第7話 本当に大切な人
私は100m走で2位の後すぐに遥の代表リレーを見に行った。自分の団を応援したいが遥の応援になっていた。私は日陰の木の下で観戦していた。さっきまでとは打って変わって風が吹いて気持ちいい。今日の温度は32℃と熱中症に気をつけなければならない程の気温だ。私ははちみつレモンを作ってきた。昔兄がサッカーの試合に行く時に母がよく作って行った食べ物だ。私はそれを見て覚えていた。だが、見よう見まねで料理をしたこともない私が作るとレモンの形が汚く綺麗な薄切りになっていない。恥ずかしくて直前まで渡すか迷っていたが、これが少しでも力になればと思い渡した。彼は喜んでくれたので私も嬉しくなった。
代表リレーがスタートした。遥の団がちょっとスタートが遅れてしまった。「あぁ!」私は声が漏れてしまう。そのまま順位変動はなくアンカーの遥に渡った。
その瞬間に手刀で首の辺りに打撃を入れられ気絶してしまった。そこまで長くは気絶してなかっただろう。だが確実に言えることは一つだけある。私は誘拐され、周りにいるこいつは普通の人間じゃない。
私は人間の本能が危険をうったえていた。
(このまま私は殺されるの?そんなの絶対いや)
「お前がここに連れてこられた理由は分かるか」
「わからないです」
私は機嫌を損ねないように丁寧な口調で柔らかく返事をする。
「お前の彼氏をおびき寄せるためだよ」
(どういうこと???????)
私は頭の中が整理できないほど混乱していた。
「どうやら状況がわかっていないようだな。俺から教えてやろう。遥は殺し屋なんだよ」
(殺し屋?殺し屋て何…殺し屋、殺し屋てあの殺し屋の事か
まさか遥が本当に。いや1回だけ心当たりがある。夏祭りのあの日3人を倒したのはやっぱり見間違えではなく遥本人だったのか。でも本当に人を殺しているのかな。)
しばらくすると遥がきた。いつもと様子が違く、迫力が凄い。会話をしているがよく聞こえない。
すると大男が遥に殴りかかった。とても早かった、しかし遥はガードしていた。腕が腫れ上がっている。次に遥はハンドガンを取り出した。
ハンドガンを持っていることで美奈は「本当に殺し屋同士の戦いなんだ」と感じた。
遥は迷いなく3発撃った3発とも壁に当たったが、相手が苦しんでいる。なぜかは分からないが銃弾が命中したようだ。
相手が苦しんでる。やった遥が勝った。しかし立ち上がってきた。銃弾を受けて立ち上がれるの?これが殺し屋なの?
美奈は確信した。
「私でも分かる。次の一撃で勝負が決まる」
大男が殴りかかった、しかし吹っ飛んだのは大男だった。
遥が勝ったんだ。嬉しい。
遥が駆け寄ってきてくれて、紐を解いてくれた。ただ一言も発さずすぐに私の元をあとにした。
ただ次の瞬間
「今までありがとう。それと迷惑かけてごめん。」
そういう言葉が聞こえてきた。
私は理解した。遥は自分が近くにいたら私に迷惑をかけると思っているから離れようとしているんだ。私でもその立場ならそうしちゃうから分かる。背中を見ていると涙が出ているのが見えた。
遥は殺し屋だけど私の前では私を守ってくれるヒーローなんだ。遥と離れ離れになるのは嫌だ。今日の出来事でさらにその気持ちが強くなった。
次の日から迎えに来てくれず学校にも来なくなった。
私は彼の家を知らなかったのでどうしようもなかった。
(今思えば遥の事なんにも知らなかったんだな)
今日も一日が終わる。彼が居ないと面白くない。元気がないと声をかけてくれたのは学級委員の能年さんだ。
「どうしたの?」
「なんもないよ」
つい冷たく返事をしてしまった。
そう返事すると能年さんは不服そうに教室を出ていった。
「悪いことしちゃったな」
能年さんには後でまた謝らなくては。
そうだ。私には心配してくれる友達がいるんだ。たった1人の彼がいなくなったくらいで私の人生は変わらないや。
そう思った矢先に
その日の夜にある一通のメールが届いた。遥からだった。私は急いで既読をする。
「今から電話出来ないか?」
そういう文が送られていた。私は直ぐに返信をした。
「いいよ」
するとすぐに電話がかかってきた。
「もしもし」
「もしもし」
それを言うと沈黙が続いた。その均衡を破った言葉が
