間を切り裂き、真っ黒な亀裂が発生。
相手の手札7枚と、バトルゾーンのモンスター5体が消し飛ぶ。
これで、相手のバトルゾーンには裏向き状態のカード……「
どうして偽華ちゃんは、あからさまに罠のカードを残したんだろう?私なら消し飛ばせたのに。
「
ま、いいや。
私はカード。プレイヤーの意思に従い鎌を振り下ろすのみ。
……どうやら、「覚醒」とやらが始まるようだ。
足元から漆黒の光が迸る。全身が燃えるように熱くなり、力が湧き出す。気分が高揚していく。
そして。不思議と、次に言うべき言葉はすんなりと頭に思い浮かんだ。
「目覚めなさい! これが私の唯一! 混沌とした世界に1度きりの終焉を!」
『私は貴女の唯一! 偽物でも! いいえ、偽物だからこそ! 本物の笑顔を貴女にあげられるの!』
「The ONE、ティティム・クルデーレ!」
凄い万能感。今ならば何でも出来る気がする。
すると、相手の小太りオジサンがニヤリと笑った。
「CO! 伏兵カード! 『
伏せられていたカードが表向きになり、ブラックホールみたいな物が出現。
間違いなく飲み込まれたらヤバイ……!
「ふははははははは! 所詮、貴様は偽物! この儂に勝てるなど思い上がりも甚だしい! 次のターンで儂の勝利だッ!!!」
「残念ね。貴方に次のターンなんて来ないわ」
「何ィ!?」
けど。それだけ。私の身体が引っ張られたりはしていない。
何故ならば。
「そんな手は読んでいたわ! CO! ティティムの覚醒能力発動! 墓地のカード4枚を手札に戻し、ティティムはバトルゾーンに残る!」
「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁ!?」
成程ね。今のオッサンのライフは3。
偽華ちゃんは、伏兵カードがどんなものかを予想していたのだ。
発動コストでライフ5から3になったので……
「ライフにダイレクトアタック!
……私の一撃がライフを4つ削ってオッサンのライフは0に。
ライフが0になれば敗北だ。
「ゲームセットよ。これで、この支部は私のモノ。叔父様はさっさと出て行ってくださいな」
「こんなことをしてタダで済むと思うなよ……! 真贋には必ず報告してやる……! CPX本社を敵に回せば貴様など……!」
珍しい「The ONEカード」である「私」をチップに、偽華ちゃんは「CPX社 西東京支部」を手中に収めたのである。凄い。
でも、一歩間違えたら私がオッサンの所有物になっていたかもしれないのだ。金輪際、こういう事は止めて欲しいのだけど……。
「ふふふ、望むところよ。お父様にお伝えください。偽物の私が怖いなら、出て来なくても構いませんと。私は逃げも隠れもしない、と」
うーん。無理っぽい。この娘、似たような事やりまくるわ。間違いないね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます