外世

泡沫の桜

第1話

毎朝、毎夕方、M駅からN駅へ電車で移動する。


途中、この電車は用水路の上を幾度も通る。

そのいずれも東京湾へ続く。


いつもいつも

不意に目の前が開ける。

右には工場。

左には倉庫が立ち並ぶが、

少なくとも目前150度は海になる。


その時、私の心は途端に引っ張られる。


広がった青と青の景色に驚きを隠せないで。


たまに灰色と灰色だけど、それでも引っ張る何かがある。


少しの痛みを伴って、東京湾、ないし太平洋へと引っ張られる。


私の心は縛られたまま。

だけど、その景色を目に入れられているその一瞬で羽を広げようとする。


でも、やっぱりそれはほんの一瞬だから、

結局羽はしまってしまうし、

かかりそうだったエンジンは萎んでしまう。


そしたらまた縛られて、

叫ぼうと喚こうと

その声は誰にも届かない。


そもそもそれは出ないのだ。


きっと


きっと


海の向こうの見知らぬ世界が私を呼んでいる。


空と海で繋がったあの子と会いに。


海の向こうの冒険が私の心を引っ張っている。


空と海で繋がったあの子と遊ぶから。

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外世 泡沫の桜 @seika222sayaka

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