「ゆんゆんよろしくね⭐︎」

あれから季節が過ぎた約半年後。


オレ、舞子は、千佳と千佳の弟の愛斗、そしてその後輩と一緒にショッピングモールにいた。



数時間前のことである。

「祐、今日ちょっとでかけない?欲しいものがあるの」

休日の朝7時過ぎ。舞子のコールで目覚めたオレは1時間後には舞子の喫茶店に到着した。


closedの普段が下がったドアの取ってを引き開ける。


「おはよう、祐。二度寝してないみたいね」

「いつの話をしてるんだ全く…おはよ」


クスクス笑いながら舞子はブラックコーヒーを淹れてくれた。今の時期はやっぱりホットの方がうまい。


「それで、今日は何を買うんだ?」

コーヒーを冷ましながら尋ねるオレに舞子は少し期待している感じで答える。

「今日なら何でも1つ、欲しいもの買ってくれるんでしょ?」

「えっ…あっそっか」

すっかり忘れていた。今日は舞子の少し遅めの誕生日祝い。誕生日当日に会えない代わりに次会う時にはと約束していたんだった。


「ちょっと、忘れていたの?」

ぷくっと膨らんだ舞子の頬を右手の人差し指で潰す。タコさんウィンナーのような表情になった舞子を見てオレは笑い、舞子も感染ったように笑った。







千佳たちと会う30分前。電車一本で大型ショッピングモールに着いたオレたちは、舞子たっての希望でとあるコスメショップにいた。


…うん。何が何やらさっぱりだ。


舞子はどうやら『ジェルネイル』というモノに興味があるらしく、ショップ店員と楽しく会話してる。


体面上女性として暮らしているオレも世間に合わせて化粧をしているから、多少の化粧品は買い、あとはその舞子の様子を眺めてる。



…すんげぇヒマだ。



どうしようもなく暇なので舞子に声かけ、近くのコーヒーショップに行くことにした。




「あれ?祐じゃん。こんな所で何してんの?」


コーヒーショップで注文したブラックティーを飲んでいると前から聞き覚えのある声が。

見上げると同じ会社で友人の千佳がいた。

誰かと一緒に居るのか両手にカップを持っている。


「私は舞子を待っているところ。千佳は?」

「あたくしはコイツらの付き添いよ。所謂ドライバー兼荷物持ちってやつ?」

「コイツ…?」


千佳の背後に目を向けると顔馴染みの愛斗と見知らぬちっこい奴がもう1人。


「この子 都築アリス君っていって、愛斗の1学年下の後輩なんだ〜。今は寮暮らしなんだけど一人暮らしすることになったから買い出しに来たってわけ」

「お久しぶりです祐さん」

「…どうも」


アリス君と紹介された美少女もとい美少年は人見知りなのか愛斗の後ろに静々と隠れている。可愛い。まるでウサギのようだ。


「さて、こうして集まった訳だし場所移そうか」

千佳の言葉でオレたちは大きめのテーブル席に移ることにした。




「お待たせ、祐。あら?」

舞子が合流して冒頭に至る。

「舞ちゃん!!」

千佳が立ち上がり舞子に抱きつく。

そういやこの二人が会うのって久しぶりなんだっけ。愛斗がそんな奇姉を舞子から取り払おうと慌てて席を立つ。そしてその様子を凄い形相で見るアリス君…今はまるで尻尾を踏まれて威嚇している猫のよう。


「つ、都築君?」

「⁈…な、何ですか?」

「さっき凄い顔してたけど大丈夫?」

「…そんな顔早く忘れてください」

「そ、そっか。可愛かったけどな〜」

「…ほんとうですか」

「え、何て」

「本当ですか⁈」

「え、あ、うん」

「良かった〜〜〜!!!」


にっぱーっ!!!と笑うアリス君。可愛いさに磨きがかかった。今更だが、眼に赤いカラコンを入れている(髪は白く染めている)。


「あのね、ぼくアリスって言うの!だからアリスって呼んでね!!」

「あ、ああ。私は新木祐菜だ。よろしく」

「分かった!ゆんゆんよろしくね⭐︎」

「ゆ、ゆんゆん⁈」

「だってそっちの方が可愛いでしょ?」


…これはまたキャラの濃いやつが出てきたな

苦笑いしながらブラックティーを飲む。


「すみません祐さん、変な奴らで囲んでしまって」

左腕でアリス君を包むように、右腕で千佳を抑えるように向かい側のソファー席に座る愛斗。指名No.1のホストかよ。


「愛斗、お前も大変だな」

「まあ、この人の弟を長年してますからね笑

ところでお二人は今日は何故こちらに?」

「ああ、今日は「デートなの♡」おいっ⁈舞子⁈」

ギュッとオレの右腕に腕を絡ませる舞子。

近くて柔らかくていい匂い…


『『えっ!!デートなの?!』』


オレのお花畑は二人の侵入者で踏み荒らされた。返せ。オレのお花畑。そして千佳。お前にはオレらのこと話していただろうが。驚きすぎて顎が外れているぞ。オレの目線に気づいたか千佳は我に帰りガクンと顎を戻した。キモいや、器用な奴だ。


「お、お二人ってどんな経緯で付き合うことになったんですか?」


千佳とアリス君に挟まれながら愛斗が尋ねる。アリス君も興味あり気に目を輝かせてうなづく。


「ん…まあ、また時間がある時にな」

「そうですか…でも確かに今お二人はデート中。ここで聞くのは無粋ですね。さてそろそろ僕らは行きましょう、千佳。アリス」

えー、と文句を言われながら愛斗は2人を連れて去って行った。ついでに邪魔したお詫びにとオレら2人分のコーヒー代を置いてくれた。ありがとな愛斗。有難く頂戴するとしよう。


そんな愛斗に舞子がボソッと呟く。

「いいわ〜あの子…」

焦りからかオレの背に冷や汗が垂れたのは言うまでもない。




翌日。テヘペロスタンプの LINEとともに請求書の画像とネイルの画像が送られてきた。痛い出費だったが、、可愛いから許す笑







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