第4話 深海の底へ
翌朝になって学校へ来てみると、彰人君の姿が見えない。遅れてるのかな?それとも・・・。
「ねぇ美幸さん?聞いてる?」
「ん?ごめん!聞いてなかったー!」
「もー!ちゃんと聞いてよね!」
「ごめんねー!」
どうして聞きたくもない話を聞かなければならないのか?他にも友達はいるのにどうして彼女達、彼らは私を取り囲んで呪詛のように延々と語ってくるんだろう。
暇な時に話をしてくれるならいいけど、四六時中話しかけられるのは疲れる。
「はーい、みんな席について。」
「あ、先生だ!美幸さん、また後でね!」
「うん。」
「え?」
「あ、うん!またね!」
危ない危ない。退屈のあまり思わず仮面が剥がれてた。
「えーと・・・今日は彰人の奴は風邪で欠席らしいぞ。なんでも、昨日傘を忘れて雨の中ずぶ濡れで帰ったからだそうだ。」
「彰人って?」 「彰人って誰だ?」 「窓際の子?」 「知らな~い。」
(傘を忘れた・・・ふ~ん、そんな言い訳をしたんだ彰人君。)
ニヤニヤが隠し切れなくて口元を手で覆ってしまう。そっかー、嘘をついたんだね彰人君。
それにしても風邪をひいてくれるなんて好都合、もといラッキーだ。後は放課後に先生に適当な言葉を見繕って彰人君の家の住所を聞いて見舞いに行くだけ。
はぁー、楽しみだなー!早く放課後にならないかな~!
・
・
・
やっとの思いで最後の授業が終わり、職員室に帰ろうとする先生を呼び止めた。
「先生?」
「ん?美幸さん、どうしたんですか?」
「彰人君のお見舞いに行きたいんですけど、住所が分からなくって・・・教えてもらえませんか?」
「彰人の?・・・んー、まぁ君なら大丈夫かな?」
ん?何だか引っかかる言い方。まぁ誰かれ構わず教える訳にもいかないよね。という事で、難なく彰人君の居場所を聞き出す事に成功。彰人君の住所が書かれたメモを片手にルンルン気分で靴を履き替え、外に出る。
不思議だ。他人の家に行くだけなのに、こんなにウキウキと気分が高揚するなんて!スキップでもしたいくらいだ!まぁ、出来ないけど。
地図を見ては迷い迷い、ようやく彰人君の家に着いた頃には5時を過ぎていた。見た目は普通の家。だけど、なんだろう・・・言葉で言い表すのは難しいけど、何かおかしい雰囲気を感じる。
「・・・あ、傘。」
カバンの中を覗き、彰人君の傘を持ってきているかを確認する。よかった、忘れず持ってきてるみたい。
「それじゃあ・・・ふぅ。」
一呼吸置いて、家のインターフォンを押す。中からインターフォンの音が聴こえてくる。しかし、いくら待っても誰も出てこない。
「あれ?」
もう一度インターフォンを押すが、やはり誰も出ない。ご両親は仕事?彰人君は寝てるのかな?
今日は諦めて帰ろうかと背を向けて帰ろうとした時、家の扉が開いた音が聴こえた。後ろを振り向くと、厚着姿の彰人君が立っていた。
「彰人君・・・。」
「美幸、さん・・・?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます