第24話 二人の居場所

何も感じない。寒さも、痛みも、苦しみも・・・まるで脳だけが取り残された気分。私は死んだの?という事は、ここは死後の世界かしら。天国・・・そんな訳ない。あれだけの事をして今更天国になんか行けるはずもない。きっとここは地獄、変わる事のない無の世界で永遠に孤独に生かされる地獄。

彰人君・・・彰人君は天国に行けたかしら?そこでご両親と再会出来て、今度は永遠に離れる事なく、親子仲良く幸せに暮らしているかしら?あれだけ現世で苦しんでいたんだもん、きっとそうなっているわ。

良かった・・・体も、感覚も、繋がりを失われても、記憶は残っている。短かったけど、彰人君と過ごしたあの日々を思い出せる。幸い時間は有り余っている。どれだけ思い出にふけっていようが、ここでなら誰も邪魔はしない。

私は、この無の世界の中、彰人君との思い出を映画のように思い出そう。


『美幸・・・美幸・・・。』


声だ・・・聞き憶えている・・・聞きたかった声だ。


『美幸・・・美幸・・・!』


幻聴ではない、本物の声だ。ぁぁ・・・けれど、今の私には返す声が無い。彼を抱きしめる体も無い。彼の姿を見る目も無い。

せっかくこの世界を受け入れていたのに、彼の声だけで未練が湧いてくる。彼の声だけで、私を入れる器が欲しいと思ってしまう。


『美幸・・・ここは暗い・・・さみしいよ・・・。』


暗い、寂しい・・・まさか、彼もこの世界に閉じ込められているの?どうして・・・彼は何も悪くはないというのに。私がここで孤独に生きらされるのは構わない。けれど、彼にはここに来てほしくなかった。彼の為にも、私の為にも。

彼の声が聞こえてくるたびに、無いはずの心に釘が刺されていくようだ。

苦しい・・・死にたくもなる。けど、もうすでに私は死んでいる。どこにも逃げ場なんかない・・・。


カエル・・・カエル・・・カエル


ふと、彰人君の声に隠れているもう一つの声があったのに気付いた。誰の声かは分からない。人の声かすら判別しずらい。


「あなたは誰?」


・・・声だ。今、私は確かに声を出した。声だけじゃない、暗くて見えないが、体がある・・・それに暗闇が見えるという事は、目もある。


『どういう事?」


また、誰かの声だ。その声は私の体の中から聞こえてきた。けれども、この声は私の物ではない、彰人君のでもない・・・これは、私達?


「彰人君?」

『美幸?』


『そこにいるの?」

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