傘では止めてあげられない


 あの日、ちーちゃんが泣いていた。前を向いて、雫を落とすだけの、静かな泣き方だった。

「……ちーちゃんの涙、しとしと」

「それは雨に使うんだよ、チビ助」

 本当に穏やかで、でも雨のように止めどなくて。しとしと、が似合う。大人になった今も、六月の空を見ては彼女の泣き顔を思い出していた。




【お題:しとしと】

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