第42話 初めての個人配信
「ここか……」
俺は今家の近くにある公園に来ている。
そして目の前にはダンジョンの入り口がある。
ここに来た理由はとても簡単。
新しく手に入れたアイテムを試すためだ。
俺はそう思いながらダンジョンに入ろうとする。
「ちょっと君! 駄目だよ勝手に入ろうとしちゃ!」
「一応許可はあるはずなんですが?」
入り口近くでそう言って止めてきたスーツ姿の男性に俺はそう返す。
確か柳原さんも翌日には問題ないって言ってたから情報は来てるはずなんだけど……
「許可……ちょっと待てよ」
男性はそう言って考え込む様に俺の顔をまじまじと見つめる。
流石にそんなにまじまじと見つめられると照れるんだが……
俺がそう思っていると、男性は突然合点がいったかのように手を叩く。
「あぁ! 配信の少年! 確かに上から話はきてる。足止めして申し訳なかった」
男性は笑いながらそう言って、先程までと同じようにダンジョン入り口の横に気にするなという感じで立つ。
……どういった伝わり方してるんだ?
配信の少年みたいな覚えられ方するのは嫌なんだが……
俺はそんな事を思いながらも、その場にとどまるには気まず過ぎるので軽く頭を下げてダンジョンの中に入る。
「……あれを登れって事だよな? けどどうするか……」
ダンジョンの中に入った俺は目の前に見える光景を見ながら冷静にそう呟く。
目の前には雲を突き抜ける程高いがあり、入り口から一直線にその山に続く道が続いている。
一応ここに来るまでに他の人の配信を少し見たり、ネット等で情報を集めて色々調べてはいる。
その結果わかったのは、人狼が出たあのダンジョンみたいに入り口が消えるのはあの時以降起こっていないという事。
あの時のようなミッションは必ずしも発生するというわけではないという事。
そして最後に、配信はメリットが存在するという事。
ダンジョンの入り口に関しては後ろを見て分かるように残っている事から間違いは無いだろう。
次のミッションに関してだが、正直あの時のような防衛ミッションみたいなのがくればかなり辛い。
いくら俺が強くても一人で処理できる数には限りがあるからだ。
その点ダンジョン攻略の配信を行っている他の人の配信を見た感じ、問題はなさそうだった。
時々ミッションが出ている配信もあったが、内容も生き残れや探し出せなどの一人でも何とかなりそうなものばかりだった。
そして最後の配信のメリット……これに関しては正直説明が無かったから調べるまで全く知らなかった。
メリットは大きく二つ。
一つは投げ銭機能だ。
これは俺の攻略配信を見ている視聴者が、俺に対してお金を直接送れるものだ。
送られたお金は売買システムの所持金に加算されるという仕組みらしい。
ただこれに関しては正直あまり魅力を感じていない。
しかしながらもう一つのメリット、これにはかなり魅力を感じている。
それは専用商店の利用。
これは売買システムの取引所とは違い、配信を行っていくことによって貯まるポイントを使い色々なアイテムを買う事の出来るシステムだ。
そして情報によればなんと交換出来るアイテムの中にスキルスクロールなるものがあるらしいのだ。
ただポイント自体もかなり高いらしいのだが、配信者自身に割り当てられた配信者ランクというのも必要らしいのだ。
しかしながらその話を知った俺は配信を行うべきだと判断した。
確かに配信をすることで自身の手の内を晒す事にはなるが、それでもそこでしか手に入れられないものがあるならやっておくべきだろう。
それにあの自称神の事だから、急に交換のラインナップを増やしたりしそうだしな。
調べた感じ配信者ランクとポイントに関しては視聴者数と登録数、そして配信内容の実績によって変動するらしい。
因みに俺の現在の配信者ランクは無しで、どうやら強制的に配信されていたあの時のやつは換算されないらしい。
かなり損をしてる気はするが、文句を言ったところで何かが変わるわけではないので諦めている。
ランクに関しては下からアイアン・ブロンズ・シルバー・ゴールド・ダイヤモンドまで判明している。
更に上のランクも存在しているらしいのだが、???となっておりわからないらしい。
とはいえ現状居る配信者はほとんどがアイアンとブロンズなのだそうだがな。
「とりあえず先にこれを着けて……」
俺はそう言いながら指輪の中から家にあった狐の仮面を取り出し顔につける。
視界に関しては目元が大きく開いているので、悪くはない。
そして[氷魔法]で仮面が落ちないよう内側から固定する。
例え[氷魔法]で作った氷であろうと[氷結武装]の効果で凍傷等にならないのは確認済みだ。
後は黒い手袋を両手につけ指輪と一緒に指先を隠し、新しく買った[引き寄せのライトシールド]と[加重のハルバード]を出して……これで前準備はOKだな。
人狼の現れたダンジョンでの事が無かった事になってるなら、逆にそれを利用してやればいい。
こうして顔を隠して戦い方も装備も変えてやれば気付くのは難しいだろう。
ただ声を変えるのは難しいからそこで怪しむ人は居そうだが、確証を得るのは俺がボロを出さない限り不可能だろう。
それに仮に声を出すとしてもコメントに返す時ぐらいだろうから、その時は多少声を高くするなりして変えれば問題ないだろう。
しかも配信の数もかなりあるから、そんなに見られることも無いだろうしな。
もし仮に本当に必要そうなスキルやアイテムがあれば、その時は本気で取りに行けばいいからな。
俺はそんな事を思いながら配信の設定画面を開く。
「タイトルは……適当に狐のダンジョン攻略でいいだろう。配信者名は狐にして……とりあえずはこれぐらいでいいか」
俺はそう呟きながら再度設定した項目を確認してから配信開始の表示をタッチする。
さて、軽く新調した武具の具合を見に行きますか。
俺はそう思いながら配信のコメント欄を視界の端に表示しなら岩山への道を進む。
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