第2話 父親と母親
「うひぃー・・・。」
凍えきった体に熱い風呂は沁みる。頭が真っ白になってボーっと天井を見てしまう。このまま眠ってしまいそうだ。
ゆっくりと瞼が閉じていくと、風呂場の扉をコンコンと叩く音が聴こえた。扉の方を見れば、人影が立っていた。
「彰人ー!長風呂はいいけど、寝ないでね!のぼせちゃうから!・・・うん、気を付けるよ!」
確かにこのまま湯に浸かっていればのぼせてしまう、さっさと髪やら体洗って出ていこう。体全体を泡だらけにし、大雑把にシャワーで流して脱衣所に移動する。カゴの中にはタオルと着替えが用意してあり、タオルで体を拭いて着替えの服を着てリビングに向かう。
リビングに行くと、父さんと母さんがテーブルに座っていて、すでに夕飯を食べ終わったのか、テーブルには僕の分の夕飯だけが置いてある。
自分の席に座り、お互いの目を見つめ合っている両親に頭を下げてから箸を持つ。味噌汁が入ったお椀を持ち、猫舌の僕はゆっくりと啜って飲んで・・・あ?
「冷たい・・・。」
冷たい、それに味も無い。なんだこれは?ハッと我に返って並んでいる料理を見れば、皿の上には何も乗っていなかった。
「・・・ふざけんな!!!」
持っていたお椀を母親に向けてぶん投げた。お椀に入っていた透明な味噌汁が母親の顔にかかるが、相変わらず母親は無表情のまま。その顔に更に苛立ち、テーブルの上に乗っていた食器を手で払い飛ばした。
「こんな物食わせてどうしたいんだ!?おい!何とか言えよ!!!」
怒声を上げても二人は声はおろか、表情一つも変えない。僕は母親が座る椅子を蹴り飛ばし、座っていた椅子が無くなった母親は床に倒れていく。
ここまでして何も言わない父親にも苛立ち、蹴っ飛ばした椅子を拾い、父親の頭部に向けて振り落とした。椅子で殴られた父親の頭部は体から飛び立ち、宙を舞って地面へと落っこちた。
転がる父親の頭部を追いかけようと一歩前に進むと、足の裏に激痛が走った。足の裏を見ると、さっきテーブルから落とした食器の残骸がいくつか刺さっている。
手にも持っていた椅子を床に置き、その椅子に座って足裏に刺さった食器の残骸を抜いていき、全部抜き終わる頃、キッチンが酷く荒れていた事に気が付いた。
「・・・片付けないと。」
またやってしまった・・・最近イライラを抑えるのが難しくなってきている。高校生だからかなのかもしれないが、こんな事が学校内で起きてしまえばとんでもない事になるな。
キッチンに置いてあるチリトリを使って割れた食器を片付け、倒した母親と父さんを椅子に座りなおす。
あれ?なんかおかしい?何かが足りない・・・あ!父親の頭!地面に転がっていた頭を拾い、父親の体に付けなおし、ようやく元の状態に戻った。
何だかどっと疲れた・・・今日はもう寝よう。
「それじゃ、父さん母さん・・・おやすみ。」
僕は両親に就寝の挨拶を残し、二階へと上っていく。自分の部屋の扉を開け、ベッドに倒れるように横になり、枕に顔をうずめたまま睡魔に身を委ねて目を閉じた。
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