第6話 番外編 カラオケにて

誘拐事件の2週間前の出来事

―――――――――――――

今日は彼とカラオケに行く予定だ。とても楽しみだが人生でカラオケに行ったことがない。彼が家に迎えに来てくれた。


「美奈行こうか」

「うん。遥」


家から30分ほど離れた辺りにカラオケボックス店がある。

入ると彼が早速曲を入れてマイクを渡してきた。


「これ歌おうぜ!」


"点描の唄"

『あなたの声でほぐれていく忘れたくないと心が言う…』

――――

『いつまでもいつまでも続いてほしいと願っている…』

――――

『私の』

『僕の』

『時間が止まればいいのに』

――――

『終わるな夏よ終わるな』


ほんとにこの時間が止まればいいのに。


あれから2人でハモリ続けて、そろそろ帰る時間になった。


パタッと彼が私の肩にもたれかかって寝ている。

「えぇぇーー」

どうしよう。可愛い。だが帰る前だからどうしようか迷っている。起こすのも悪いし、おんぶして帰る力もない。


私は彼の顔を覗き込む。


いつも力んでる彼の顔が穏やかになっている。きっとリラックスしているのだろう。


30分ほど経ったあと遥が起きた。


「すまん。寝てた」

「おはよう。遥」


遥は人に初めて寝顔を見せた。


「夜ご飯食べに行かないか?」

「行きたい」


私たちは焼肉屋に入った。遥はカルビ私はタンが好きなようだ。お互い学校生活のことや次のテストについて話している。遥はいつも学年トップ5には入っている。私は140位のど真ん中だ。


「次のテスト教えてくれる?」

「当たり前だろ」


結局会計はまた遥が払ってくれた。本当にそろそろ申し訳ないが、遥はいつも決まって笑ってこう言う


「女性だから奢るんじゃなくて美奈だから奢るんだよ」


とこんなことを言う。


帰り道に2人で歩いて駅まで向かう。

駅に着いて電車に2人で乗る。満員電車でとても窮屈だ。するとおしりの当たりに違和感を感じた。遥は両手でつり革を掴んでいる。

「痴漢…?」

私はとても怖くて声も出なかった。するとその瞬間遥がおじさんの手を掴んで助けてくれた。


「痛い。骨が折れる」

と震えた声で言う。

「何言ってんだよ。痴漢おじさんとりあえず俺から離れたらこの腕本当に折るからな」

そう言うとおじさんは大人しくなり、警察に連行された。


「遥ありがとう」

「気づくの遅くてごめん」


やっぱり


最高の彼氏だ。



―――――――――

次回から新展開入ります

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る