存在感
長万部 三郎太
既婚者
わたしは存在感が極めて足りない、とにかく影が薄い男。
仕事でも「出社しているのか、してないのか分からない」と陰口を叩かれることもある。もうすっかり慣れてしまったが。
そんな冴えないわたしにも幸運が舞い込んできた。
事故に遭ったお婆さんを介抱し、救助を手伝った際に知り合った女性だ。
なんてことはない。
その女性とはお婆さんのお孫さんだったわけだが、それがきっかけでお付き合いをするようになり、この夏晴れて式を挙げることになった。
職場の皆が既婚者だったこともあり、このイベントで少しはわたしの印象も高まるだろうと淡い期待を寄せた。しかしその想いは無残に打ち砕かれることとなる。
結婚式を翌月に控えたある日、わたしは珍しく会社の人から呼び止められた。
「なぁ、来月に同僚が挙式するらしいんだが、お前はいくら包むんだ?」
(すこし・ふしぎシリーズ『存在感』 おわり)
存在感 長万部 三郎太 @Myslee_Noface
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