第24話 クラス対抗戦

 アスタロトさんが使い魔になり、早いもので一週間が過ぎた。


 そんなアスタロトさんと過ごす毎日は、毎日が驚きに溢れていた。

 授業では毎回常識が覆され、実習ではその圧倒的な魔法で教師含めそこにいる人全員を驚かせ続けていた。


 そして、帰宅後はアスタロトさんによる魔法特訓を続けて貰っている甲斐もあり、なんとかアルスもイメージで魔法を扱うことが可能なレベルにまで達することが出来た。


 当然、アスタロトさんの魔法に比べればまだまだなのだが、それでもアルスは、己の魔力が飛躍的に向上しているのが実感できた。

 イメージで魔法を扱えるようになった事で、これまでは記憶した魔法陣を錬成し、そこへ魔力を流していたという遠回りな労力が全て省かれ、持てる魔力全てを魔法に籠める事が可能になった。


 だからアルスは、もう気付いていた。

 まだまだアスタロトさんに比べれば遠く及ばないのだが、それでも今の自分の力は、これまでの人知を越えているのだということに――。

 それぐらい、この魔法をイメージで扱うというのは重要な事なのであった。


 そんな、アスタロトさんと過ごす驚きだらけの毎日の中で、アルスにとって一つだけ問題があるのであった。


 それは、アスタロトさんの服装問題だ――。

 学生服はとてもよく似合っているし、普段のドレス姿もとにかく美しい。

 その二つも控えめに言ってヤバイのだが、何よりヤバイのがアスタロトさんの寝間着姿だった。

 白いシルクで出来たそのネグリジェ姿は、その完璧とも言える身体のラインがはっきりと分かり、また生地が薄いだけに透けるというか、そのあまりに強い刺激の前に完全に目のやり場に困ってしまうのだ……。


 最近は、その姿にドキドキしているアルスを揶揄うため、わざと寝間着姿で接触してくる事が日に日に多くなってきているのだ。

 香る甘い良い香りに、すべすべな肌――それは今のアルスにとって、この共同生活を続ける上である意味一番の強敵なのであった――。



 まぁそんなことがありつつも、今日は金曜日。

 つまりは、クリストフ魔法学校の一大イベントである、クラス対抗戦の当日がやってきた。


 クラス対抗戦は、低学年から順に行われていく。

 ルールは凄くシンプルで、互いのクラスはそれぞれ陣地をとり、その中心に置いている相手の旗を先に奪った方が勝ちとなる。


 このクラス対抗戦では、剣技と魔法の使用が許されている。

 治癒魔法要員として、すぐ駆けつけられる場所に教師が複数人控えているため、ある程度の攻撃は許されている。

 ただし、剣技による切断は治癒も容易ではないため、ここでは木刀を使用することとなっている。


 とは言っても、ここは魔法学校だから基本的に体術などが得意な者は少なく、やはり魔法での対決がメインとなる。


 ただ、隣のクラスのマークのように、剣術と魔法を合わせた戦闘方法が得意な人などもいるため、希望する人には武器の使用が許されており、より実戦を想定した形で行われる。


 自分が一番戦闘において力を発揮できるスタイルで、互いの実力をぶつけ合う。

 それこそが、この対抗戦の一番の目的なのである。


 しかし、アルスは正直このクラス対抗戦がこの学校で一番嫌なイベントだった。

 だって戦闘は苦手だし、治癒魔法はあっても相手の本気の魔法が直撃すればただでは済まない可能性もあるし……。


 けれど今年は、アスタロトさんにみっちり魔法の特訓をして貰った事もあるし、このクラスの勝利に貢献できたらいいなって思っている。


 卒業後は、自分が村の皆を守れるようになるんだ。

 だからこのクラス対抗戦は、いつか起きるかもしれない本当の戦闘において、大事な人を守るためのリハーサルだと思って本気で挑むつもりでいる。


 相手は既に魔術師団でも上位クラスの実力を持つであろうマークくん率いる、実力者揃いだ。

 これまで一度もアルス達のクラスが勝ったことがない相手だからこそ、成長した己の実力をぶつけるのにこの上ない相手だと思う。


 だからこそ、最後ぐらい必ず勝って終わろう。

 そう胸に誓い、アルスは会場へと向かうのであった――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る