たべもの日記 ピンクの缶の焼き菓子

のこもこ

皇居の近く

 ピンク色の缶が届いた。


 もう、この缶が届くのは何度目だろう。


 缶の中は焼き菓子だ。


 皇居の方にある昔からのお店のもので、ストライプの包み紙もなんだかちょっとレトロで素敵だ。


 この包み紙…。少し前まで我が家ではやたらと目にした。

 時代なのか趣味なのか…。

 綺麗な包み紙を取っておく不思議な習慣のある母が綺麗に折りたたんで取っておくからだ。


 でも、最近はどんなに丁寧に紙包みを開けて取っておいても…、庭の枯れ葉を包むには小さいし、揚げ物も滅多にしないし、ブックカバーを作るようなマメな人は我が家にはいないし…。(昔は何かと言うとブックカバーにいい。と母が言っていたけれど。母は家で本を読むのでブックカバーを作る必要がない。私はカバー自体要らないし、電車の中でもそんな人、見たことない。)


 とにかく誰も使わないので、場所も包装紙によってどんどん塞がっていくと、最近は億劫がって私や父がビリビリに開けても何も言わない。


 ただ、焼き菓子の説明やらご挨拶状等と一緒に挟まっている、艶々とした薄いカードに描かれている花の絵が好きで、それは私が意味もなく集めている。


 ピンクの缶の蓋を開けると中にはぎっしりと焼き菓子が並んでいる。

 どうやってこんなにぎゅうぎゅうにうまいこと詰めるんだろうと毎回思う。


 どれを食べても結局とても美味しいが、私のお気に入りは抹茶の小さなメレンゲと、焦げ茶色のクッキー。

 コーヒー味のクッキーは二種類かな?私はシンプルな形の方が好み。


 でも、これは家族みんなが好きなので争奪戦にならないように、一人いくつくらい食べられるかとなんとなく確認しながら食べ進める。

 個包装にはなっていないので、日にちが経つと、味は落ちていく。

 そんなわけで届いたその日から家族でどんどん食べる。


 中にはクリームがサンドされた重めの味のものもあるので、その辺りは毎回最後まですいてきた缶の中に残る。

 銀包装も誰にも開けられずいつまでも缶の中にいる。


 家では、抹茶のメレンゲとココアのメレンゲとチーズ味のクッキーの売れ行きが早い。

 コーヒー味は、私がどんどん食べるので、家族も自然と早めに口に入れる。


 大好きには違いないが、自分で買うほどではないと言うことで、頂き物でしか口に出来ない。


 この店は『ご登録のある方からご紹介を頂戴しました後に予約を承る』とのことで、いわゆる会員からの注文しか受け付けないらしいのだ。


 そう言うことに不熱心な父と、「これ美味しいわよね~。」と言いながら、初日くらいしか口にしない母としては、ご紹介いただく必要がない。と判断。


 毎回、ここの焼き菓子を食べるのは、これが最後になるかも…。


 と思いながら、誰よりも多く抹茶のメレンゲを口に入れている。





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たべもの日記 ピンクの缶の焼き菓子 のこもこ @ajisai616

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