第2話 male

 彼女は、元気にしているだろうか。

 街を離れて、そこそこ経った。


『どうした。感慨に耽ってるのか?』


 通信。まだ感度は良い。つまり、ここから先が、まだ、ある。まだ終わらない。


「そうだな」


 彼女に、初めて逢ったときのことを。思い出していた。

 今のような綺麗な服では、なかった。俗にいう長物の上下。寒さを急拵きゅうごしらえでしのぐための、マフラーと手袋。そして、それらを全て無意味に葬り去る、すけすけの穴空きサンダル。


「あのときから、か」


 彼女。寒い寒いと言って道を歩いていたので。サンダルに穴空いてますよって、教えてあげた。

 笑われたっけ。

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