「怪我はしてないか?」
「え?」
「俺は倒した後にすぐに離れたからお前の安全確認を怠ってしまった。ごめん」
「なんで謝るの?助けてくれてありがとう。怪我はないよ」
「これで安心してお前から離れられる」
「ちょっと待ってよ。離れるってなんでよ?」
「それは今回みたいにお前を危険に晒すからだよ」
「私はそれをデメリットとは思わない」
「何で?命の危険を体験した上でよく言えるな」
「だって遥が守ってくれるんでしょ?だったらむしろ遥と一緒にいれるということが嬉しい」
少し嘘をついた。命の危険を感じることはとても怖い。ただ遥のことを信用しているのは本当だ。
何より一緒にいたいがためにこんな嘘をついた。
遥は考え込んでしまった。
「やっぱりダメだ今回の敵もちょっと間違えてたら2人とも殺されていた。俺は殺し屋と戦う経験がない。だから必ず守りきれるとは言えないんだ」
「私今から外に出る」
「やめろ。まだ安全だとは言えない」
私はすぐに家を出て近くの公園に1人でベンチに腰掛けた。
遥はきっときてくれると信じた結果だ。
5分くらいで息を切らした遥が来た
「お前何してんだよ」
そう言うと遥は私の顔を目掛けてパンチをした。
私は目をつぶる。
直撃したのは私の顔ではなく後ろに居る人間だった。ナイフを持っている。
「おそらく捨て駒だろう
やっぱりこういうのがいるんだよ。」
「とりあえずお前とは一緒には居られない。ただピンチだったら迷わず俺を呼べ。どこに居ようが必ず駆けつける。これではダメか?」
「うんダメ。一緒にいる」
遥がため息をつきながらこう言った
「お前には敵わないな」
結果として遥が折れる形になった。
その後、遥の家の場所を教えてもらった。
とりあえず完全に離れる事は絶対に嫌だ。
遥の住んでいる世界を初めて体験した。遥の本音を聞けた。それらを全て含めた上で言える
遥は私の"本当に大切な人"
私はこの人を永遠に愛し続ける。例え殺し屋であっても。
これが間違いかもしれないし死ぬかもしれない、それでも私は間違い続ける。
その頃
KYの基地で
「またやられたのか。しかもまともなダメージすら与えれてないではないか。どういうことだね?Dr.マスティア」
「あいつは失敗作さ。あんなの無限増殖しようと思えばいくらでもできるし捨て駒ですらない」
「そろそろ完成したのかあの機械は?」
「あーあれはあともう少しかかるな」
「そうか」
「時間はかかるがその機械と俺の送り込む最強の傭兵達ががいればあの最強の暗殺者でも必ず殺すことができる」
そう言いつつもDr.マスティアには1つ問題があることを分かっていた。力が強すぎて半径1kmを巻き込んでしまうことだ。ただそれは誰にも言わない。
「ただあいつは全然本気を出せていないぞ。あいつが覚醒すれば無理なのではないか」
「関係ないね、それを僕の頭脳が超えればいいだけの話さ」
「そうなのか、やはりお前は天才だな」
「その表現は間違ってる。ワシは"神"だ」
とりあえずKYはしばらく準備 兼 様子見をすることにした。ただ殺し屋(遥)を殺す準備は着々と進んでいる。
1ヶ月後
Dr.マスティアが言った
「ついに完成した」
「これより計画を実行する!」
そう言うと、ボタンを押した。
遥と美奈の半径1kmが違う世界へ飛ばされた。
「あそこはワシが作った世界じゃ。まずまともに生きていけないだろう」
遥は言った
「何かしてるとは思っていたがここまでの事ができるとは一体何者なんだ」
美奈は言った
「遥に任せっきりではなくて私も戦う」
「ばか。相手は本物の殺し屋だぞ。絶対にそれは許さない」
「……」
そう言われて美奈はだまってしまった。
ここで沈黙が起こる。
「やけに暑いな」
ここで初めて遥は気づいた。周りが炎で覆われている。
「すぐに避難するぞ」
そう言い美奈をお姫様抱っこをして火から逃げていく。
幸い早めに気づいたためすぐに逃げきれた。
「くっ!炎から逃げおったか。まあここまでは想定内じゃ。ここからは本物の地獄じゃ」
そう言うとDr.ミスティアは不敵な笑みを浮かべたあと高笑いをした。
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