第2話

ふと空を見上げると果てしないほどに広がる青空が見えた。こんなに青い空は久しぶりだ。積乱雲もない、雲一つない、夏には珍しい空を見上げながら木陰で涼しむ。

「どうしたの?外周中でしょ?」

「いや、ちょっと立ち眩みしてさ、休んでるとこ」

「それなら言ってよ、氷取ってくる」

駆け出していく。実は熱中症気味だったようで助かった。

昔から目的に過剰すぎるほどに集中するあまり自分の体調や目の前の事を忘れてしまう質だった。みのりにはお世話になりっぱなしだ。

「おいおい大丈夫かよ、しっかりしてくんねーとキャプテン」

「すまん、ちょっと考え事してたらな」


三年生が引退し僕がキャプテンとなって翔陽が副キャプテンとなった。部員数の多いこの部活でも目立って成績を残していたので当然の結果といえば当然の結果だった。ただ一年生の頃から全国大会優勝を期待されていた僕たちの代が一番上の代になり、なんとか結果を残さなくてはいけない中、キャプテンの荷の重さに驚いた。やっぱり気にしないようにしても潜在意識ではかなりの負担になっているようだ。

「キャプテーン、この機材どこおいておけばいいですか?」

「それは体育館倉庫で構わないよ」

「了解でーす、おーい運ぶぞー」

話しかけてきた一年は今年入ってきた沖上真治だ。中学の時には同じバレー部に所属していて関係が長い。中学の時に真治は全国大会優勝を経験している。

「真治結構タメ口に近いけどいいのか?部が締まんなくなったら嫌だぞ俺」

「大丈夫だと思うよ、真治は明らかに一年生の中では突出した実力者の一人だし、なによりリーダーシップがあって上級生との距離感も分かってる。実際僕以外にはしっかりとした口調で話してるだろ?」

「まあ、そうかもしれないけど、、なんでそんな距離近いんだ?」

「そりゃ強豪校で2年もバレーやってれば仲良くなるもんだよ、全寮制だったし。」

「ふーん、そんなもんか」

真治とは色々あったのだがそれをいちいち話す必要はないだろう。

「練習終了、各自荷物を持って解散」

返事をした部員達が散り散りに帰っていく。今日は体育館の清掃だそうで早めの解散となった。

「学校の予定に俺たちを付き合わさないで欲しいよなー、せめて部活がない時にしてほしいよ」

「無理言うなよ、ほとんど毎日部活してる部活と予定を合わせる事なんてできっこないだろ」

「まーねー、帰りどっかよってこうぜ」

「おっけ、美咲はどうする?」

「私はいいや、暑いし早く帰りたい、熱中症っぽかったんだから気を付けてよ」

「ういうい」

「もー、またね」

「じゃーなー」

そういってみのりは帰路につき、僕たちは駄菓子屋によることにした。

「最近みのりのヤツ付き合いワリィよなー」

棒アイスを加えながら翔陽は呟く。

「まあ、実際暑いし、なんてことないだろ」

特に気にしていなかったが確かに最近は暑いとしても付き合いが悪い気がする。

「心配なんだったらお邪魔しに行くか?」

「い、いいよ、俺ももう動きたくないし」

棒アイスは食べに来れるのに寄り道程度の家に行けないという発言には目を瞑っておく。

「そろそろ帰るか、ほんとに熱中症で倒れちまう」

「そーだな、帰るか」

手を振りあって翔陽と別れる。みのりの家に足を延ばしてみることにした。

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